2015年04月06日の日記です


最近の同人  2015-04-06 16:57:37  コンピュータ 業界記

ぎーちさんからの質問。というか、ぎーちさんが語る順番だったかな。

「最近の同人ゲームを、ベーマガみたいにまとめる場が作れないだろうか、って思うんです」



ぎーちさん、テレビゲーム関連のフリーライターで、特に同人ゲームに注目しているんだそうです。

話を整理して出している都合もありますが、実はこの話は最初に聞いたもの。


ここまでに、「プロには作れないゲーム」という話がたびたび出ているのも、同人の話が先に出ていた影響でもあります。




ベーマガは、プログラム投稿誌でしたけど、不思議な存在でした。


他のプログラム投稿誌って、採用基準は「プログラムの価値があること」だったのね。

ゲーム内容が高度であるとか、非常に面白いとか、プログラムが役立つとか。


でも、ベーマガってそうではないのね。

短くて、簡単に真似できそうな、レベルの低いプログラムばかり掲載されていた。


まぁ、レベルが低いとはいっても、ある程度のレベル維持はあるんですけどね。

それでも、「これなら真似できそう」と思えたし、実際他機種のプログラムを移植したりして楽しみました。


簡単に真似できる程度のプログラムなら、わざわざ雑誌を購入する意味もない…はずなのですが、人気があった。

恐らくは、掲載されているプログラムに価値があるのではなく、そうしたプログラムが多数集まってくる「コミュニティ」としての価値が高かったのだと思います。


今でもベーマガが独自の地位を持って懐かしまれるのは、独自の世界観を作り上げていたからではないのかな。




さて、ぎーちさんから聞いた同人ゲームの現状。


僕はコミケとか行かないから、あまり同人ゲームを知りません。

それでも聞こえてくる同人ソフトって、技術的にはプロとしても通用するような高みにあるのね。


最近は素人でもすごいもの作るんだなぁ、と思っていました。


でも、それは現場を知らないからそう思っていただけ。

当然のことながら、突出したレベルのゲームは有名になるので、すごい技術のものとかだけが知られるだけ。


それよりもずっとレベルが低い、たいしたことのないゲームが多数あるんだそうです。



でも、それらを「面白くもなんともない」と一蹴するのはもったいない。

誰かが一生懸命作ったゲームは、たとえレベルが低くても、その人にとっては思い入れのある作品。


それを発表できる、ベーマガのような「コミュニティ」は作れないものだろうか?

ぎーちさんには、そうした思いがあるようです。




もちろん、今はネットで発表することもできます。

たとえば、Scratch では、子供たちが作ったソフトをすぐに公開できる仕組みがあります。


でも、そこに「コミュニティ」を感じないんです。



結局、有名になるのは出来の良いプログラムだけ。初心者が作ったゲームは有名になんてならない。

頑張ったのに評価されないと、そこで作るのをやめてしまう人も多いのです。


ベーマガでは、レベルが低くとも「採用」されれば、評価されたと感じることができました。

そして、毎月100本を超えるようなプログラムが載っていました。

これが、決して「狭き門」ではなく、でも「誰でも載れる」ほど簡単でもなく、丁度良いレベルを維持していたんです。



細かく作り込んだ大作だけが評価されるわけではなく、どの作品でも載せてしまうほど広く受け入れてしまうわけでもなく、ほどほどの「障壁」を維持しながら切磋琢磨し合えるコミュニティ…

そういうものが存在すれば、同人ゲームを作っている人たちにとってはもっと励みになるでしょう。




今の同人ゲームを作っている人たちは、ツクールなどを使用している場合も多いそうです。


ゲームの絵を変えたり、シナリオを変えたりする程度で、簡単に新しいゲームを作り出せるソフトね。

その仕組み上、プロが作ったゲームの物まねが作りやすいです。縮小再生産に陥りやすい。


でも、ツクールを製作している側(角川エンターブレイン)もそんなことはわかっているのか、簡単なプログラムを組んで拡張することもできます。

これがなかなか良くできていて、ちょっと驚くようなアイディアを入れ込むこともできる。


そういう部分で、プロには出せないアイディアを作っている人たちもいます。

一番評価したいのは、そういう「ちょっとしたアイディア」の部分。

縮小再生産に終わらせない部分です。




先に、プロが作れないゲームを作るのは、すべてを自分が決めなくてはならなくなる良い経験だ、と書きました

そういう人は、縮小再生産ではない、新しいゲームを作り出すことができます。


そういう経験をした人がどんどんゲーム業界に入ってくれないと、ゲーム業界はしぼんでいってしまう。

同人ソフトを、「市販ソフトのような出来のよさ」ではなく、「アイディアの良さ」で評価するのは、ゲーム業界の将来のためにも大切なことです。



でもね、アイディアの評価って難しいのよ。

それまでにない全く新しいアイディアって、誰も評価できずに低い評価になることが多い。


これはプロでもそうで、「新しいゲーム」を目指して作っても、世間に評価されずに失敗作に終わることはあります。



…まぁ、プロの話は置いとこう。

プロにとっては世間の評価がすべて。評価されなかったのは失敗作です。

厳しいですけど、プロだから。


でも、素人ゲームは違う。

世間の評価が低くても「理解者の評価」がひとつあれば、それでいいんです。

ところが、現在は大きなコミュニティが存在せず、その理解者を見つけることが非常に難しい。



プロが作るゲームを「評価」するのは、遊ぶしかしない素人でいいんです。

だって、万人に遊んでもらうために作っているんだもん。


でも、素人が作るゲームを評価するのは、「評価のプロ」である必要がある。

こちらのゲームは、万人に遊んでもらうことを目指しているのではない。

(多分作る側は遊んでほしくて作っているのだけど、素人ゆえの至らない点が多々ある、という意味で)


だから、そういう部分を差っ引いて、ゲームの核心部分だけを的確に評価できる人がいないといけない。


あぁ、この人はこれがやりたかったのか。誰にもないいいアイディアだ。

…ゲーム自体がつまらなくても、その「やりたかった部分」を適切に取り出せないといけない。


でも、そんなことできる人がいたとしたら、その人は「評価のプロ」なんです。

ネットで発表するだけでは、そういう人に出会うことはできない。



ベーマガって、変なゲームアイディアでも「面白い」って積極的に採用していたように思います。

ここでいう「評価のプロ」だった。


こういう存在が、現在は無いように思うのです。




時々僕は、「プログラムは8割作って終わるといい」って言ってます。


そこまでで終わると、辛い部分を経験しないで済むから、一番楽しい。

最後の2割って、細かな部分をいじり続けるだけの作業で、やっていて辛いことがあるのね。



えーと、最後の調整でゲームの面白さがぐんと高まることはあるよ。

それは楽しい作業だからやっていて構わない。


でも、これを修正しないと完成度が高くならない、と判っていても、やるのがつらい作業もある。

そんな部分はやらないでもいい、と思ってます。素人の趣味なんだから。


そして、そのつらい作業をやっていない、完成度の低い作品でも、アイディアが良ければ評価されるといい、と思うのです。


#将来業界で働きたい、と強く思っている人は、是非完璧を目指してください。苦労した経験は必ず役に立つから。




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