2015年10月31日の日記です


ロナルド・グラハム 誕生日(1935)  2015-10-31 13:40:56  今日は何の日

数学って、厳密で窮屈だと思っている人が多いです。


でも、数学ってものすごく「ファンタジー」な世界です。

SF小説がリアリティをもって「まだ見ぬ世界」を見せてくれるように、良質のファンタジーがおとぎの国を身近に感じさせてくれるように、数学は時として想像もつかない、面白い世界を見せてくれます。



良質の数学はファンタジーですが、確固とした理論の上に立っています。

良質のSF小説が、事実を組み合わせて、ありもしない世界を作り出すのと同じ。


たとえば、目の前に点があったとしましょう。

点があるにもかかわらず、大きさはありません。そんな点があるわけないのですが、ファンタジーですから。

これが「0次元」の世界です。


この点を2つ用意して、その間を線で結びます。「1次元」です。

線の両端を、点によって「囲んだ」ともいえます。


続いて、1次元の線4本で、空間を囲みます。

話を簡単にするために、角は全部同じ角度で、線の長さも全部同じだとしてください。

いわゆる真四角。正方形です。これは2次元。


正方形6つで、空間を囲みます。

今度は立方体。3次元。



ここでわかるのは、「次元が増えるごとに、空間を囲むのに必要な『1つ前の次元のもの』が、2つづつ増えていく」ことです。


1次元は、0次元の点2つで囲めます。

2次元は、1次元の線4つで囲めます。

3次元は、2次元の面6つで囲めます。



では、3次元の立方体8つで囲んだ空間を考えてみましょう。

…空中に浮かんだ十字架みたいな形、を思い浮かべるのは間違いですよ。



ここで、3次元の立方体8つのうち、隣り合うもの同士は「面」を完全に共有しています。

正方形の角は「点」を共有し、立方体の辺は「線」を共有しているように。


そんな形あり得ない? 3次元ではね。

ここでは、「立方体」といいつつ、ひしゃげた形を想像してもいいでしょう。


ひしゃげているように見えて、実はひしゃげていない。

なぜなら、これは4次元の話で、3次元に住む我々には見ることができない図形だからです。


こうしてできた、立方体8つで囲まれた形を、「4次元超立方体」と呼びます。


この先はどういう形になっているのか想像もつきませんが、5次元、6次元の超立方体だって存在します。




超立方体!

形を想像することなんてできません。ただ、存在を受け入れてみましょう。

存在しえない、ファンタジーの世界です。


ネバーランドのお話を楽しむように。

中つ国、イーハトーブ、リリパット、ファンタージェン、ジーリー宇宙…それらの世界の物語を楽しむように。


…超立方体、というわけのわからない存在がある世界を、ただ受け入れて楽しんでみましょう。



でも、数学は確固とした理論の上に立っていますから、リアリズムのあるファンタジーです。

この超立方体にどういう特徴があるのか、論じることができるのです。



1970年にこんな問題が提起されました。

問題だけでもややこしいので、内容を3つに分けて書いていきます。



▼n次元の超立方体の、すべての頂点を、ほかのすべての頂点と線で結びます。


…想像できないでしょうから、普通の立方体、つまりは「箱」で考えてみましょう。これだって n=3 の超立方体です。

他の頂点と線で結ぶのですから、通常の「辺」に加え、各面に大きく「×」を書くことになります。

さらに、箱の内部にも、対角に当たる頂点まで「紐」を引っ張る形になります。



▼結んだ線は、2つの色のどちらかで描かれるとします。


先に想像した「線」は、すべて色がついているんです。


2色ですから、白と黒でいいでしょう。色の付け方はランダム、どのような形でも構いませんが、1本の線は1色です。

白黒といっても、縞模様の線があるわけではありません。



▼n が十分に大きければ、同一平面上の4点を結ぶ線がすべて同じ色になる組みが、必ず存在する。


前半は前提条件なので、後半から。


先に、立方体の場合、各面に×を描くことになる、としました。辺の部分もあわせると、面には6つの線が描かれます。

「同一平面上の4点を結ぶ線」というのは、そういうことです。


さらに、先ほど「箱の内部にも紐を…」と書きました。実は、この部分にも平面ができている。

超立方体だと、立方体よりもはるかに多くの面ができます。


そして、前半の前提条件。

「n が十分大きければ」です。


超立方体の次元が大きければ大きいほど、出来上がる面の数は多くなります。

それらの面は、別の面と辺などを共有しています。共有している、ということは、自由が利かないということです。


ですから、線の色を好きなように決めてよいとしても、すべてを思い通りにはできないのです。


そして、最後の結論です。

完全な自由が利かず、十分すぎるほど面の数も多いとき、面に描かれた6本の線の色が「すべて同じ色になる組みが、必ず存在する」のです。




問題提起は、単に「存在する」というだけでなくて、最小の n はいくつだろう? というものです。


一応、問題の提案者は「少なくとも、n がこの大きさなら必ず存在する」という数を求め、証明して見せました。

そして、「それよりも小さな数になる n を探してくれ」と、世の中の数学者に問うたのです。



問題提案者は、今日が誕生日のロナルド・グラハム(1935)。

そして、問題提案時に示した n が、「意味のある数値として最も大きいもの」とギネスブックにも認定された、グラハム数です。


このグラハム数がまた、ファンタジーとしか言いようがありません。

話が壮大すぎて、誰もその数を計算できないのです。



33 …3の3乗、というのは、3を3回掛け合わせたもの、3*3*3 のことです。こうした計算を「累乗」と呼びます。

計算してみればわかりますが、 3*3 = 9 なので、3*3*3 = 9*3 = 27 。「3」という小さな数から急激に大きくなるのが累乗の特徴です。


コンピューター言語では、累乗を記号を使って表すことがあります。

BASIC では 3^3 、FORTRAN では 3**3 と書き表しました。


FORTRAN の書き方は、「掛け算の回数を掛け合わせた」という意味の書き方です。

「3の掛け算を3回行う」から 3**3 という書き方。


グラハムは、コンピューター関連の著書もある数学者で、こうした表記の意味をよく知っていました。

そして、BASIC 風の累乗の書き方を、FORTRAN 風の累乗の書き方によって「拡張」することにしたのです。



3^^3 という書き方は「3の累乗を3回行う」という書き方になります。

3^3^3 の意味で、計算手順としては 3^(3^3)。


先に書いたように、3^3 は 27 だから、3^27 の意味になります。

3*3*3*3* ... と、27回も掛け合わせると、答えは 7625597484987(7兆6千億)です。


3^3 の時も書きましたが、累乗は急激に数が大きくなります。

累乗には想像もつかない世界が待ち構えている。今回の話の重要なポイントになります。


さらに、3^^^3 という書き方もあります。これは、3^^(3^^3) を意味していて、3の累乗を 3^3^3 回重ねた数です。


この時点で、ものすごく巨大な数ですよ。3^^3 は先に書いたように7兆越えですから、3^3^3^3^3 …と、7兆回も繰り返すことになります。



この数、概数は計算されているけど、事実上計算できません。

素粒子1個で10進数1桁を表すことができたとして、現在見積もられている「全宇宙」の素粒子を使っても、この数を表記できないくらい大きいそうです。




さて、 3^^^3 とか 3^^^^^^^^^^3 とか、記号が増えすぎると記号の個数を数えるのも大変になるので、別の書き方をしましょう。


3^^3 のことを、G(2) と書くことにします。G はグラハムの G ね。

G(3) なら 3^^^3 のこと。G(4) なら、3^^^^3 のこと。


さっき、G(3) でもすごく巨大な数だ、と書きました。

G(4) になると概数の計算すらできていません。


そしてもうひとつ、ルールを追加します。


G2(4) とかいたら、G(G(4)) のことです。

G3(4) なら G(G(G(4))) のこと。


では、G64(4) と書いたら?


話が壮大すぎてついていけません。


数学が苦手だからわからない、とかではないよ。

数学者であっても、誰もこの数がどのくらいの大きさか理解できていません。




これが、グラハムが冒頭にあげた「n が十分大きい超立方体の各頂点を結ぶ線を2色で描いたときに、面を構成する線がすべて同じ色である面が必ず存在する」という証明に使われた、次元の数です。


n が G64(4) よりも大きいときには必ず成り立つ、という証明はできました。

だれか、もっと小さな数でもできると証明してくれ、というのが、グラハムの出した問題なのです。


この G64(4) のことを、「グラハム数」と呼びます。

先に書いた通り、意味のある数値として一番大きい、とギネスブックに認定されています(1980)。


その後、問題を満たす小さい数として「小グラハム数」が見つかったけど、これも十分に大きな数でした。

グラハム数に比べれば、ずっとずっと小さいのだけどね。


逆に、n が 6 未満では問題を満たすことができない、という「下限探し」の証明も提出されています。

現在、6ではちょっと小さすぎて、11 よりも大きいのではないか、とされているようです。




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