2015年03月28日の日記です


家庭用と業務用  2015-03-28 10:31:11  業界記

ぎーちさんとの対談は…対談と言うよりだべっていただけなので、どんどん脱線する。

ゲームとお金、という話から、業務用と家庭用で作り方が違う、という話になった。




僕は、業務用ゲームを作る部署に入る以前は、業務用のゲームは気軽に遊んでもらえるけど、家庭用は遊んでもらいにくい、と思っていました。

業務用は 100円で始められるけど、家庭用は5千円以上が普通だからね。


先日書いた通り、僕がゲーム作る動機は「僕が作ったものを遊んでもらいたい」でした。


だから、最初から遊んでもらいやすいと思っていた業務用を希望していたのではなかったかな。

それで業務用部署に配属された。


でも、入ってすぐに、業務用の方がずっと遊んでもらいにくいのだ、と教わります。

そして、実際その通りでした。




家庭用だと、買うまでのハードルは高いけど、買ってもらえれば、じっくり遊んでくれる。

多少複雑で奥深いルールがあったとしても、それを理解するまでやりこんで「面白い」と言ってもらえる。


だけど、業務用は気軽に100円をだし、ルールも読まないでゲームを始めます。

そして、3分程度でゲームオーバー。


この3分間が勝負です。

この間に、ゲームのルールを理解してもらって、「面白かったからもう1回」と思わせるくらい楽しませる必要がある。



断言しましょう。

人間は、はじめて見たものを3分で理解する、なんてことは、絶対にできません。


だから、「全く新しいタイプのゲーム」なんて業務用では作れない。

既視感…どっかで見たような感じ、というゲームだと理解が速いから、あえて物まねを作る。


オリジナルを作りたい、というプライドは、多分みんな持ってる。

でも、プライドでは飯を食えない。それよりは、売れたゲームを真似するほうが商売になります。



でも、そこに少しだけ、新しい「なにか」を付け加えます。ここが勝負どころ。

この、付けくわえられたものによって、「このゲームは新しい」と感じさせなくてはならない。



時代を切り拓いてきたゲームですら、全く新しい、なんてことはありませんでした。


パックマンの前にはヘッドオンがあったし、ゼビウスの前にはギャラクシアンがあった。

ストリートファイターの前にもイーアルカンフーがありました。


少しづつ、少しづつアイディアを加えることで、全く違うジャンルになったゲームでも、根は同じであったりします。


ドンキーコングは、パックマンのような「迷路を抜けていく中で、一発逆転もある」というアイディアだけど、横から見た形にして、重力を表現した。

いまではジャンプゲームの始祖とされます。


ヘッドオンも、「すべてのターゲットを消せば面クリア」という、インベーダーのブームの中で作られたもので、ターゲットの消し方を工夫したもの。

インベーダー以前からカーレースはあったから、うまく混ぜただけ。でも、今ではドットイートゲームの始祖とされる。


そのインベーダーも、「ブロック崩しのブロックが動いたら面白い」というアイディアから作られている。


ヒットゲームは、どんなに新しいものに見えても、「既視感」を大切にしています。

その既視感のバランスのとり方が難しくて、「知っているのに新しい」とヒットする。


「良く知ってる」だけだと物まねに思われて「知らないほど新しい」と拒否されます。




テレビゲームが好きな人には、ナムコの黄金期を懐かしむ人がいます。

ギャラクシアンから、ドルアーガの塔くらいまでのゲームかな。


出すゲーム出すゲーム、それまで見たことのないようなものだった。同じようなゲームは出さなかった。

その思いが今でも強くて、「最近のゲームは似たようなのばかり」と嘆く人もいます。


でも、今のゲームクリエイターが昔に比べて劣っているとか、アイディアを出せなくなったというのではない。


プレイヤーが昔のような「突拍子もないアイディア」を求めなくなったから作らないのです。

むしろ「このゲームなら遊べそう」と思える、既視感の強いゲームが求められている。



僕個人としては、またナムコの黄金期のような、突拍子もないアイディアを見たいのですが、それは「商売」としてはやりにくい。


これ、「プロには」作れない、というだけだよ。

そういうゲームを作っちゃだめだとか言うことでは全然ないし、むしろ作ればヒットする可能性がある。


自作ゲームを作る人には、狙い目のジャンルでもあります。


自作する人は、多分プロの作った作品、自分の好きな「あのゲーム」に憧れて真似することが多いと思う。

でも、そういうものを作っても、ライバルが多くて、苦労の割に注目されない。辛いだけ。


むしろプロが作れない「突拍子もないアイディア」を入れるといいです。

ライバルはいないし、出来が悪くても唯一無二の存在になれます。


君は、その世界での第1人者です。

もちろん、面白くなければやっぱり注目されないのだけど。


でも、ライバルが多いところに切り込んでいくより、よほどいいと思うよ。

もし大ヒットして「既視感」のあるものになった時には、真似をしたゲームが出てくるでしょう。


でも、君がそのジャンルを切り拓いたと自慢できるようになります。




家庭用なら新しいものが作れるかというと、やっぱり茨の道ですけどね。

ゲームの面白さって、遊んでみないとわからないのに、遊ぶために5千円払う必要があるのですから。


だから、こっちも「面白いとわかっているゲームの亜流」が増えます。


ただ、「後半グッとくるストーリー展開」とかは家庭用じゃないと作れないものですね。

ゲームシステムが、後半になってルールの巧妙さに気付く、とかいうのもそう。


…ただ、やっぱそういうのは評価されないんだよね。

家庭用は高いから、情報誌で事前情報を読んで購入を決める人が多い。


でも、記事を書く人も最後まで遊んで書く余裕はないし、遊んだとしても事前に「後半の展開」は書くわけにいかない。

だから、どんでん返しで面白いストーリーのゲームとか、売れないです。商売として成立しない。


ここでも、既視感のあるゲームの方が、評価は低くても商売として手堅いんです。




時折、商売っ気抜きで「面白いゲームを作るんじゃぁ!」ってやらかすクリエイターがいて、すごいものを作ってくれる。


これは、家庭用に多い気がします。

やっぱね、ルールやストーリーを複雑にするのが許されるのは、家庭用だけだから。


こういうゲーム、ファンはすごく高く評価してくれるけど、やっぱ儲からなくて、後に続く人はいなかったりします。



寂しい現実。実際問題として商売なのだし、儲からないと明日のご飯も食べられないのですが。


もっと、「ただ面白いだけ」のゲームが評価されるといいんですけどね。




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