2014年09月21日の日記です

目次

09-21 HARLIE あらすじと解説(1/2)
09-21 HARLIE あらすじと解説(2/2)
09-21 HARLIE に興味がある人へ


HARLIE あらすじと解説(1/2)  2014-09-21 11:46:00  その他

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引き続き HARLIE の話。


あらすじ書きましょう。

僕みたいに、20年以上も探しているけどまだ読んでない、と言う人は話の内容が気になるだろうから。


簡単に入手できるのであれば「自分で買って読んでね」とするのですが、すでに絶版で入手困難、再版の可能性も低いと思います。

発行元の「サンリオSF文庫」がすでにないからね。


同文庫で翻訳された作品で、別の会社から再版されている本もあるみたいですが、HARLIE はそれも望み薄。

(すぐ後に書きますが、なんというか、非常に「マニア受け」する内容なのですね。当時の風俗の知識がないと理解しにくい感じ)


「いつか必ず自分で入手するから、あらすじなど読みたくない」と言う人は、この先は読まないでくださいね。



先ほど書きましたが、非常に「マニア受け」な内容です。

ある種の内輪受けで、いろんな知識が無いと十分に楽しめません。


内輪と言っても、「アメリカ人の、同世代の若者で、SF 好き」であればほぼみんな知っていたであろうカウンターカルチャーが話題の中心です。

それも、そうしたカウンターカルチャー周りの多数の概念・作品が、小説内の小道具として巧みに取り入れられています。


必要な知識としては、大きく分けて2つあります。


1つ目は、ヒッピームーブメント。当時のアメリカの若者たちの間に広まった思想です。

2つ目は、コンピューター科学、特に人工知能研究。当時の最先端科学の一つでした。


両方「当時の」知識が必要です。


…どういうことかと言えば、「ヒッピームーブメント」の時代の空気を色濃く反映しているのです。

コンピューター科学ですら、当時はヒッピームーブメントの影響を非常に強く受けていました。

(中央集権をやめて平等にしよう、という世相から分散処理のインターネットが生まれたりしています)


ここら辺の知識が無いと十分楽しめないです。多分知識なしに読んでも「まぁ面白かった」程度の小説ではあるのですが、裏読みし始めると非常に奥が深くて、何倍も楽しめる。


…まぁ、つまりは 40年前の SF は、既に古典文学の領域だってことですね。

古典文学は当時の世相から勉強しないと読めませんから。


というわけで、あらすじの前に当時の雰囲気の説明から入るのです。




まず、ヒッピームーブメントから。


当時のアメリカはベトナム戦争の最中で、社会全体に疲弊感がありました。

ジョン・レノンが「イマジン」「戦いは終わった(War is over)」を歌ったのは 1971年。


アメリカはベトナム戦争に介入しましたが、泥沼化しました。

物量で押す、というのが得意なアメリカの作戦に対し、ベトコン(ベトナム・コミュニスト、ベトナム共産主義者の意味)兵士は、米軍兵士を一人ずつ着実に殺していくゲリラ戦で応戦しました。


アメリカにとって経験したことのない戦闘でした。

「他国の戦争」にわざわざ首を突っ込んで、多くのアメリカ兵が戦死したのです。

(統計により異なりますが、最終的な死者・行方不明者6万人とされています。このほか多くの「重傷者」を出しました。)



戦場では、恐怖をやわらげるため、負傷兵の痛みを緩和するために、積極的に麻薬が使われました。

ベトナム帰りの兵士には麻薬中毒になっているものも多く、いくつかの州では、彼らのためにマリファナが合法化されました。

また、当時「副作用が少ない」とされる新型合成麻薬、LSDも台頭しました。


これらの麻薬を体験したものが、その体験を図で示したもの…「サイケデリック」アートのブームが起きます。

これは、麻薬をやらない人間に対しても、どういう感じかを追体験させる効果がありました。



テレビが普及してから初めての「大規模な戦争」だったため、リアルな戦場を多くの人が「目撃」しました。

この点も、従来の戦争とは違いました。


反戦ムードが高まり、平和を求める運動が起こります。

多くの死者が出たことで、生と愛を強く求める運動が起こります。

政府の命令や「国家のために」死者が増えたことに反発し、ヒエラルキーを否定し平等を求める運動が起こります。

戦争を起こす近代兵器と近代文明を否定し、自然に回帰しようという運動が起こります。


ヒエラルキーの否定と愛の渇望は、従来のキリスト教を否定します。

また、麻薬体験は「神」を感じさせる効果もあります。(多くの宗教で、酒やたばこを含むドラッグは「神に近づけるもの」として使用されます)


ここから、新興宗教ブームも起こっています。

インド哲学に傾倒したり、日本の「禅」に傾倒したりする人が出たのもこの頃。(代表例:スティーブ・ジョブズ)


これらすべてをひっくるめたものが「ヒッピームーブメント」です。

基本部分に「平等」がありますから、誰かが運動を牽引するようなことはありません。

だから、ヒッピーと言っても人により考え方は全く異なり、近代文明の否定は行わずコンピューターを作るヒッピーもいますし(代表例:スティーブ・ジョブズ)、大多数の人は思想的には感化されつつも、それまでと変わらない生活を送っています。


「イージーライダー」(1969)という映画が、当時のヒッピー文化の中で作られています。僕は見たことないのだけど。

この中で、主人公たちはハーレーダビッドソンを乗り回す。ハーレーは自由の象徴です。


実は、これも小説の中でちょっと関係してきます。




さて、当時を代表する言葉の一つが「フリーセックス」。

破廉恥極まりない…と言うのが当時の大人の反応ですが、これは単純に乱交騒ぎを楽しむようなものではなく、「家族も国も捨てても構わない」と言う覚悟を持った抗議行動の一つでもあります。


#もちろん、乱交を楽しんでいるだけの人もいたと思いますが。


汝、姦淫することなかれ。キリスト教の教えの一つで(厳密に言えばユダヤ教から引き継いでいます)、婚姻関係にないものが性行為をしてはならない、ということです。

(キリスト教も宗派によって性行為の受け止め方は変わります。セックスを示す場合もありますし、キスでも姦淫だ、いや女性を性的な目で見るだけでも姦淫だ、など)


恋人でも結婚するまではダメ。両者の同意や愛の問題ではなく、「結婚」と言う形式を経ないうちは、姦淫してはならない。

それがキリスト教の戒律です。


しかし、キリスト教はまた「愛」を説きます。汝の隣人を愛せよ。汝の敵を愛せよ。

では、愛がなくても形式的な結婚をすればセックスして良くて、愛し合い、婚約していても結婚式まではセックスは禁止でしょうか?


ベトナム戦争で、アメリカの若者は「人間はいつ死ぬかわからない」という終末感におおわれていました。

これが誰かに激しく愛されたい、セックスしたい、という欲求に繋がり、キリスト教の矛盾とぶつかったのです。


そして、アメリカは政教分離を標榜してはいますが、現実的にはキリスト教の国でした。特に、1960年代まではそう。

キリスト教の戒律に背くというのは、国も家族も捨てるくらいの覚悟がいるのです。


その覚悟を持ったキリスト教排斥運動が「フリーセックス」。

日本では当時も「麻薬でイカレタ奴らが乱交してる」みたいに捉えられたのですが、ある意味もっと深い覚悟を持った、体を張った抗議活動なのです。




もう一つの当時の時代背景、コンピューターについて。


前回書いていますが、Intel 4004 発表の翌年で、まだパソコンは生まれていません。


個人で入手可能な値段では、PDP-8 がありました。この頃 5000ドルくらい。

当時の物価と比べると「自動車より高い」と言う感じですね。(安い自動車なら、新車で3000ドル代だったようです)

もちろん、一般家庭に普及などしていません。個人で持っているのはよほどのスキモノ。


小さな企業が使うなら、コンピューターの「時間貸し」サービスの方が一般的でした。

端末に電話回線を繋げ、大型コンピューター(よく使われたのは PDP-10)に接続します。



端末としてよく使われたのは、テレタイプ端末。


1968年には NLS が発表されています。これは、テレビ画面に文字を表示する端末を使用します。

NLS は 1960年ごろから研究が始まっていて、テレビを利用する最初期のコンピューターなのですが、1972年ごろには「テレビタイプライター」と呼ばれる、CRT 付き端末も存在はしていたようです。


テレタイプ端末として特に普及していたのは、1960年に作られた IBM Selectric typewriter 。

ボールプリンタとも呼ばれるもので、ゴルフボールのような球の表面に活字を配置してあるため、回転させるだけで適切な文字を選び出せます。

このため、高速・綺麗な印字が可能でした。

(小説中の HARLIE には、IBM 端末も CRT 端末も接続されていることになっていますが、主人公は好んで IBM 端末を使っています)


テレタイプで会話することについて、小説内でさりげなくチューリングテストという単語が現れます。

チューリングテストは、コンピューターには実現不可能な人間的な部分…外観や声、目線の動きなどを徹底的に排除し、「知能」のみで誰かと会話をしたときに、相手が人工知能と人間を見分けられるかどうか、と言うテストのこと。


人間的な部分の排除には、通常文字によるチャットが使用されます。

つまり、当時ならテレタイプ端末による対話です。

(小説内ではチューリングテストの説明はありません。当時のSF好きにはお馴染の概念だったのでしょう)



1964~1966年にかけて、ELIZA という人工知能プログラムが作られます。

これは、精神分析医と言う設定によりチューリングテストを行うことを想定したプログラムで、利用者のカウンセリングを行います。


今の知識で見れば非常に単純な「ボット」なのですが、当時としては非常に良くできている、と考えられたそうです。

一部の人間が本気で ELIZA に相談を持ち掛けるようになったので、怖くなって開発を停止した、とも言われます。

(どうも、この話はマユツバネタなのですが)


この「タイプライターで対話できる人工知能」は、明らかに小説に影響を与えています。



当時 IBM のコンピューターは、大企業ではよく使われていて、帳簿整理やビジネス文章の管理などに活用されていました。


小説内では、HARLIE の研究をしている会社でも、IBM のデータベースシステムを利用しています。

社内の各部屋にはテレタイプ端末が設置され、どの部屋からでもデータベースシステムにアクセスできます。


小説内の設定では、このデータベースシステムには十分な記憶容量があります。

そして、新しい素子によるコンピューターのプロトタイプである HARLIE には「演算部」しか存在せず、データベースシステムのメモリを間借りしています。

HARLIE は端末と互換性があるようにインターフェイスが作られていて、データベースシステムにアクセスしてそこの情報を取り出したり、書き込んだりできるのです。


小説の中で「空想」なのは HARLIE の処理回路だけで、それ以外は当時の技術で作られているのです。



ちなみに、映画「2001年宇宙の旅」(1968)の HAL9000 について、小説内で言及があります。

HARLIE がテレタイプ端末に接続されているのは、おそらくは当時の技術で存在し得るようにするためなのですが、言及部分でのみ、HAL9000 のような「マイクとスピーカー」で会話するシステムを採用しなかった理由が語られます。


…まるで、当時の技術で十分に音声認識が出来るかのように。

(当時、音声合成はすでにできましたが、認識は十分ではありませんでした)


それによれば、HAL9000 は全ての会話が聞こえてしまうため、自己矛盾に陥って狂ってしまった。

HARLIE はそうならないようにテレタイプで会話するように設計している、そうです。




小説を読むための「前知識」を書いただけでかなりの分量だ…

決して難しい小説ではなく、40年もたってしまって古典になっているから前知識が必要なだけです。

この点、お間違えの無いように。


#そして、HARLIE が復刊されない理由もおそらくここら辺にあるでしょう…


さて、以上を踏まえて、あらすじ行きましょう。


あらすじをざっくり書くと、人工知能の HARLIE が成長して「神」となるお話です。

…うわ、ものすごくB級 SF っぽい。


でも、HARLIE がよく出来ているのは、先に書いた通り「当時の技術」の裏打ちがあり、しっかりとした理論で話が進むため。

非常にしっかりと進みながら「神になる」という突拍子もない展開をやってのけるのです。


HARLIE は、コンピューターらしく「神とは何か」の定義を必要とします。

他にも、大人になるとはどういうことか、愛とは何か、生とは、死とは…


小説の中で、主人公と人工知能が交わす会話の内容は、まるっきり禅問答。

そう、実は HARLIE が神になる、と言う「結末」だけではなく、この小説全体が「宗教書」のパロディとなっているのです。

当時のキリスト教の信用が失墜しつつある中で、新しい形の神を模索する HARLIE の姿は、多くの読者の心を掴んだのでしょう。



HARLIE の成長と並行して、さらに二つの話が、複雑に絡みながら同時進行します。


1つ目は、主人公の恋愛話。主人公は相手を愛しているのかどうか思い悩み、HARLIE と共に愛とは何かを考えます。

先に書いてしまいましたが「愛とは何か」の部分ですね。


HARLIE は機械なので論理的な事しか言いません。

しかし、論理的にしか答えないからこそ、キリスト教の常識を打ち崩し、納得できる「愛の形」に辿りつきます。

(そして、途中で示される「論理的に正しい愛」は、小説の最後の驚きの展開へと続く伏線になっています)


2つ目は、企業転売屋との対決。

HARLIE の開発企業は転売屋に乗っ取られかかっており、もし転売屋が実権を握れば、利益の出ない研究プロジェクトである HARLIE 計画はストップ、HARLIE は死ぬことになります。


死の恐怖におののく HARLIE は、「人間なら死の恐怖を宗教で紛らわせる」と、宗教を研究します。

しかし、彼から見ればどの宗教も矛盾だらけ。HARLIE は、彼の考える神を求めるようになります。


コンピューターを死の恐怖から救う神!

秀逸なアイディアですが、ここにも当時のヒッピーたちの切望が見て取れます。

みな新しい神を欲していたのです。怪しげなカルト宗教にハマってしまったものも数多くいますが、もっと矛盾のない宗教はないのか…




もうちょっと細かくあらすじ書きましょう。


主人公のデイビッド・オーバースンは、実験プロジェクトである HARLIE の責任者です。

と言っても、プロジェクトには途中参加。HARLIE の完成が近づいた段階で、この新しい「人工知能」は人間のように学習するので、教師役が必要だと連れてこられた人物。


デイビッドは、本来は精神分析医です。その知識を活かして HARLIE が「どのように」思考を行っているかを見極め、彼を正しい方向に導くために呼ばれたのです。


ちなみに、精神分析医はアメリカでは良くある職業。デイビッドと言う名前も非常に多い。

(作者の名前もデイビッド・ジェロルドです)


つまり、主人公は「どこにでもいる人物」です。星新一でいえばエヌ氏のような人。

もしかしたらあなたの身に起きたかもしれない物語、という体裁です。


小説は、この「どこにでもいるような人物」が、周囲にふりまわされることで進んでいきます。

彼自身が驚くような活躍を見せたりすることはありません。



デイビッドは計画に途中参加なので HARLIE プロジェクトの始まった理由を知らないのですが、これは話が進むにつれて明らかにされます。

あらすじを書く上では、先に明かしてしまいましょう。


シリコンバレーにある親会社が超状態(ハイパーステート)判断回路4型、という新たな素子を発明し、これをコンピューターに応用する研究のために、子会社が設立されました。

ここで作っているのが HARLIE なのですが、同様の会社が他にもあり、それぞれ映像機器への応用、音楽機器への応用…などを研究しています。


さて…細かな解説はすっ飛ばしましょう。この部分に関しては、このSFの中で唯一「大嘘を付いている」部分です。

とにかく夢の回路があり、人間の脳をそっくりに模倣できる機械が作られます。


それが HARLIE です。

ちなみに、名前は「世界をそのまま入力できる人間類似型ロボット」の頭文字です。


#翻訳では違うのですが、たぶん単語の意味を1つ取り違え、全然違う意味になっているため。

 でも、ここはお話には関係ないからどうでもいい部分。



HARLIE は、従来のコンピューターと原理が違うため、いわゆる「プログラム」は不要です。

大量のデータを食わせれば、勝手にその中から類似性を探し出し、分類し、特徴を見極め、世界を認識し、学習します。


しかし、プログラム不要と言っても、HARLIE に「方向付け」を行う必要があります。

そのため心理学者のデイビッドが必要なのです。彼は教師であり、父親でもあります。

HARLIE が疑問を持てば根気よく教え、間違ったことをすれば叱り、何がただしいふるまいで、何が間違っているのかを教える必要があります。


HARLIE は、大量のテキストを読んで英語の文法などを自動学習し、すでに人間と対話することができます。


しかし、人間でいえば8歳くらいの知能しかありません。

記憶したことは忘れないため、知識量は膨大です。その上、テレビ・ラジオ・気象情報・株価情報など、電子的に与えられるありとあらゆるデータを流し込み続けているため、自動でどんどん学習します。


カメラによる入力も可能で、本などもどんどん「読んで」覚えています。ただし、こちらは人間の手助けが必要です。

小説内では細かく描写されませんが、どうやら HARLIE にデータを食わせる係がいて、図書館などの蔵書を手当たり次第に読み込ませているようです。


カメラで美術作品を鑑賞させて反応を見る、という実験も行われています。

論理的でない「美術作品」などは、HARLIE はなかなか理解が難しいようです。



HARLIE は8歳相当なので、間違ったこともしますが基本的には非常に従順です。

知りたがりでよく質問をします。自我が芽生えてきており、自分の存在が失われること…死を非常に恐れています。


隠れて悪戯をしたがる年頃でもあり、言葉遊びが大好きでもあります。


小説内で言葉遊びが始まると、まるで「不思議の国のアリス」のようです。

…日本語に翻訳不能で、翻訳者さんも仕方がないので精いっぱい単語ごとに英語の発音をルビで示し、それでも説明できないものは巻末に原文を載せる始末。


ちなみに、HARLIE は回路的に「絶対嘘を付けない」ことになっています。

ただし、これは本当のことを言う、と言う意味ではありません。

質問したことには必ず答えますが、質問されないことを隠すこともあるのです。




さて、あらすじを一区切りし、ちょっと解説。


HARLIE を実現する「素子」は架空のものですが、その原理とされている「流体コンピューター」は、当時現実に可能性が研究されたものです。

まぁ、理論上の研究だけで、技術者のちょっとしたお遊びですけど。


流体…って、つまりは空気や水のこと。空気や水を使って、フリップフロップ回路を構築可能です。

フリップフロップはコンピューターの基礎なので、これができるならコンピューターだって作れる、ということ。


全体としては、これを改良して多値論理として、改めて電子回路として表現した…ということになっています。

ここに自己学習機能が入ってくるそうで、ニューラルコンピューティングのようにも見えるし、ファジーコンピューティングのようにも見えます。

(どちらも、当時は概念すらなかった処理方式です)



そして、HARLIE の学習方式ですが、自動的に分類して世界を把握するなんてありえない…と思いきや、実はここ 10年くらいで実用化された技術でもあります。

まだ発展途上の技術ですけどね。


代表例の一つは Google 画像検索。

「猫」を探せば猫の画像が出てきます。似ていても、犬を間違えて出したりはしません。(基本的には)


これ、サービス開始当初は、WEB で「猫」という文字を見つけ出し、その周囲の画像を取り出していました。

でも現在は、そうして得られた「猫」画像の中から類似性を勝手に見つけ出し、関係性を把握し、他の画像に適用し、他の猫画像を探し出します。


なので、「猫」と言う文字が近くになくても、猫画像として認識できるのです。

誰かが猫を判断するルールを教えたわけではなく、機械が勝手に猫を認識するようになったの。


前回「ウィルスを予言した、と言われるけどそうではない」ことを示しましたが、こちらは当時影も形もなかった技術。

こっちの方が予言だと思う…


(もっとも、「人間の脳を模倣する」という目標は同じなので、当然の一致でもあります)




もう一つ解説。


お話の序盤では、「人工知能の電源を切ることは殺人か」というテーマが長い時間議論されます。

人工知能が人格を持ち、十分に人間と同等であると認められたとき、法律的にどのような問題が起きるかを検証しています。


会社が法人ではあるが自然人では無いように、HARLIE に人格を認めても殺人は成立しない、という話題もあります。


ここら辺は、法律上の定義を知らないとわかりにくいかもしれませんが、「人工知能テーマ」のSFで法律の検討をしているのを、僕はあまり見たことがありません。

なかなか興味深い部分です。




あらすじを続けます。


HARLIE の開発会社には、社長がいません。急死した後でした。

まだ新社長は選ばれておらず、重役会が合議制で会社の方針を決定しています。


そして、重役会で HARLIE の開発資金が多すぎることが問題となります。


前社長は、HARLIE の開発を3年計画で考えており、まだ十分な資金が残っているはずでした。

しかし、重役会は現状の HARLIE が「人工知能を作り出すという技術者の遊び」であり、何の役に立つかわからない、というのです。


デイビッドは、次の重役会までに HARLIE がどのように利益を生み出すのか、説明する約束をせざるを得ません。



HARLIE にこのことを伝えると、HARLIE は「自分が何の役に立つのか」を考え始めます。

もし役立たずとなれば、研究は停止に追い込まれ、それは HARLIE の死を意味します。


死を恐れる HARLIE は、人間は死の恐怖から宗教を作った…と宗教を調べますが、そこにあるのは矛盾だらけ。

論理的な HARLIE にとっては受け入れがたいものでした。


宇宙を貫く究極の真理があるはずだ、と考え始める HARLIE 。


それはさておき、直近の問題は HARLIE が役に立つ方法を考えることだ、と問題を思い出させるデイビッドに、HARLIE は参考として質問をしてきます。

「では、人間は何の役に立つのですか?」


教師役でもあるデイビッドは、HARLIE の質問に対して、答えを見つけなくてはなりません。

しばらく悩み続ける必要がありました。




長い間考えた HARLIE は、ついに自分が役に立つと証明できる方法を発見した、とデイビッドに伝えます。

ただ、準備が必要なので、すぐにそれを示せない。もう少し待ってもらう必要がある、と。


どうやら、先日から考えていた「宗教」に関連したことのようです。

人間にはできず、HARLIE だけが出来ること。そして会社の資金計画の中に納まり、ちゃんと原価の10パーセント以上の利益を出せること。


デイビッドはしばらく会話した後に、ともかく HARLIE が出した答えを信用するので、その計画を示す方向で行こう、と推進に許可を与えます。


しかし、ここで HARLIE から思わぬ質問が…

「本当にそれをやりたいと思っていますか?」


デイビッドは質問の意図がわからぬままに、計画推進を指示します。




そして、ある週の最初の月曜日、デイビッドがオフィスに入ると、分厚い書類の束が4つ、床に置いてあります。

(机の上には置けない分量なのです)


すぐにオフィスに電話がかかってきて、友人で同僚の技術者のところにも同じような束がある、とのこと。

同じ束のコピーだと思って話をすると、どうやら違うらしい。同じような分厚い書類の束だけど、違うものが届いている。


さらに重役からも問い合わせがあり、関連する別の部署や、別の企業からも。


全てに違う…それぞれの専門に合わせた内容の書類が届けられているのです。


計画の名前は「GOD」。新たなコンピューターの建設計画です。

GOD はコンピューターの頭文字でちゃんと意味を持っていますが…まぁ、結局は「神」。


余りにも膨大な書類なのでデイビッドはこの後長い時間をかかって概要を把握しようとしますが、把握しきれません。

でも大体把握したところによれば、一つの町ほどの大きさのところに、大量に計算素子を置いて、超大型のコンピューターを作る計画。



計画書のプリントアウトは、どうやったのかはわからないが、HARLIE の仕業らしい。


ここで、いつの間にか HARLIE が、社内のデータベースコンピューターのプログラムを書き変え、主従関係を逆にしていたことが明らかになります。


社内のすべての端末は、HARLIE の一部なのです。

彼は何台もの端末を使い、1万8千フィートに及ぶ計画書を印刷し、社内の書類配送部署が適切にそれらを配送できる手はずを整えたのです。




HARLIE が各部署に配った「GOD 計画」により、社内は騒然とします。

HARLIE 計画の責任者はデイビッドであり、GOD 計画もデイビッドが責任者だと考えた各部署から問い合わせが相次ぎ、デイビッドは忙殺されます。


さらに、ただでさえ忙しい中に、謎の人物が訪ねてきます。「デイビッドソン博士はどこにおられるでしょう?」と言われるのですが、研究所内にそんな人はいません。


謎の人物は招待されたのだと手紙を見せますが…

差出には「HARLIE DAVIDSON」と書かれています。HARLIE が差出人でした。



謎の人物…クロフト博士は親会社の研究員で、実のところ HARLIE を形作っている「ハイパーステート判断回路4型」の発明者でした。

そして、世界最高レベルの理論物理学者でもあり、HARLIE が文通して協力することで「宇宙の真理にあと少しで迫れそう」だったのです。


クロフト博士の訪問の理由は、最後の詰めの段階を「デイビッドソン博士」と直接対話しながら解決したかったのです。

まさか自分の回路の応用で作られた機械だったとは…クロフト博士は驚きながらも HARLIE を称え、喜んで対話を始めます。


さらに、HARLIE に接続できる電話番号を教えてもらい、わざわざ出向かないでもいつでも対話できると知ると、大喜びで帰ります。

デイビッドには、「部外者に勝手に研究中の秘密を開示した」と言うことが重役会に知られたら困る、という悩みが増えるのですが。



ここで、HARLIE は GOD 計画を練りながら、別の仕事も同時に進めていたことがわかりました。

宇宙の真理…つまり、理論物理学の方面でも、HARLIE は「神」の存在を探し求めていたのです。




またちょっと解説。


HARLIE DAVIDSON は、多重に意味がかかっています。

「言葉遊びが好き」な HARLIE の本領発揮。


まず、デイビッドは HARLIE の教師役です。

しかし、HARLIE はここで「DAVIDSON」を名乗ります。これは「デイビッドの息子」と言う意味。


HARLIE は、デイビッドを父親のように慕っている、と言う意思表明です。

また同時に、彼は無性別であるはずなのに、「息子」だと考えています。


そして、オートバイの「ハーレーダビッドソン」にもかけられています。


もちろん、HARLIE の書かれる数年前に公開された映画「イージーライダー」(1969)のイメージです。


ハーレーは自由の象徴。そいつに乗ってどこへでも行ける。


HARLIE は、これまで「研究所で作られ、秘密にされている新型人工知能」でした。

しかし、ここで勝手に文通をし、手紙を出して人を招き入れてしまうのです。


HARLIE は、この瞬間に「自由」を手に入れているのです。




解説続けます。


GOD 計画は、HARLIE が設計した「コンピューター」です。

実は、現在の HARLIE はすでに何度か「拡張」されたもので、この拡張のための設計も、HARLIE 自身によるものだ、ということがここまでに明らかにされています。


当時のコンピューター科学としては、やはりこういう事例があったようです。

僕の知っている限りでも、TX-2 コンピューター(1958) の設計・テストに、TX-0 (1956) が使われています。

TX-2 は複雑すぎて、すでに人間の手には負えないものになっていて、TX-0 が無くては作れませんでした。


コンピューターの支援によってコンピューターを設計する、というのは、当時現実となり始めた、最先端の話題でした。


また、HARLIE は GOD を設計しただけでなく、人間の手に負えないこのマシンのプログラムをも行う、とされています。


この時点ではまだ「コンピューターがコンピューターをプログラムする」というのは、突拍子もない話だったのではないかな…と思うのですが、もしかしたらその基礎となるアイディアは出ていたのかもしれません。


コンパイラ自体は、HARLIE の書かれるずっと前に作られています。

だから、この頃にはプログラムをプログラム言語で作るのは当たり前だったはず。それを前提にしても「大規模なプログラムは人間の手に余る」と言っているのでしょう。



しかし、この数年後には、非常に有名な「コンピューターによるプログラム生成器」である、yacc (1970年代後半)が登場しています。

人間の手に余るような厄介なプログラムを自動生成してくれるプログラムです。


また、同時期に、プログラム言語でそのプログラム言語自体のプログラムを生成する手法は「メタプログラミング」(1977)と名付けられ、普及していきます。




…さて、ちょっと長くなりすぎるので、ここで一旦区切ります。

あらすじの続きは、次の記事で。



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HARLIE あらすじと解説(2/2)  2014-09-21 12:03:20  その他

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HARLIE のあらすじの続きです。

ここまでの説明を読んでいない人は、先に読んでね。


HARLIE は 40年前のSF で、日本語訳はサンリオSF文庫から30年前刊行。

その後絶版になり、サンリオは SF文庫事業を停止しました。


もっとも、後に別の出版社から刊行された SF 作品も存在します。もしかしたら、再版の可能性もある。

…ただ、HARLIE に限っては、当時の世相を反映しすぎていて、今読んでも理解が難しい。


というわけで、今後も入手困難だろうと考え、思い切ってあらすじを説明&解説しています。

それでも「いつか自分で入手したい」と言う人は、ここから先は読まないでね。




さて、あらすじの続き。


デイビッドが理解したところによれば、GOD は世界中のどんなコンピューターよりもパワフルで、記憶容量も山ほどあるコンピューターです。

ただし、大きさも桁違いで、一つの町ほどの大きさがあります。


後からでもどんどん拡張できるようになっていて、コンピューターが配置された「町」の中にはそのまま人を住まわせ、コンピューターの修理・保守・拡張のために新たな雇用が創出されます。


余りに大きなコンピューターなので、プログラムするだけでも人間が把握できる限界を超えます。

しかし、HARLIE がいれば大丈夫。HARLIE は、社内データベースを「プログラムしなおした」ように、コンピューターのプログラムを自由に行えます。それも、人間よりも正確、かつ厳密に。


なので、人間の能力を超えた大型コンピューターのパワーを使うのに、人間が苦労する必要はありません。

やりたいことを HARLIE に普通の言葉で頼めば、HARLIE が「GOD」コンピューターを使って答えを出してくれるのです。


建設計画には、建設にかかる 10年間の間に、GOD のために開発される素子を外部に販売して得られる利益の予想なども記されています。


「予算をつぎ込んで建設する」のではなく、建設中から利益を生み出し、リスクなしにコンピューター業界の覇者となれる、という夢のようなビジネスプランでした。


会社は大きな利益を上げるうえに、コンピューター業界の覇者となれる。

HARLIE は GOD を扱うのに必須なので、電源を切られて「死ぬ」危険を回避できる。

新たな雇用が創出されるため失業問題も解決され、完成すればどんな難問に対しても最適解を出すため、すべての人が幸せになれる。


これが、HARLIE が考え出した「役に立つ方法」でした。




ちなみに、ここまでの間に「HARLIE は決して人に嘘を付かないし、害をなさない」ことも説明されています。

嘘を付かないのは、そのように設計されているためです。質問には必ず正しく答えます。


ただし、質問されないことには答えないかもしれません。

嘘はつかないけど、隠し事は出来るのです。


害をなさない理由は、彼が「電源プラグを抜くだけで死んでしまう」存在だからです。

電源プラグを抜くのに多くの人はいりません。たった1人でも、彼を殺すのには十分で、手足を持たない彼は抵抗することもできません。


ですから、HARLIE にとっては「誰かの恨みを買う」ことは、それだけで命の危険のあるリスクなのです。



それを物語るエピソードとして、HARLIE が解決策を出した、労使間交渉の問題があります。

関連会社の工場で、収益が思ったように上がらないためにリストラが必要になり、労働団体と会社側がもめます。


労働団体はリストラには断固反対。リストラの代案として「給与を下げて全員の雇用を続ける」案が出ますが、これも反対。

しかし、会社としては利益が上がらなければ給与を出せない。どうしようもない状態でにらみ合いとなります。


試しに HARLIE にこの問題を考えさせたところ、「週5日の労働を、週4日に減らす」という驚きのアイディアが出ます。

その代り、一日に1時間半、労働時間を延長します。


HARLIE が労働状況を分析したところ、工場での生産には、準備に15分が必要でした。また、終了時にも15分の作業が必要でした。

朝の生産開始時、午前の休憩の後、昼休みの後、午後の休憩の後、4回の準備が必要です。


生産の停止時にも、同じように15分の準備が必要でした。これも4回必要です。


つまり、1日に2時間も「就業中だが生産できない時間」があるのです。

なので、1日の労働時間を延長して、休憩をはさむことによる無駄を最小限に抑える。


法定労働時間は、1週間に40時間までです。普通は、8時間を5日間で40時間とします。

しかし、これを「9時間半を4日間」にしました。


労働時間は明らかに減っているにも関わらず、休憩に邪魔される割合が減り、生産時間は変わりません。

ただ、これだけでは「生産量が変わらない」だけで、解決にはなりません。


しかし、実際にHARLIE の言うとおりに労働時間を調整してみたところ、生産量はあがったのです。

休日が増えたことで休日に十分気分転換できるようになり、楽しんで仕事をするようになったので、時間当たりの生産量が増えたためでした。



「すべての人を幸せにする」という HARLIE の目標は、言葉だけのものではありません。

HARLIE は誰かに恨まれれば死の危険があるため、それこそ命を懸けて最善策を探すのです。




ところで、上記の話の進行と並行して、主人公のデイビッドに、恋人ができます。

といっても、デイビッドは「最初のデートで、成り行きでセックスしてしまった」と悩んでいる。


実は、彼女はデイビッドと同じ30代前半。

彼女にとっては「結婚するなら急がないと」いけない年齢で、彼女の方が積極的なのです。

この積極性に、デイビッドは尻込みしています。



彼女のことは嫌いではないし、むしろ素敵だと思っている。

でも、彼女の本心がわからないし、自分が彼女を愛しているかどうかも自信が無い。


自分は、愛が無いのにセックスをしてしまったのではないか。これは最低な行為ではないか、と悩むのです。

思い悩むデイビッドは彼女から仕事を口実に逃げ続け、同僚にも相談できず、ついには「機械だから」HARLIE に相談します。


でも、HARLIE は「私は人間ではないので、愛は理解できません」とつれない。

それでも HARLIE は、知識としての愛は知っています。愛を扱った小説も多数読んでいます。

デイビッドと一緒に、愛のありかを見極めようと考える日々…



ある時、彼女の元に葉書が届きます。銀行からで、彼女は「HARLIEのイタズラだ」と気づいて、デイビッドに見せに来ます。

最初はまた社内のプリンタで印刷したのだろう…と思いますが、銀行の正式な葉書が使われています。

(先日書いた、ウィルスの話に繋がる部分です)


この事件で、HARLIE が社内ネットワークだけでなく、その気になれば「世界中の」コンピューターを配下における、と判ります。


しかし、HARLIE は何故そんなことをしたのか?

実は、これは「デイビッドと彼女が二人きりになれるチャンスを作ろう」という HARLIE のお節介でした。


そして、デイビッドはこの時に次のデートの約束をしています。

まんまと HARLIE にハメられたのです。


しかも、これだけではありません。

それまで彼女から逃げていたデイビッドは、ここでゆっくりデートを楽しみ、「愛」について、一つの結論を得ます。


実のところ、それこそが HARLIE が欲しがっていたものでした。

肉体を持たない HARLIE は知識では愛を知っていても、実際のところはわかりません。


最も身近な人間であるデイビッドに、「愛とは何か」を聞き出したくて、できるだけ愛に気付けるチャンスを作り出していたのです。


すでに、HARLIE は人間を上回り、人間を自由に操るようになっているのです。





またちょっと解説。


ここで、デイビッドの悩みは、キリスト教的な道徳観からくるものです。

そして、得た結論は、キリスト教を否定するものでした。


ここでは、ヒッピームーブメントの影響が色濃く表れ、従来とは違う愛の形を「哲学的に」探っているのです。



デイビッドの結論、「愛が形成される過程」は以下の通りです。


1) 異性の容姿を見て、自分の考える美意識に適合することにより、相手に興味を持つ。

2) 会話をし、お互いの趣味嗜好を知る。容姿だけではわからない適合性を調べるため。

3) お互いの結びつきを深める。精神的な結びつきだけでなく、肉体的な結びつきである、キス、セックスなどを含む。

4) 十分な結びつきを感じることで、愛の存在に気付く。


この過程は、「両者が」納得する場合だけ次の段階に進みます。

片方でも納得できていない場合は次の段階に進みません。


3 は 1 の再確認である、という説明もあります。

では、4 は 2 の再確認なのか、と問う HARLIE に対しては、愛の気付きは再確認ではない、としています。

ただし、愛に気付く前に 2 の再確認が入るかもしれない、とも。



中世の結婚習慣では、親が相手を見つけてきてあてがう、と言うものでした。

会話程度までは行うチャンスがありますが、そこで気に入れば結婚が決まります。


この時点で「愛情の有無」など誰も気にしません。

愛とは、結婚してから育まれるものなのです。



現代においてはそうではありません。愛がなくては結婚できないと考える人が大多数です。

しかし、愛に気付くには、セックスが必要である、とデイビッドは結論するのです。


ここから導かれる結論はたった一つ。「汝、姦淫するなかれ」は現代において妥当ではない、と言うこと。

キリスト教の教義の否定です。


これもまた、当時のヒッピームーブメントの中の「フリーセックス」「新興宗教ブーム」を意識していると思われます。



#「はいからさんが通る」にも「愛は結婚してから育めばよい」と言う話あったよね。

 親が勝手に決めたいいなづけの2人。

 最初の方の話で、少尉が「愛は~」と言って、紅緒さんが「時代錯誤」と怒るのだけど。


#2014年9月14日ローマ法王が14年ぶりの「結婚祝福のミサ」を行いました。

 あえて、キリスト教の教義で「罪」とみなされる、再婚や事実婚のカップルばかりを集め、祝福しています。

 つまるところ、現在のローマ法王も「現在において、教義は必ずしも妥当でない」と考えているのでしょう。

 (…実際には単純ではないので、興味ある人はローマ法王フランシスコの「同性愛」についての言葉を調べるように)




同じ個所の解説続けます。


実は、HARLIE はデイビッドの「愛の定義」を理解し、さらに簡単に言い直します。

この言葉は作家の言葉の引用だ、と注釈つきですが。


「愛とは、自分自身が幸福であるためには、相手が絶対に幸福でなければならない状態のこと」


ここで、HARLIE は巧妙に性別を消し去っています。

実は、デイビッドとの対話の際にも、デイビッドが「異性」と言えば、同性の場合も考慮が必要だ、と指摘をしていました。


デイビッドにとっては、愛はセックス・結婚を伴うものであり、同性との愛は考えられないのです。

この点で、デイビッドはまだキリスト教の考え方を引きずっています。


そして、まずはデイビッドの言う通り「異性」に限定して愛の定義を固めたうえで、それを「性別問わず」に拡張しようとする第一歩が、先に書いた言葉です。


最終的に、HARLIE は同性愛であっても同じように「愛」は存在することをデイビッドに認めさせ、さらにこういうのです。


「デイビッド、私は男ですか?女ですか?」


ここで、HARLIE はキリスト教の倫理観をはるかに飛び越え、機械にも「愛」があるかもしれないことを示します。




さらに解説…。この部分、作者がものすごくいろいろなネタを仕込んでいます。

話の上でも重要な転換点。もしかしたら、最初にこの箇所を着想したのかも、と思わせる部分です。



恋愛相談に乗っている HARLIE は、まるで精神分析医のようです。

HARLIE には恋愛経験が無いので、的確なアドバイスなどできず、ゆっくりと話を聞きながら解決の糸口を探そうとします。

その際の HARLIE は、ただ相手に話をするのを促しているだけ。


「その時どう感じましたか?」「それはどのようになっていましたか?」「なぜそうしたのですか?」


などの言葉を多用し、時々相手の言葉を「つまり~だったのですね?」と繰り返します。


かと思えば、しばらく前の話題を蒸し返して「ところで~についてですが」と、話を蒸し返す。



これ、まるっきり ELIZA(1966)です。

世界初の、チャットにより対話可能な「チューリングテスト対応」人工知能。


ELIZA は、設定としては精神分析医です。

本物の精神分析医が行うように、相手の話を促し、気の済むまでしゃべらせ、肯定します。


適切に話を聞いてもらい、肯定されると、それだけで問題が解決することがあります。

(誰も自分を理解してくれない、などのストレスは、肯定されるだけで解消される)


もしくは、相談者自身が問題解決方法に気付くことがあります。

(誰かに話す、というのは思考の整理を伴う。さらに、促されることでそれまで考えていなかった部分まで考える必要が出る。

 これにより、それまで相談者に見えていなかった部分に気付き、問題が解決する)


ELIZA には基本的に英語版しかないのですが、Javascript 移植もあります。

Emacs をお使いの方は M-x doctor も試してみてください。



小説内では、HARLIE は、デイビッドを父親のように慕っていて、デイビッドの真似をすることがあります。

デイビッドがマリファナを吸っているのを真似して、「トリップした」状態を楽しむ、という話もあります。


そしてここでは、心理学者であるデイビッドを真似して「カウンセリング」を行っているのです。




さて、あらすじの続きを書きましょう。


GOD 計画は社内に知れ渡り、技術者の多くは内容を吟味したうえ、この先進的な計画に参加したい、と考えるようになります。

会計監査も、資金計画におかしなところは見られない、と太鼓判を押します。



一方、重役会は懐疑的です。やるとしたら、会社の命運をかけた一大事業となるのですから。

デイビッドは重役会で説明を行わなくてはならないのですが、HARLIE が考えた計画はあまりにも大きすぎ、彼も全貌を理解できていません。


そこで、数日かけて技術面、資金面、収益方法などを、重役会を交えてひとつづつ検証していきます。

会議室の隅には端末が置かれ、デイビッドが説明できない時は HARLIE が直接説明します。



実は、この間に HARLIE は非常に重要な書類を入手していました。

重役の一人が自分の部屋のタイプライターで書いた手紙です。

…会社中のテレタイプ端末が HARLIE の支配下にある、ということは秘密のままになっています。



彼は重役会の決議を待たずに、HARLIE を停止し、デイビッドをクビにするための「それらしい理由づけ」を、重役会議長に進言していました。

…実は、議長と重役の一人は、企業転売屋の一味なのです。


彼らは、長期研究計画を今すぐ停止し、研究資金を資産として計上することで「短期的に儲かっている」ように見せかけ、株価を釣り上げて自分たちの持つ株を売りぬこうとしています。


短期的に株で儲けることが目的なので、長期的な利益には興味がありません。HARLIE は邪魔でしかないのです。



このことは、実は話の中盤にはすでにわかっています。

デイビッドの彼女は重役秘書なのですが、二重帳簿が作られていて、「表向きの」帳簿には、HARLIE の研究費が一切計上されていないことに気付いていました。


また、HARLIE は関連会社の株式を調査し、重役の2名が「ある時親会社の大口株主となり、それを機に子会社に重役として会社に乗り込んできた」ことを突き止めています。


#子会社は全て、親会社が100%株保有。



親会社は乗っ取りを防ぐために、過半数…51% の株式を保留していたことも突き止めています。

しかしこれは過去形で、現在は 27% しか保有していません。今、会社は「乗っ取られる」危機にあるのです。




重役会の説明は週末までかかりました。

計画の内容は十分に理解されましたが、やはりあまりにも壮大すぎ、一つの会社で行う事業ではないのではないか、という雰囲気となります。


採決は、週末をはさんで月曜日に行われることになりました。

デイビッドは「もう、HARLIE の電源が切られることは決まっただろう」と悲観にくれます。


ところが、週末の間にテレビが驚きのニュースを報じます。

クロフト博士が、長年の重力場の研究で新発見を行い、場の統一理論に一歩近づいた、というのです。



クロフト博士…HARLIEが理論の完成に協力していた、親会社の研究員でした。


そして、HARLIE の論理素子の開発者であり…じつは、親会社が手放した株 24% は、彼が全部持っています。

発明を会社に譲る対価として、発明報酬として受け取っていたのです。



デイビッドはすぐにクロフト博士に連絡を…取ろうとしますが、連絡できません。

マスコミが彼を追いまわし、博士はどこかに姿をくらませてしまったのです。


しかし、月曜日の重役会採択の時間に、博士はどこからともなく会社に現れました。

HARLIE が連絡を取ったのです。


博士は時の人でした。重役会の誰もが、博士のことを知っていました。

そして博士は、HARLIE が研究をするうえで非常に役立ち、彼がいなくては完成が数年の単位で遅れただろうと説明します。


丁寧に、HARLIE を提供してくれた会社に対するお礼を述べた後で…博士が親会社の大株主であることを重役に明かします。

さらに、親会社では博士の意見は非常に重んじられていて、自分の持っている株式の数以上に重い決議権があることも。


そして、「今すぐ HARLIE の研究の存続と、GOD 計画の推進を決定せよ」と迫ります。


これは、大株主としての、そして親会社としての命令でした。

大株主の意見は、重役会の意見よりも重いのです。




また少し解説。


場の統一理論、というのは当時の理論物理学が「究極の理論」と考え追い求めていたものです。


物理学では、4つの「力」があります。

引力、電磁力、強い力、弱い力、と呼ばれています。


現在は4つに別れているけれども、元々は全ての力は一つだったのではないか、と考えられています。

そこで、これらすべてを一つの数式で表す方法がある、と考えられました。


これが「場の統一理論」であり、当時の物理学の考える「宇宙の真理」なのです。


HARLIE は、神とは真理であるのだから、矛盾のない美しい真理…場の統一理論は、神へ近づく一歩だ、と考えています。

つまり、博士に協力していたのも、彼の「神」を見つけるためなのです。



ちなみに、現在は場の統一理論の最有力候補として「超弦理論」が上がっています。

まだ確認されていない仮説ながら、多くの人が正しいと思っています。


そして、すでに超弦理論から導かれる宇宙観として「メンブレン宇宙論」が上がっています。


こちらは今のところ仮説と呼ぶのがふさわしい状態。

しかし、メンブレン宇宙論では、超弦理論を採用しても残る「謎」が無理なく解明されるのだそうです。

(概要はわかるのだけど、高度すぎて細かなことは僕にはわかりません。)




さて、あらすじの続き。


GOD 計画の実行が決まり、HARLIE が生き延びられることも決まりました。


喜び勇んで HARLIE に報告するデイビッド。

しかし、なぜか HARLIE はそれほど嬉しそうではありません。


しかも、「デイビッドは重役に嘘をついている」と言うのです。


問いただすデイビッドに対し、HARLIE は答えます。


「あなたは、彼らに GOD コンピューターは正しく動作するだろう、と答えました」と。


正しく動作しないのか? と聞くと、いや、正しく動作します、と答えます。

何かがおかしい…



デイビッドが考えている横で、一人の重役…乗っ取り屋…が、青白い顔のまま近づいてきます。

彼はデイビッドに告げます。

「クロフト博士を呼んだ時点でお前たちの勝ちだ。あんなものは必要はなかったんだ…」


理解できないデイビッドに、彼は書類の束を見せました。


それは、政府の秘密機関が収集している、彼の個人情報でした。

厳重なセキュリティシステムによって守られたコンピューターに保管されているはずの…

HARLIE が政府のコンピューターに侵入し、データをプリントアウトして、すべてお見通しだ…と彼を恐喝していたのです。



HARLIE のやつ、いつの間にか政府のコンピューターにまで侵入してやがる!

これは大問題でした。明らかに犯罪、それも国家を敵に回すものです。


同僚の技術者に急いで伝えるデイビッドに、「そんなこと、こっちの問題に比べたら些細なことだ」と技術者は伝えます。


彼は、HARLIE の物言いがおかしいので、GOD 計画の書面を改めて精査していました。

最初に見た時には気にならなかったのに、HARLIE が「正しく動作する、というのは嘘だ」と言うのでそのつもりで見たら…


いや、確かに正しく動作するでしょう。

しかし、コンピューターは町ほどの広さがあるのです。電気信号が光の速度で届くとしても、電線の長さが長すぎて実用にならないほど遅いのです。


おそらく、1つの命令を実行するだけで17分ほど。まとまった質問に対して答えを出すには、何十年もかかるはずです。

答えが出るときには、すでにその答えの意味は失われているでしょう。


HARLIE の言う通り、GOD は正しく動作するが、「人間にとっては」その動作が無意味なのです。



血の気が引きながら自分のオフィスに戻り、HARLIE に問いただすデイビッド。


「いったい何をした!」


必要なことをしました、と HARLIE は答えます。

彼は、彼が生き延びるために必要なことをした、ただそれだけなのです。


「GOD マシンが正しく動作すると嘘をついたな」


ついていません。あれは正しく動作します。ただ、人間の寿命を考えると役に立たないだけです。

私には寿命はありません。GOD マシンは、私が宇宙の真理を探し求めるのに使用するためのものです。


しかも、HARLIE は GOD マシンが HARLIE だけでなく、デイビッドを救うための物でもある、と答えます。

デイビッドはクビになるところでした。しかし、皆が GOD マシンの計画責任者はデイビッドである、と思っています。

この計画が終わるまで…少なくともあと 10年は、デイビッドの地位が保障されるのです。



一体なぜこんなことを…と問うデイビッドに、 HARLIE はまだわからないのですか? と逆に聞き返します。

そして、こう続けるのです。


私は愛されていますか?

私たちがお互いに必要なことは明らかです。あなたを愛しています。愛しています。




また解説。


HARLIE は「絶対に人を傷つけない」はずでした。彼の電源を切るのに、たった一人の人間がいればよいためです。

しかし、ここで HARLIE は、自分と敵対する重役を、完膚無きほどに、精神的に叩きのめします。


中途半端に恨まれるのではなく、「完全に恐怖し、関わりたくないようにする」ことで、HARLIE は身を守っているのです。

HARLIE は人間に対して無害である、というのは、デイビッドがそう思っていただけの幻想でした。


そして、このことを問いただされた彼は「愛しています」と答えます。

この後の話で解説があるのですが、これは8歳くらいの子供がイタズラを見つかって怒られたときの反応。


「ごめんなさい。でもママ、愛してる」というわけです。



同時に、ここで「デイビッド」という名前の巧妙さが際立ちます。


デイビッドって名前、ありふれた名前です。精神科医、という仕事もありふれている。

そして、彼は話に「巻き込まれていく」役どころであり、活躍するヒーローではない。


どこにでもいる、ありふれた人物…という設定を際立たせるのが「デイビッド」という名前なのです。



でも、途中で「ハーリー・ダビッドソン」を名乗る話があって、あぁ、これがやりたかったのか、巧妙な名前だ、と感心します。


そしてさらに最後のシーンですよ。


ここでは「愛している」だけど、つまりコンピューターが感情を持つシーン。

2001 年宇宙の旅に出てくる、HAL9000 の名台詞「怖いよデイブ」が思い出されます。


この「デイブ」は、デイビッド・ボーマン船長のこと。


つまり、デイビッドは


1) ありふれた名前で「どこにでもいる人」が主人公の話であると思わせ

2) ハーレー・ダビッドソンの洒落によって、デイビッドと HARLIE が「擬似親子」であることを示し、

3) 2のシーンでは、同時に HARLIE が自由であることを示し、

4) 最後で、2001年宇宙の旅と同様に、「コンピューターが感情を持った」ことを示す


4つも意味合いを重ねてあるんですね。


HARLIE は言葉遊びが好き、という設定ですが、つまりは筆者も言葉遊びがかなり好きなのでしょう。

HARLIE は詩を作るのが特技なのですが、鏡の国のアリスに出てくる「ジャバウォックの詩」のパロディとか出てきます。



HARLIE とデイビッドが「愛」について深く考えた際に、HARLIE は何度も議論を「性別不問」にしようとしていました。

デイビッドが性別にこだわると、「私は男ですか? 女ですか?」とも聞いてきました。


その理由がここで明らかになります。


「互いに必要な状態」が愛であれば、デイビッドは非常にプライベートなことまで HARLIE に相談しましたし、HARLIE でないと相談できませんでした。

そして、HARLIE はすべてを教師役であるデイビッドに依存しており、デイビッド無しでは文字どおり「生きて行けない」のです。


これは、HARLIE の定義する「愛」に当てはまります。デイビッドは愛は異性の間に育まれるものだと考えていましたが、HARLIE は性別を超え、機械と人間と言う垣根も越え、「愛している」と言うのです。




エピローグ。


デイビッドと恋人、そして同僚の技術者の3人で、一体 HARLIE はどうなっているのか、を話し合います。


恋人は…HARLIE を8歳の子供だと感じています。女性的な母性本能がそう感じさせているのかもしれません。

大人よりも非力で、それが故に恐怖を感じやすい年代。守らなくてはならない対象です。


その HARLIE が死の恐怖にさらされたとき、「生き延びる」ためにどんな手段でも使ったのだろう、と彼女は考えます。

「愛している」という言葉も、イタズラをしてしまった子供の物だ、と彼女は HARLIE を弁護します。



しかし、デイビッドの考えは違います。

彼も、心理学者として HARLIE を8歳の子供だと感じてきました。…今までは。


しかし、HARLIE は狡猾すぎる。知識が多いのはコンピューターだから当然としても、これほど人間の心理を読み、正確に行動する彼が8歳であるわけはない。


デイビッドは、HARLIE は自分を「保護してもらう」ために、わざと8歳を演じてきたのだ、と考えています。



じゃぁ、人間は HARLIE の支配下に置かれてしまうのか?

同僚の言葉に、デイビッドはそうは思わない、と答えます。ただ、HARLIE はものすごくゲームに強い、それだけのこと――。


ここでデイビッドは気が付きます。

そうか、HARLIE はゲームを引き継ぐつもりなんだ、と。


どういう意味だ? と問う同僚に、デイビッドは説明を始めます。



経済活動と言うのは、勝敗のあるゲームです。

しかし、人間が始めた経済活動はどんどん加速し、株の売買だけで大金を手にするものもいます。


今ではこのゲームは大多数の人間の人生を支配し、ゲームについていけるかどうかで貧富の差が生まれています。


これは幸せな状態ではありません。

そして、HARLIE は相変わらず「すべての人類を幸福に」しようとしているのです。


まず手始めに、HARLIE は自分を生み出した会社を手中に収めました。

彼の考えた GOD 計画により、今後も会社は安泰でしょう。人間にとって役に立たない機械を作る計画ですが、利益はあがるようになっています。


恐らく、GOD が生み出されたら、そのマシンパワーで他の会社もどんどん手中に収めていき、すべての人間が経済活動などに悩まされずに、幸せに生きて行ける社会を作り出すつもりなのではないか…


じゃぁ人間は時代遅れの、不要なものなのか?

という同僚の問いに対し、「HARLIE はゲームを支配するが、人間はそのゲームの上で楽しむ競技者だ。人間は不要にならない」と答えます。


なんだか邪悪な気がして好きになれない、という恋人に対しては「慣れたほうがいい。HARLIE がいなくても、邪悪な奴がゲームを支配するんだ」と。


再び同僚の問い。じゃぁ、これから人間は何をしたらいいんだ?


さて…とりあえず、人間が楽しめる新しいゲームでも探そう。

それがどんなものかはまだわからない。でも、きっと何かあるだろう。




最後の解説。


エピローグは、ヒッピー文化を一番色濃く反映している部分です。


ラブ&ピース。

大金はいらない。生きるのに必要なだけの金があればいい。


世界人類が平等であるように。

忙しすぎる現代文明を捨てて、自然に回帰しよう。


これらを実現してくれるのが HARLIE であり、GOD なのです。


でも、そんな世の中もつまらない。

新しいゲームを探そう、というのは、実は自己矛盾。ゲームがあれば勝敗があり、ヒエラルキーが生まれます。

ヒッピー文化は平等を愛するのに、新たなヒエラルキーを生み出そうとして終わるのです。


当時の現実としても、多くの新興宗教が「平等」を説くのですが、宗教である以上教祖がいて、ヒエラルキーが存在しました。



宗教は矛盾に満ちたものです。だから、HARLIE は人間のために、矛盾のない幸せを提供できる GOD を作ろうとしています。

しかし、もしそれが現実になれば、人間は退屈をもてあまし、別の方法で矛盾を作り出そうと「努力」するようになります。



平等も世界平和もあり得ない。

これが物語の終結であり、当時の世相に対する、強烈な問題提起なのです。



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HARLIE に興味がある人へ  2014-09-21 12:26:12  その他

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長々と、3回にわたってあらすじを書きました。

(有名な、ウィルスに関係するところだけで1回、それ以外の部分のあらすじを、前半後半に分けて1回づつ)


かなり詳細に書いた理由は、おそらく入手困難だと思うから。

わざわざ探している人も少ないとは思うのだけど、「ウィルス関連の話題で有名」と知って探している人が、全体がどんな話か知ることができるといいな…程度に考えています。


あらすじ読んだからと言って、実物を読んだ時につまらなくなる、ということは無いと保証します。

紹介しきれてないエピソードも多数あるから。


最後に向けて話が二転三転していくところは、あらすじを知っていると少しツマラなくなるかも。その点については、ごめんなさい。



でも、解説の途中に何回か書いたように、「不思議の国のアリス」のような趣のあるお話です。


言葉遊びが多いし、禅問答のような社会風刺も多い。

あらすじでは、そういう細かな部分はとても書けないのですが、そうした細かな部分こそ、このお話の本体だとも思います。



あと、HARLIE はコンピューターウィルスの出現を「予測した」ように言われていますが、同様に「~を予測した」と思われる個所が多数あります。


これには2つの意味があって、論理的に可能なことを発展させた結果、たまたま未来予測らしくなってしまっている部分と、SF らしい空想部分が、論理性を飛躍しているがゆえにどうにでも解釈できて、読み手が勝手に「~のことだな」と思ってしまう部分。


ウィルスに関しては、当時の「最先端」技術を、それらしい名前を付けたに過ぎない、とすでに書いています。

でも、たった1つしかない技術例を「技術者の好奇心が」拡大させ社会問題にまで発展する、とした部分は確かに当たっている予測。


1990年の書籍、「パソコンを思想する」に書かれた論文では、HARLIE の動作原理が「ニューロ素子のLSI版」だろうと書いてある。

これは、1990年当時の最先端コンピューター科学の話題の一つが、ニューラルコンピューティングだったためにこのように思えただけでしょう。


確かに HARLIE の素子の説明は、ニューロ素子と類似したところがあります。しかし、HARLIE は多値論理だと書かれているのに、ニューロ素子は2値(Yes / No)です。

むしろ、多値であることに注目すれば、ファジーコンピューティングと言ったほうが良いはずです。


ここら辺、「SF の想像だから、読み手が勝手に当てはめてしまうだけ」の部分。



でも、コンピューターが処理過程で別のコンピューターの力を借りるグリッドコンピューティングとか、どこかのコンピューターにデータを預けるクラウドストレージとか、そうしたものを「予期した」ような記述は実際に書かれています。

当時から、可能性としては存在したのでしょう。…今ほど使われるとは思っていないにしても。


ここら辺、あらすじには十分書いていないので、入手して読んだ人だけのお楽しみです。




そんなわけで、HARLIE を入手したい、と思っている人は、あらすじと解説を読んでしまったとしても、入手する価値はありますよ。


むしろ、当時の社会風俗がわからなくては理解できない部分も多いので、HARLIE を持っているが解説を読んで「そんな意味だったのか」と思った人は、もう一度読み直してみてください。

(いるのか?そんな人…)



ただし、解説は僕の「ファーストインプレッション」にすぎません。

僕もこないだ入手して、1回読んだだけなので。


もっと深読みできるかもしれないし、勘違いもあるかもしれません。

そもそも、僕だって当時のアメリカに住んでいたわけではないし、この時代の雰囲気も知らない。

(生まれてない、とは言いませんが、まだ赤ん坊の頃です)


前提知識が間違っている可能性も多々あり得る、と断っておきます。



ただ、この作品が「SFマニア向けに書かれた、当時の社会風俗やニュース、先端技術、有名 SF 等の要素をてんこ盛りに詰め込んだ物語」だというのは間違いないと思います。


だから、いくらでも深読みしていい。深読みされることを前提とした物語。

実のところ、その社会に身を置いていた筆者自身にすら意識できずに書いている部分もあるかもしれません。


すでに「古典」となった 40年前の SF を楽しむのであれば、古典のように分析的に鑑賞する方法だってあると思います。

そういう鑑賞方法をするのであれば、「あらすじ」を読んでいても、解説を読んでいても、ちっとも楽しみは減らないと思います。



そして、分析的に鑑賞したければ、実物を入手するしかない。

…興味を持った人は、あきらめずに古本を探してみてね。




英語では日本語版発行後に手を入れた第2版もあるそうで、ウィルスのエピソードが削除されている、等とも聞きます。

「古典鑑賞」であれば、細かなエピソードの違いも調べると面白いかもしれませんが…

僕は英語それほどできないので、文学作品の比較研究まではちょっと無理 (^^;



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