2015年10月06日の日記です


特色印刷  2015-10-06 16:44:41  歯車
特色印刷

僕は現状兼業主夫なもので、皿洗いもすればゴミ捨てもする。

牛乳パックは洗って乾かして、開いてリサイクルへ。


…と、いつもと同じことをやっていて、急に気になった。


最近の牛乳パック、開け口と逆側を開けると「リサイクルありがとうございます」と書いてある。

それはまぁいい。


そこの部分に、使用している色の一覧がある。これも以前から気づいていた。

でも、結構銘柄によって「特色」などの使い方が違っているのに気づいた。見比べると面白い。




僕は印刷業界には全く詳しくないので、以下に書いてあることに間違いがあったらごめんなさい。


普通、印刷は4色の版で行われる。

Cyan(シアン:水色)、Magenta(マゼンタ:紅紫)、Yellow(イエロー:黄色)と、黒の4色だ。

黒は、輪郭や文字など重要な部分を〆る「鍵」となる版なので、Key Plate と呼ばれる。


この4色を、俗に CMYK と呼ぶ。


小学校レベルの知識では、「赤青黄」を混ぜるとどんな色でも作れる、というのだけど、厳密には CMY の3色。

でも、世の中理想通りにいかないのが普通で、CMY をどんなに混ぜてもきれいな黒にはならない。


そこで、黒だけ別に用意する。

これで、どんな色でも印刷できる。理想的には。



でも、たった今書いた通り、理想通りにはいかないのが世の常だ。

印刷にはいろいろな方法があるけど、最終的には「紙にインクが付くか付かないか」の2値で行われる。


グラデーションをつけたい場合は、インクがだんだん薄くなるのではなく、付いているところと付かないところの面積比を変えていく。

人間の目はあまり細かなものを認識できないので、遠目にはグラデーションに見える。


じゃぁ、微妙な色合いで印刷したものを近くで見たらどうなるかといえば、やっぱり点々に見える。



企業ロゴは、商品に小さくつけられることが多い。

でも、色の指定が厳密なことが多くて、点々で表現すると、小さなロゴの形がはっきりと出ない。


そこで、CMYK に加えて、ロゴ専用の色を使ったりする。

こういう特別な色は「特色」と呼ばれる。




冒頭に載せた写真を、大きくしてもう一度。



一番上のものは、CMYK のみで印刷されている。

次のものは、CMYK に加えて、濃紺が入っている。


その下は、特色が2色も! オレンジと緑が入っている。

その代わり、シアンを減らしている。


特色は普通は高く、CMYK は安い。

シアンを減らしても特色と相殺にはならないのだけど、少しでも安くしようということか。



そして、最後は CMYK に加えて特色2色。しかも、この特色が、ピンク(桃)とレッド(赤)。

なんて豪華な印刷。100円以下で買ってきた安いジュースですよ!


桃ジュースでした。企業ロゴは赤で、パッケージの半分くらい桃色にしてあった。

桃色が大きな面積を占めるから、まだらにするのではなく、綺麗に塗りたかったのだろうね。




こうした、どこかに使っている色を「純粋な形で」印刷したものは、カラーマークと呼ばれる。

工場では、印刷後にカメラでカラーマークを確認して、エラー製品がないかチェックしているようだ。

牛乳パックに限らず、印刷物にはたいていついているはず。


でも、普通は、印刷のあと、切り落としてしまうような部分に印刷する。

切手なんか、シートの端に印刷されているね。


牛乳パックはかなり上質な紙を使っているし、紙自体もかなり大きい。

無駄があまり出ないように作っていて、「切り落とす」ような部分がないのかもしれない。


折りたたんで見えにくくなる部分はあるから、そこに印刷している、ということなのだろう。




急に話を変える。


住民票の用紙など、コピー防止措置が施されていることがあって、そのままでは何も書いていない(ように見える)のに、コピーすると「COPY」というような文字が浮かび上がるものがある


この仕組み、どうなっているのか正しく理解している人があまりいない。

昔からQ&Aサイトなどでトンチンカンな答えをよく見る。


#今検索したら、比較的上位に来た答えのうち、1つはまともだった。ちょっと安心。

 でも、むちゃくちゃな回答は相変わらず多い。


この仕組みは、まさに「特色」をうまく利用したものだ。



白黒コピー機では、薄い水色はうまくコピーできない。これを利用した、コピーを前提とした原稿用紙なども売っている。

マス目があるのでそれを埋めるように文字を書き、コピーするとマス目が消えて「フリーハンドできれいに書いた」ように見えるのだ。


で、先に書いた住民票用紙は、たいていこうした水色で細かな装飾印刷がしてある。

コピーすると装飾が消えてしまうことで、原本ではないことがわかる。


でも、これだけだと片手落ちだ。

原本の装飾を知っている人なら「装飾がない」ことで気づくけど、原本を知らない人にはコピーだと見破れない。



そこで、水色よりも少し色の濃い青を使う。濃さは2倍くらい。

2倍くらい濃い、ということは、点々にして、インクが付くところと付かないところの面積比を半分にすれば、水色と同じような色合いに見える。


装飾の細かな模様に紛れ込ませて、このインクで「COPY」の文字を書く。

もちろん、点々で書くので、色が薄く見えるようになり、周囲の水色とは溶け込んでしまう。


というか、そうなるようにインクが繊細に調節されている。

もともと細かな模様が多いので、点々模様もそれほど気にならない。


でも、コピー機は、水色よりももっと濃いこの青には反応する。

コピーしてみると、水色の装飾はすべて消えるのに、青で書かれた COPY の文字はコピーされてしまう。


人間の目には同じような色合いに見えていても、機械から見れば「違う色」なので、反応が違うのだ。



こうした用紙、全体に水色に見えるけど、2色印刷だ。

そして、2色印刷だけど、水色も青も「特色」だ。CMYK ではない。


カラーコピー機を使っても、CMYK で印刷するので、この「特色」を完全再現できない。

だから、白黒コピー機だけでなく、カラーコピー機を使っても COPY の文字は現れてしまう。


#初期の技術だとカラーコピーでコピーできてしまったようだけど、今は対応技術がある

 


なかなか巧妙な仕組みで興味深い。

1990年代後半ごろからこうした技術が出てきたように思う。


強く興味を持ったのはそのころで、このWEBサイトを作り始めたころにあたる。

いつか歯車ページに書きたい…と思ったきり、完全に機会を失っていた (^^;


もう、当たり前すぎて興味持つ人余りいなくなって、今更感はあるのだけど、印刷の話を書いたのでついでに書かせてもらいました。




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