2015年11月09日の日記です


太陽暦採用記念日  2015-11-09 11:28:23  天文 今日は何の日

今日は太陽暦採用記念日。


つい1か月ほど前、10月15日に、「グレゴリオ暦の制定日」というのを紹介しました。

グレゴリオ暦…今のカレンダーと同じものを、ローマ教皇グレゴリウス13世が制定した日(1582)。


でも、これはローマ帝国内だけで通用する暦でした。

これがよくできているから、徐々にほかの国にも浸透していきます。



1752年9月14日にはイギリス帝国が導入。

アメリカを含む、イギリス領の植民地も一緒に導入となります。


だから、アメリカ生まれの UNIX で cal コマンドでカレンダーを表示すると、1752年 9月には面白い表示が見られる。


そして日本では、1873年の元日からグレゴリオ暦(日本では、単に「太陽暦」とも呼ばれます)を導入することにして、1872年の 11月 9日に「太陽暦の採用」を発表したのです。



…この 11月 9日って、旧暦ですね。太陰暦。

でも、現在の 11月 9日が「太陽暦採用記念日」ということになっています。


まぁ、記念日なんていい加減なものだしね。


ちなみに、1872 年の旧暦 11月 9日は、えーと…現在の 12月9日にあたりますね。




本当は、発表と同時に太陽暦の導入、としたかったようです。


当初の案では、本来 29日で終わりの旧暦 11月を 31日までに延長し、11月の終わりで年を終わりにする、というものだったとか。


上に書いたように、このときは運よく新暦と旧暦が「1か月違いの同じ日付」でした。

だから、新暦 12月と同じように、31日までにしてしまえば、そのままスムーズに新暦に移行できる。



でも、さすがに発表即導入、というのは反対意見も出て、「12月3日を翌年の元日とする」ことになったそうです。


それでも、告知から導入まで23日しかありません。非常に混乱したようです。



ちなみに、このときに「六曜カレンダー」が発行され始めます。


六曜って陰陽道などで使われた、と思っている人がいるし、それは事実その通りなのだけど、一般には浸透していなかった。

陰陽道だって、平安時代にブームになった程度だしね。



江戸の末期にはお手軽な「占い」としての六曜が流行するのだけど、暦に書き込んだりはしません。

この日はいいことあるよ、とか、気を付けて、とか書かれた紙を神社仏閣で配布しただけ。


おみくじと変わらないレベル。まぁ、気軽なエンターテインメントです。



この六曜、旧暦を使っていれば、非常に簡単に計算できるようになっていました。

逆にいえば、六曜がわかると旧暦の日付がなんとなくわかります。


さて、明治時代に入り、新暦導入に当たって、旧暦を使ってはならないことになりました。

カレンダーを作るのも禁止です。


でも、六曜までは禁止されていない。

そこで、カレンダーに六曜が併記されるようになります。

事実上、禁止された旧暦カレンダーを作っているのと同じ。


それでも、庶民がこれが「旧暦を知るのに役立つ」と思って使っていただけ。

いまでも、平成の年号を「昭和」換算する人がいますが、それと同じこと。


たまたま江戸時代に流行した占いと同じ言葉が書いてあるだけで、そこに深い意味はありません。



…でも、時代が経って、今でも六曜が印刷されたカレンダーはあって、すでに旧暦なんて誰も使わなくなっている。

この六曜は何のために書かれているんだ? と、知らない人が江戸時代の占いを持ち出して、その日は縁起が悪い、とか言い出す始末。


昭和の中期に非常に流行し、弊害もたくさん出ました。

最近は多くの人が「根も葉もない迷信」だと理解してきたけど、まだ結婚式や葬式の日程で六曜を気にする人がいます。

(だからカレンダーにも印刷されているのですが)




話を変えます。


わずか1か月足らずの告知で太陽暦を導入した理由ですが、「諸外国に合わせる」という必要性もありました。

でも、給与支払いのため、という側面もあった模様。


江戸時代は、士官する武士には録が与えられました。これ、今でいえば「年棒」のこと。

1年間いくら、という契約なのですね。


でも、明治になって月給制に変わりました。

そして、太陰暦では「閏月」があります。1年が13か月になる年があるのです。


1873年が、ちょうどその年でした。

そのままでは、13か月分の給料を払う必要があります。でも、太陽暦に移行すれば12か月分で済みます。

1か月分の給料が浮くのです。


さらに、最初に書いたように「11月を 31日までとして、12月をなくす」方法で太陽暦を導入すれば、1872年も1か月分が浮きます。

なんと、2か月分も給与支払いが無くなってしまう。


これが、1か月足らずの告知で強引に太陽暦を導入した理由だったようです。





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