スパルタかます、をご存じだろうか。
知らない? では、「スパルタカス」ならどうか。
…いや、知らなくても何も問題ない。
スパルタカスは、アップルが創立20周年記念で発売した、特別仕様の Macintosh だ。
当時は、ノートパソコンは「持ち運べる」ようにするために、かなり無理をしていた。
デスクトップマシンとの性能差は明らか…ノートパソコンは「貧弱」だった。
一方で、液晶ディスプレイはまだ高価なもので、小さな筐体にすべてを詰め込む技術も高価だった。
つまり、ノートパソコンは高価な割に性能が低かったのだ。
(とはいえ、持ち運べるという特別な機能は、必要とする者には十分お金を払うに値した)
スパルタカスは、そんな時代にノートパソコンをベースとして作成された、デスクトップマシンだった。
不格好なブラウン管ディスプレイと、そのディスプレイを置ける「台」として使える大きなコンピューター筐体が当たり前の時代に、スマートな液晶ディスプレイと、板のように薄い本体を一体成型した、デザイン性の高いマシンだった。
このデザイン性の高さは、付属するボーズ製のサウンドシステムや、キーボードに付属する本革製のパームレストも含んだものだ。
つまりは、記念品だからと金に糸目をつけずに高級な素材を使用し、しかし肝心のコンピューターの性能は「1世代前のノートパソコン」(市販のノートをベースに設計しているうちに、世代が変わってしまった)で、値段の割に性能が低すぎるという問題を持っていた。
…と、それがスパルタカスなのだが、長々と話しておいて、「スパルタかます」とはそれほど関係がない。
「スパルタかます」は、主に Apple 製品向けの周辺機器を作成していたサードパーティから発売になった、PowerBook (ノート型 Mac)向けの、「ノートを開いて立てておく台」だ。
スパルタカスは、ベースになったノートマシンから見れば、「ディスプレイを最大に開いて立てた状態」だった。
じゃぁ、そういう形で立てられる台があれば、似た使い方ができるだろう。
キーボード部分が垂直に近くなってしまうので、外付けキーボードを付けて使うことが想定されていた。
そうすることで、ノートパソコンのための貧弱なキーボードではなく、使いやすいキーボードを使える。
これ以前、ある時期の PowerBook は、「Dock」と言われる仕組みが使える機種があった。
ノートパソコンを持ち歩き、家に着いたら「Dock」を装着する。
すると、電源に接続して充電が開始されるだけでなく、ブラウン管ディスプレイと、外付けキーボード、マウス、イーサネットへの接続も行われる。
家にいるときはデスクトップのように使い、そのまま外出もできる。それが Dock の仕組みだった。
「スパルタかます」が発売されたころには、Dock 接続できる PowerBook はなかったように思う。
しかし、持ち運べるノートパソコンを、家ではデスクトップのように使いやすくしたい、という需要はあった。
スパルタカス、という当時話題性があった商品名をパロディ化し、キーボードを垂直に立てるという「厳しさ」を「スパルタ」と呼び、Apple が辞めてしまった Dock のコンセプトを取り戻そうとする。
そうした意欲作が「スパルタかます」だった。
翻って現代。
液晶は十分に安いものになり、デスクトップでも使用される。
回路製造技術は十分に進化したため、小さなマシンでも十分な性能を持つ。
むしろ、ノートマシンが標準で、デスクトップは「それ以上の性能を欲するもの」向けになりつつある。
しかし、ノートパソコンの弱点の一つが、ディスプレイ位置が低いことだ。
どうしてもデスクトップ用よりも小さく、低くなってしまい、使う人の姿勢が悪くなりがち。
そこで、ノートパソコンの下に取り付け、ディスプレイ位置を高くする「ノートパソコン台」という製品がある。
ノートパソコンの下に空間を作れるため、冷却効果を謳う製品も多い。
ディスプレイ位置をわずかに持ち上げつつも、キーボードが使えるようにしている製品と、外付けキーボードを使うのを前提に思い切ってディスプレイ位置を上げてしまう製品とがある。
さて、数か月前に僕もノートパソコンを購入した。
今時デスクトップよりこちらの方が安い、という理由もあるし、最初は「家の中で持ち歩けたら便利そう」と思っていた。
しかし、案外持ち歩かない。
僕は仕事以外ではあまりPCを使わないし、仕事は集中しないとできないので、家族のいるリビングで…はとても無理だった。
じゃぁ、仕事場で使いやすいように環境を固めてしまおう。
WiFi を使わず、イーサケーブルを挿す。この方が通信が速い。
ディスプレイが低い、とは思っていたが、キーボードが斜めなのはどうなのだろう? と躊躇していた。
妻が「欲しい」とノートパソコン台を購入したので、少し使わせてもらった。
悪くない。しかし、妻の使っているものは持ち運びやすいよう軽量な分、剛性が低くて打鍵すると揺れる。
そこで、Amazon のレビューで「重いから揺れない」と評判の台を購入した。
いや、この台、メーカーの宣伝文句では「軽量で持ち運びに便利」となっているのだけど、皆「重さがいい」と評価している。
実際、打鍵しても揺れなかった。いい製品だ。
しばらく使っていたのだが、台の都合で奥行きが少し必要になる。
実は、前のマシンのディスプレイがまだ机の上に載っていて、奥行きが確保できない。
じゃぁ、少しディスプレイを横にずらして…
横にずらしたらディスプレイ全体が見えるようになったので、ついでに HDMI で接続し、デュアルディスプレイにしてみる。
お、便利便利。画面も広くなって悪くない。
…と思っていたら、前の画面の方がディスプレイサイズが大きくて文字が読みやすいので、ついそちらの画面ばかり使ってしまう。
これが「横」にあるものだから、首が横ばかり向いていて肩がこる。
うーん、じゃぁ、いっそのことこちらをメインディスプレイに…
そうすると、ノートパソコンのキーボードは使えないので、前のマシンのキーボードを持ってきて外付けしよう。
そんなわけで、現在その環境でこの日記を書いている。
前のマシンのディスプレイ、前のマシンのキーボード。
でも、横に新しいノートパソコンが置いてあり、デュアルディスプレイ環境になっている。
(ちなみに、「メインディスプレイ」には、外付け側を指定している。
こうしておいても、ノートマシンだけ持ち出すと、自然にノートがメインになるから大丈夫)
こうなると、ノートを持ち出すたびに、外付けキーボードとマウスと HDMI とイーサネットを抜き差しする、というのも面倒だ。
PowerBook の Dock のようなアイディアが今でも復活してくれればと思う。
(いや、そういう製品を作っているメーカーはちゃんとあるのだけど、やはり特別な製品になってしまって高価なことが多い)
余談
書いていて思い出したのだが、昔はブラウン管ディスプレイは「位置が高い」という批判があった。
本を読むときに、目の前に高く掲げては読まない。
机の上に置き、視線を落として読むのが自然だ。その位置にディスプレイがなくてはいけない。
…そういう主張で、ブラウン管を机に対して斜めに「落として」見やすくするパソコン机、というものが市販されていた。
この主張からすると、現在のノートパソコンの位置は、自然で読みやすい位置のはずだ。
しかし、位置が低いとそれに合わせて頭を下げようとしてしまい、姿勢が悪くなる、というのが、パソコン台メーカーの主張だ。
まぁ、実際は「人による」と思う。
昔の読書家は、本と同じように低い方が読みやすいだろうが、高い位置のディスプレイに慣れた、デスクトップからパソコンを使ってきた人にはノートは低い。
各自使いやすい位置を模索すればいいと思うけど、今のノートパソコン台の「逆」が、ディスプレイを斜めに収納できるパソコン机なのだな、と思った。
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