2015年11月23日の日記です


「ちきゅう」一般公開  2015-11-23 11:27:02  歯車 社会科見学 家族

JAMSTEC の所有する地球深部探査船「ちきゅう」を一般公開する、というので家族で見に行ってきた。


時々書いているけど、妻の友人に JAMSTEC 勤務の人がいるため、子供たち(と僕)は JAMSTEC 関連の話題にそれなりに詳しい。

でも、「ちきゅう」は、話としては知っているけど実際に何をやっているのか、などは全然しらない。


しんかい 6500とかは何度も実物見ているのだけどね。




「ちきゅう」は、地球の中がどうなっているのかを探るために、海の底に穴を開けて土壌サンプルを採取するための船。

海の上に浮かんでいる船から、深い海の底までパイプを伸ばし、さらにそのパイプからドリルを繰り出して穴を開ける。


この際、穴を開けるといってもただ掘るのではない。真ん中に一本、綺麗に「掘り残し」を作るように周囲だけを掘る。

そして、この掘り残しを海上に浮かぶ船まで、そのままの形で持ち上げる。

これによって研究者は「海底の地層」をそのまま手に入れられる。



海の底よりもさらに深いところまでパイプがつながっているわけだけど、内部にものをきれいに通すためにも、このパイプが僅かでもたわむことは許されない。

波や潮の流れがあるにも関わらず、ハイテク制御により船は微動だにしないように作られている。


とにかく最先端技術のかたまり。



なんで、わざわざそんなに掘りにくい海の底を掘るのか、と子供が疑問を持った。

話は簡単で、「地球の内部」を知りたいからだ。

山のてっぺんと海の底、どちらが地球の中心に近いだろう、と考えると船の意義は自然に見えてくる。




船は24時間体制で研究を続けていて、ほとんど寄港しない。

人員交代や物資補給はヘリコプターで行われる。


建造5年目に、定期点検で一度日本に戻ってきて、その時は神戸で見学会を行ったらしい。

今回は10年目の定期点検で、横浜で見学会が行われた。


見学会は予約制で、1時間ごとに区切られている。

うちは、22日の12時の回に予約を入れた。11時に受付開始だった。




さて、我が家から受付となる横浜みなとみらい地区の最寄り駅である桜木町まで、電車で30分ほどかかる。

家から駅までも 30分程度。桜木町から会場までも、歩いて 15分は見といたほうが良いだろう。


12時の回だと、子供がおなかすいたと言いそうなので先にご飯を食べていこう。

…などと考えると、9時には家を出たい。休みの日だとはいえ、平日とあまり変わらない朝のスケジュールとなった。



桜木町から日本丸の前を通り、汽車道を通ってワールドポーターズへ。

これ、1年半前にも通ったコースだ。


次女(6歳)に「プリキュア映画で出てたところ」といっても、あまり覚えていないようだ。

1年半前に、通る前と後で2回ビデオ見たのだけどな。


プリキュアに別に興味はない長男(11歳)は映画のシーンまでよく覚えているようで、あそこに誰がいた、みたいなことまで言っている。




ワールドポーターズに入ればなんかご飯食べられるだろ…と思ったら、まだ開店していなかった。

マクドナルドは8時から営業している、と書いてあったのでマクドナルドを探す。


探している間に音楽が鳴り始めてシャッターが開いた。

10時半営業開始らしい。


じゃぁ、マクドナルドよりもう少しいいもの食べよう、とフードコートへ。

いろんな店があるので各々好きなものを食べる。

食べ終わったら11時15分。あと15分で受付しなくちゃ。先を急ぐ。


受け付け会場がどこかよくわからなかったのだけど、すぐ見つかった。

受付のあと、実際の船までバスで輸送していた。この列が長くて、30分ほど。


子供たちをトイレに行かせておいたほうが良いだろう、と考え、目の前の赤レンガ倉庫にトイレを借りに行く。

妻が付いていき、僕はバス待ちの列へ。




バスに乗って20分程度、「ちきゅう」は本牧ふ頭の、普段は関係者以外立ち入り禁止の区域に停泊していた。


見た人は大きさに驚く…と散々言っていたのだけど、まずバスが遠くにいる段階で見えてしまったことで、そのような驚きはない。

小さく見える段階で姿を見てしまい、だんだん近づいても「予想できた大きさ」に見えるだけなので。


大きさは大体、8階建てのビルくらいを想像してもらうといいと思う。

ざらにある大きさ。特に大きい、という感じはない。


ただし、そのビルの屋上に、大きな櫓が立っている。掘削のためのパイプを下に送り出すための装置。

それでもまだ、高層ビルを考えると全然小さい。


大きいといっても想像を絶する大きさではないんだな…という感想。



でも、いざ船に乗る段になって気づく。

これ、ビルじゃない。しっかりした地面の上に立っているのではなく、水の上に浮いているんだ、と。


そう考えると、とんでもない大きさ。

船をよく知らないから大きく感じないだけで、船を知る人が見ればみんな「大きさに驚く」のだろう。

素人ゆえの勘違いで驚愕していないだけだったのだ。



ちきゅうは、最大乗員 200名だけど、常時 150人程度で運用しているそうだ。

船員が 50人、掘削技術者が 50人、研究者が 50人。


これが、2チームに分かれ、2交代制で 24時間働いている。

ということは、12時間労働。過酷な仕事環境だ。

ヘリコプターで乗船して、大体1か月滞在すると、ヘリコプターで下船する。


乗員が200人の船、というと、旅客船としてはそれほど大きくはない。

でも、この 200人が1か月暮らせる設備が整っていると考えると、ここは人口 200人規模の村なのだ。


その村が、8階建てのビルに収まり、水の上に浮いている。5年の定期検査の時くらいしか寄港しない。

SFのような世界だ。




「ちきゅう」に乗船しても、全然揺れない。

船が大きすぎて揺れにくいというのもあるし、そもそも微動だにしないための装置がつけられている船なのだ。


船内ツアーはコースに従って自分で見て回る形だったけど、基本的に研究設備部分の紹介だった。


地層サンプルは、10m 程のものが、1~3時間で掘れるそうだ。すごい速度。

そして、これが船上にあげられると、CT スキャンや超音波により、非破壊検査が行われる。


この非破壊検査の結果、「貴重な部分」を避けるような形で、1.5m 程度の長さに分断される。

長いままでは研究しにくいからね。


さらに、縦に真っ二つにスライスして、中身を直接観察できるようにする。

1.5m もある、泥も石も一緒に含まれるものを、形を崩さないように真っ二つにできるのだ。すごい技術だと思う。


その後の作業は必要に応じて違うようだ。




酸素を追い出して窒素を充填できるグローブボックスがあった。

映画なんかで見たことある人も多いと思うけど、ガラスの箱に、手を突っ込むグローブがついているやつね。

あれで、完全に外の環境と遮断した状態で、サンプルを操作できる。


というのも、深海のさらに海底の泥の中に生きる生命がいるのだとか。

そんなところでは酸素は届かない。酸素がなくても嫌気性細菌なら生きられる。


そして、嫌気性細菌にとって、酸素は猛毒だ。だから、殺さずに研究するためには、酸素を追い出せる環境が必要なのだ。



サンプル表面の写真撮影をできる特殊装置もあった。

1.5mの長い表面に密着する形で、細長い写真を撮影できる。


特筆すべきは、この「写真」が、人間が見るためのデータではない、ということだ。

RGB 分解するのではなく、連続スペクトルデータとして撮影を行える。


光の三原色って、人間の目がそういう仕組みになっている、というだけで、光の性質とは違うものだからね。

ここで使われている撮影装置は、人間の目では見えないものも含めて、完全なデータを記録するものなのだ。


同じように、X線を照射して蛍光を記録する撮影装置もあった。

サンプルの質量と密度を精密測定する機械もあった。




面白い、と思ったのが「電子天秤」。


重さと質量は違う。

たとえば、体重計に乗って体重を測るとする。


同じ体重計を使って北極点で測ったデータと、赤道上で測ったデータではわずかに重さが違う。

赤道上のほうが、遠心力によって重力が相殺されていて、体重が軽くなる。

(コップ1杯の水程度にも変わらないけど、厳密には軽くなる)


正確に測りたければ、天秤を使う。

10g の分銅と釣り合う試料は、北極点で測っても赤道で測っても、10g の分銅と釣り合う。

重力が変動するとき、その影響は分銅と試料の両方に現れるためだ。


このようにして、重力変動の影響を受けないように正確に測られた重さを、「質量」と呼ぶ。



さて、科学では質量が大切なので、今でも科学者は古臭い天秤ばかりを使う…と子供の頃に聞いていたし、今でもそうだと思っていた。


でも、ここには「電子天秤」というものがあった。

電子天秤と呼ばれるものは世の中にもあるのだけど、ここにあるのはそれを改造した特別なもの。



天秤と名前がついているように、やはりものを載せる場所が2つある。

というか、改造した精密な「はかり」を、2台コンピューターに接続してある。


でも、この2つで「釣り合うように」分銅を交換したりする手間は必要ない。

片方に質量のわかっている分銅などを載せ、その質量を電子天秤に「教えて」やると、もう片方に載せた資料の「質量」を教えてくれる。


片方をキャリブレーション用に使い、もう片方の値を計算で補正しているのだな。


詳しくは教えてもらわなかったけど、この「2台の秤」の個体差も時々キャリブレーションする必要があるのではないかと思う。

これも簡単で、全く同じものをそれぞれに載せて、重さが違うというような判定になってしまったら、計算で補正すればよい。



さて、様々な測定機器があったけど、電子天秤のようなものは、揺れる場所では使えない。

地上でも、わざと機器を重くしてあって、しっかり据え付けて使うようなものだ。


それが船の上で当たり前に使えるという。

これもまた、「ちきゅう」のすごさがわかるエピソードでもある。




見学順とは前後するが、操舵室も見学できた。


普通の船の操舵室は、レーダースクリーンが「波長別に」いくつか並んでいる。

でも、地球では1つの波長ごとに、2つのスクリーンがある。

というのも、船体中央に大きな「櫓」が立っているため、櫓が邪魔でレーダーの死角が生じてしまうため。


現代のレーダースクリーンは、ベクタースキャンの CRT ではなくて、パソコン画面上にデータをプロットしたものになっている。

じゃぁ、2枚を合成することだってできそうなものだけど、これはあえてやっていないのだろう。

合成すると「元データ」を加工することになるし、レーダーに一番求められる機能は、生のデータを提供することだから。



以前別の船を見たときにも感じたけど、レーダースクリーンを含むパソコン画面は、トラックボールで操作されるようになっている。

狭い制御パネルの中でマウスを動かすスペースは確保できないからね。

今回は違ったけど、以前見た船では Logicool のトラックボールとかそのまま使っていたな。


各種装置にもそのまま Intel Inside マークがついていたり、案外普通のものを組み合わせて作られている。

「船」というハードウェアはすごいけど、それを制御する部分は、信頼性が確保できるのであれば何でも構わないのだろう。


そうそう、船の中でハッピーハッキングキーボードが使われているのを見つけられたのも有意義でした。



見学時間はわずか1時間程度だったけど、なかなか興味深いものをたくさん見せていただきました。

下船後、仮設テントのお土産屋さんで、「ちきゅう」の来年版カレンダーを買って帰りました。


以前もらった普通ではないカレンダーとは違って、普通のカレンダーだったよー(笑)




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