僕は現状兼業主夫なもので、皿洗いもすればゴミ捨てもする。
牛乳パックは洗って乾かして、開いてリサイクルへ。
…と、いつもと同じことをやっていて、急に気になった。
最近の牛乳パック、開け口と逆側を開けると「リサイクルありがとうございます」と書いてある。
それはまぁいい。
そこの部分に、使用している色の一覧がある。これも以前から気づいていた。
でも、結構銘柄によって「特色」などの使い方が違っているのに気づいた。見比べると面白い。
僕は印刷業界には全く詳しくないので、以下に書いてあることに間違いがあったらごめんなさい。
普通、印刷は4色の版で行われる。
Cyan(シアン:水色)、Magenta(マゼンタ:紅紫)、Yellow(イエロー:黄色)と、黒の4色だ。
黒は、輪郭や文字など重要な部分を〆る「鍵」となる版なので、Key Plate と呼ばれる。
この4色を、俗に CMYK と呼ぶ。
小学校レベルの知識では、「赤青黄」を混ぜるとどんな色でも作れる、というのだけど、厳密には CMY の3色。
でも、世の中理想通りにいかないのが普通で、CMY をどんなに混ぜてもきれいな黒にはならない。
そこで、黒だけ別に用意する。
これで、どんな色でも印刷できる。理想的には。
でも、たった今書いた通り、理想通りにはいかないのが世の常だ。
印刷にはいろいろな方法があるけど、最終的には「紙にインクが付くか付かないか」の2値で行われる。
グラデーションをつけたい場合は、インクがだんだん薄くなるのではなく、付いているところと付かないところの面積比を変えていく。
人間の目はあまり細かなものを認識できないので、遠目にはグラデーションに見える。
じゃぁ、微妙な色合いで印刷したものを近くで見たらどうなるかといえば、やっぱり点々に見える。
企業ロゴは、商品に小さくつけられることが多い。
でも、色の指定が厳密なことが多くて、点々で表現すると、小さなロゴの形がはっきりと出ない。
そこで、CMYK に加えて、ロゴ専用の色を使ったりする。
こういう特別な色は「特色」と呼ばれる。
冒頭に載せた写真を、大きくしてもう一度。
一番上のものは、CMYK のみで印刷されている。
次のものは、CMYK に加えて、濃紺が入っている。
その下は、特色が2色も! オレンジと緑が入っている。
その代わり、シアンを減らしている。
特色は普通は高く、CMYK は安い。
シアンを減らしても特色と相殺にはならないのだけど、少しでも安くしようということか。
そして、最後は CMYK に加えて特色2色。しかも、この特色が、ピンク(桃)とレッド(赤)。
なんて豪華な印刷。100円以下で買ってきた安いジュースですよ!
桃ジュースでした。企業ロゴは赤で、パッケージの半分くらい桃色にしてあった。
桃色が大きな面積を占めるから、まだらにするのではなく、綺麗に塗りたかったのだろうね。
こうした、どこかに使っている色を「純粋な形で」印刷したものは、カラーマークと呼ばれる。
工場では、印刷後にカメラでカラーマークを確認して、エラー製品がないかチェックしているようだ。
牛乳パックに限らず、印刷物にはたいていついているはず。
でも、普通は、印刷のあと、切り落としてしまうような部分に印刷する。
切手なんか、シートの端に印刷されているね。
牛乳パックはかなり上質な紙を使っているし、紙自体もかなり大きい。
無駄があまり出ないように作っていて、「切り落とす」ような部分がないのかもしれない。
折りたたんで見えにくくなる部分はあるから、そこに印刷している、ということなのだろう。
急に話を変える。
住民票の用紙など、コピー防止措置が施されていることがあって、そのままでは何も書いていない(ように見える)のに、コピーすると「COPY」というような文字が浮かび上がるものがある。
この仕組み、どうなっているのか正しく理解している人があまりいない。
昔からQ&Aサイトなどでトンチンカンな答えをよく見る。
#今検索したら、比較的上位に来た答えのうち、1つはまともだった。ちょっと安心。
でも、むちゃくちゃな回答は相変わらず多い。
この仕組みは、まさに「特色」をうまく利用したものだ。
白黒コピー機では、薄い水色はうまくコピーできない。これを利用した、コピーを前提とした原稿用紙なども売っている。
マス目があるのでそれを埋めるように文字を書き、コピーするとマス目が消えて「フリーハンドできれいに書いた」ように見えるのだ。
で、先に書いた住民票用紙は、たいていこうした水色で細かな装飾印刷がしてある。
コピーすると装飾が消えてしまうことで、原本ではないことがわかる。
でも、これだけだと片手落ちだ。
原本の装飾を知っている人なら「装飾がない」ことで気づくけど、原本を知らない人にはコピーだと見破れない。
そこで、水色よりも少し色の濃い青を使う。濃さは2倍くらい。
2倍くらい濃い、ということは、点々にして、インクが付くところと付かないところの面積比を半分にすれば、水色と同じような色合いに見える。
装飾の細かな模様に紛れ込ませて、このインクで「COPY」の文字を書く。
もちろん、点々で書くので、色が薄く見えるようになり、周囲の水色とは溶け込んでしまう。
というか、そうなるようにインクが繊細に調節されている。
もともと細かな模様が多いので、点々模様もそれほど気にならない。
でも、コピー機は、水色よりももっと濃いこの青には反応する。
コピーしてみると、水色の装飾はすべて消えるのに、青で書かれた COPY の文字はコピーされてしまう。
人間の目には同じような色合いに見えていても、機械から見れば「違う色」なので、反応が違うのだ。
こうした用紙、全体に水色に見えるけど、2色印刷だ。
そして、2色印刷だけど、水色も青も「特色」だ。CMYK ではない。
カラーコピー機を使っても、CMYK で印刷するので、この「特色」を完全再現できない。
だから、白黒コピー機だけでなく、カラーコピー機を使っても COPY の文字は現れてしまう。
#初期の技術だとカラーコピーでコピーできてしまったようだけど、今は対応技術がある。
なかなか巧妙な仕組みで興味深い。
1990年代後半ごろからこうした技術が出てきたように思う。
強く興味を持ったのはそのころで、このWEBサイトを作り始めたころにあたる。
いつか歯車ページに書きたい…と思ったきり、完全に機会を失っていた (^^;
もう、当たり前すぎて興味持つ人余りいなくなって、今更感はあるのだけど、印刷の話を書いたのでついでに書かせてもらいました。
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