業界記3ページ目の日記です

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2015-04-03 ベーマガの影響
2015-04-03 ゲーム業界に進んだ理由
2015-04-06 最近の同人
2015-04-06 プログラムを始める年齢
2015-04-07 プログラムは必要か
2015-04-07 女性向けのゲーム
2015-04-16 ゲームは頭を悪くするか
2015-04-16 世の中はゲーム
2015-04-16 ぎーちさんとの話、これで終了
2015-07-10 ファイナルアーチ
2015-07-11 僕の担当部分
2015-07-12 実装の苦労
2015-07-13 収益を考える
2015-07-14 厄介なバグ
2015-07-15 海外版
2015-07-16 バーチャファイター・リミックス
2015-07-17 エジホン探偵事務所
2015-07-21 インディ500
2015-07-29 モニ太とリモ子のヘッドオンチャンネル
2015-08-13 人材交換
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ベーマガの影響  2015-04-03 11:18:29  コンピュータ 業界記

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ぎーちさんからの質問…と明示されたわけではなかったと思うけど、「ベーマガの影響」の話になりました。

ベーマガって、プログラム投稿以外にもたくさんコーナーありましたから。


僕が真っ先に「好きだった」と挙げたコーナーは、「ゲーム・プログラミング講座」。


ゼビウスを作った遠藤雅伸さんって、当時は憧れの人だった。

その遠藤さんと、仲間の方々がゲーム作成の質問に答えてくれるという夢のような(?)コーナー。


プログラム上の疑問・相談だけでなく、ドット絵の描き方、音楽の作り方、ゲームシステムの考え方、ゲームクリエイターになる方法…などなど、幅広い質問に答えていました。


中学生の頃は、まだ無邪気に「将来はゲームを作る仕事をしたい」と思っていました。

ゲームクリエイターの人たちというのは殿上人。その言葉は素直にすごいものに感じたのです。




Beep! でも、ゲームクリエイター多数にアンケート取った特集とかありました。それも熟読した。


遠藤さんたちも、Beep! のアンケートに答えた人も、似たようなことを言っている。

ということは、ゲームクリエイターになりたければ、これは本当に重要なのだろう。


それは、「今すぐテレビゲームなんてやめて外へ行け!」ってこと。


これが意味がわからなかった。

テレビゲーム作りたい、と思っているのに、テレビゲームやっちゃいけないの?



もう一つ、「素人のうちは、プロには作れないゲームを作れ!」とも言っている。

これも判らなかった。

プロって、なんでも作れる技術を持っているからプロなんじゃないの?



これらの言葉は、ずっと心のどこかに引っかかっていました。




自分がゲームを作る立場を経験して、この言葉の真意がわかりました。


テレビゲームって、人を楽しませるものです。

じゃぁ、「楽しいこと」自体をたくさん知っていないといけない。


テレビゲームばっかやっていても、所詮は「ゲームの中」の小さな経験でしかない。

もっと多くの「楽しいこと」を知っていないと、人を楽しませることなんてできない。


テレビゲームが大好きで、テレビゲームばかりやってきて、テレビゲームを作る立場になったら全然いいものが作れない、という人を、実際何人も見てきました。

楽しいことの経験が少ないのだと思います。


幸い僕は友達に恵まれ、旅行もしたし、酒飲みながら語り合ったこともある。

そんな経験でも「楽しい」ことを少しでも多く経験しておくことは、ゲームを作るうえで非常に大切です。



もう一つの「素人のうちはプロには作れないものを」というのは、前回もちょっと書いたね。

プロになると、商売だから「売れるゲーム」を作らないといけない。


遊ぶ立場では、面白いゲームが良いゲームだと思っていました。

でも、プロにとって、それは良いゲームではないんです。


あと、プロになると操作方法に制約が出る、というのもあります。

家庭用なら、家庭用のゲームパッドの中で考えないといけない。


業務用はもっと制約が厳しくて、1レバー3ボタン、というのが基本でした。

業務用だからこそ、変な入力デバイスでも使えそうに思いますが、そういうものは高くつくし、交換が面倒なのでゲームセンターが買ってくれない。




ところで、僕は大学時代に「マイクが1本おいてあるだけ」というアクションゲームを作ったことがあります。

変なゲームを作ろうと心がけていた頃のもの。


いろいろ狙いがあって、ゲームのあり方に対して自分なりに問うてみた意欲作なのよ。

でもまぁ、七面倒くさい理論はどうでもいい。このゲームに触れた人の反応が予想外で、僕には印象に残っている。


ゲームを遊ばない人ほど、このゲームを見て戸惑うのね。

ゲームって、ファミコンみたいにパッドでやるものだと思てる人にとっては、マイクが置いてある、というシチュエーションからおかしいのです。


でも、説明は書いてあるから遊んでみる。

自分が声を出さないとゲームが遊べない、でも声を出すというのは案外恥ずかしい。


ここで、みんな変な状況に笑い始める。

最初は照れ笑いなのだけど、笑っているうちに自分でも楽しくなってきて、遊んだ後も嬉しそうに帰っていく。



ちなみに、ゲーム慣れしている人はすぐにルールに慣れて、冷静に黙々と遊びます。

笑顔にはならないけど、ハイスコアは叩きだす。



ゲーム業界に入ってから気づいたけど、これが「プロには作れないゲーム」でした。


プロのゲームを真似するのであれば、どうすれば面白いかもだいたいわかる。

すでにあるものを真似していけばそこそこのものが出来上がる。


でも、そうではない、物まねではないものを作ると、すべてを自分で決めなくてはなりません。

「声で操作する」ゲームを、どうすればより面白くできるのか、どうゲームバランスを設定すれば楽しいのか。



マイク一本だから、スタートボタンもない。ハイスコア出してネームエントリーしようにも、文字を選ぶ方法がない。

変なデバイスを採用したら、当たり前に思っていたことが何もできないんです。

ゲームスタートの方法、ハイスコア時のネームエントリーの方法まで考える必要がありました。



物まねではないゲームを作ると、真似をするよりもずっと深い部分まで考える必要があります。

その苦労は、確実に「面白いゲームを作るための方法論」として身に付きました。


そういう経験を積んでおけ、というのがプロからのアドバイスだったのですね。



ところで、セガに「デカリス」(2009)ってゲームがあったのですが、あれを作ったのは同期の企画者。


僕が会社辞めた後なので、裏話とか知らない。実は、僕はこのゲームを見てすらいない。

あまり売れなかった上に、すぐに市場から消えてしまったからね。


ぎーちさんにも話したし、裏話を最初から知らないので、20年たってないけど書いてしまいましょう。



彼は、プロは作ってはならない、「変な入力方法」にこだわってました。

新人の頃から、変な入力のゲームの企画を、何度も出しては没になっていたのを知っています。


どうも、狙いは僕が作った「マイク入力ゲーム」と同じだったみたい。


変な状況に置いてやると、それだけで人は楽しくなってくることがある。

ゲームって「楽しむ」ことが目的だから、楽しくなれるのであればそれは成功。



で、何度も没を喰らって、できたのが「デカリス」。


すごくでかいレバーで、すごくでかい画面で、すごくでかいブロックのテトリスを遊ぶゲーム。

とことんバカバカしいアイディアです。遊びながら、バカバカしさに笑ってほしかった。


…でも、評価は低い。意図が理解されなかったのね。

僕のゲームと同じで、ゲーム慣れしている人は冷静に遊ぶ。おかしな状況で楽しくならない。


本当は、ゲーム慣れしている人が少ない、遊園地とかに置ければよかったのでしょうね。

でも、ゲームだからゲームセンターに置かれました。そして、ゲームセンターはゲーム慣れした人ばかりです。


彼の意図は理解されず、このゲームの評価は低いまま。

プロが作ってはならないゲームをプロが作るとどうなるか…という残念な例です。


#届けたい人に届かなかったというだけで、それを作り上げた彼の情熱を、僕は高く評価しています。



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ゲーム業界に進んだ理由  2015-04-03 11:35:55  業界記

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ぎーちさんからの質問。

これは、ベーマガの話ではないのだけど、僕はセガでゲームを作っていたので「いつゲーム会社に入ろうと思ったのか」。



先ほど、中学の時はゲーム業界に憧れていた、と書きました。

でも、これはある種の中二病。ゲームが面白くて、「ぼくのかんがえたさいきょうのげーむ」を作っていて、将来ゲーム作る仕事するんだ、と思ってただけ。


高校生になったら、ゲーム作っていても食ってけないんじゃないだろうか、ゲーム業界って結構狭くて入れないんじゃないだろうか、と思い始めます。

だからこそ、浮ついてないで、ちゃんと技術を身に付けようと思った。


大学でも情報科学科に行って、学問としてのコンピューターを学びつつ、自分でいろんなプログラムを作って実技を身に付けようとします。


でも、大学1年の学祭で発表したゲームを、みんなが面白いと遊んでくれた。

そのゲームを武尊(ソフトの自動販売機)で売ることになって、200人以上の人が買ってくれた。


これが、すごくうれしかったんです。

あぁ、やっぱゲーム作りたいな、って思った。


#この数か月後に祝一平氏に会って、将来プログラマになるのであればCを覚えるように、と言われました。

 その時、「ゲーム作る仕事?」とも聞かれたけど、その時にはまだ迷いがあって即答できなかったと思う。



大学3年の時には、先に書いた「マイクを使ったゲーム」を作ります。

このゲームを遊んだ人が、みんな嬉しそうに笑って帰っていくのです。


ベーマガ投稿の動機の話で書いたけど、僕にとっては、ゲームは「遊んでもらえることがうれしい」ものでした。

遊んでもらえただけでなく、それでみんなが笑顔になる。やっぱりゲームを作る仕事がしたい、と思ったのはこの頃からだと思います。




ところで、僕が大学の頃は、まだ「就職協定」というのがあったのね。

4年生の10月になるまで、企業は就職活動(リクルート活動)を初めてはならない。


ただ、この協定が形骸化していて…。

10月までは「興味を持つ学生に現場を見学させたり、現場の人があってみたり」するだけなのね。

で、10月1日に会社に呼ばれて、いきなり内定する。


会社としては、この内定を出すことが「リクルート活動」であり、それ以前は学生が会社に興味を持っているのを案内しただけ、という形式です。言い訳っぽいけど、協定違反ではない。


ただ、やっぱ会社側にも「協定を半ば破っている」という罪の意識はあるのか、会社が本格的に動き始めるのは4月から、というのが暗黙のルールでした。

学生が資料請求とかするのは、1月ごろからだし、会社も資料を送るのだけど、会社説明会、試験、面接などは4月スタート。




当時の僕は、ナムコのゲームが大好きでした。


80年代ナムコの黄金期って、すごかったのよ。同じアイディアのゲームは出さなかった。

作るゲーム作るゲーム、みんな「見たこともないような」ゲームで、しかも完成度が高い。


だからあえて、ナムコは希望先から外しました。


ゲーム会社でしばらく修行したら、独立したかった。ナムコの遠藤さんがそうしたように。

でも、ナムコ大好きだから、きっとナムコに入ったら独立する気なんておきなくなる。


それで、第1志望をセガとしました。

セガも十分に面白いゲームを作っていたし、何よりも大会社だった。

中小企業だと、独立するときに後ろめたさが残りそうで、大きいほうがよかった。



他に、2社ほど受けました。両方、そこそこ大きい会社。


ちなみに、当時もすでに就職難は始まっていた。

今ほどひどくなかったけど、3社しか受けないと言ったら、周囲から心配されました。



1社は、3月から説明会を始めた。暗黙の了解とはいえ、協定を破るような会社は順法精神が無いのではないか、と考えてキャンセル。


もう1社は、関東の会社だと思っていたら本社が大阪だった。

交通費出すから本社に面接に来て、と言われ、大阪まで行って、せっかくなのでたこ焼きとうどん食べて帰ってきました。

ここは、たしか6月くらいに内々定(10月には内定出すよ、という通知)貰ったのだけど…


肝心のセガがこの時点で全然試験を始めやがらねぇ。迷いながら内々定蹴りました。


#内々定を受諾すると、その後いろんな名目で企業に振り回されます。

 これにより、他の企業への就職活動は事実上出来なくなります。

 だから、他に希望があるなら蹴るしかないのです。



そして、セガは7月に入ってからやっと試験開始。

就職協定、という意味では、10月近くになってから動き始めているのですから遵守している方です。


でも、他社を蹴った僕としては背水の陣。

7月すぎてから新しい会社探す余裕はないしね。



で、たしか試験を1度、1~2週間後に面接も1度だけやって、翌日「内々定です」と電話が来たと思います。

すごくほっとした。


本当にダメだったら、過去にバイトした中小企業に行けば入れてくれるだろう、とは思っていたのだけどね。

(3社しか受けてないのも、意にそぐわない会社に行くくらいなら、気心の知れた中小企業に入ろうと思ったためです)




この後、大学祭がありました。(大学祭は毎年10月でした)

3年の時に出した「マイクを使ったゲーム」が楽しかったという小学生から、「あのゲーム、今年はできないの?」と聞かれました。


1度見ただけのゲームを、1年間覚えてくれていた。

すごくうれしかった覚えがあります。


…ぎーちさんには、「彼の言葉がゲーム業界に行く最後の決め手だった」と答えたのだけど、時系列を整理し直してみたら違いました。

彼の言葉は、セガの内定貰った後だわ。


でも、その後ずっと励みになりつづけたのは本当。

「心に残るゲーム」を作りたいと思う時、いつも彼の言葉を思い出すのです。


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最近の同人  2015-04-06 16:57:37  コンピュータ 業界記

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ぎーちさんからの質問。というか、ぎーちさんが語る順番だったかな。

「最近の同人ゲームを、ベーマガみたいにまとめる場が作れないだろうか、って思うんです」



ぎーちさん、テレビゲーム関連のフリーライターで、特に同人ゲームに注目しているんだそうです。

話を整理して出している都合もありますが、実はこの話は最初に聞いたもの。


ここまでに、「プロには作れないゲーム」という話がたびたび出ているのも、同人の話が先に出ていた影響でもあります。




ベーマガは、プログラム投稿誌でしたけど、不思議な存在でした。


他のプログラム投稿誌って、採用基準は「プログラムの価値があること」だったのね。

ゲーム内容が高度であるとか、非常に面白いとか、プログラムが役立つとか。


でも、ベーマガってそうではないのね。

短くて、簡単に真似できそうな、レベルの低いプログラムばかり掲載されていた。


まぁ、レベルが低いとはいっても、ある程度のレベル維持はあるんですけどね。

それでも、「これなら真似できそう」と思えたし、実際他機種のプログラムを移植したりして楽しみました。


簡単に真似できる程度のプログラムなら、わざわざ雑誌を購入する意味もない…はずなのですが、人気があった。

恐らくは、掲載されているプログラムに価値があるのではなく、そうしたプログラムが多数集まってくる「コミュニティ」としての価値が高かったのだと思います。


今でもベーマガが独自の地位を持って懐かしまれるのは、独自の世界観を作り上げていたからではないのかな。




さて、ぎーちさんから聞いた同人ゲームの現状。


僕はコミケとか行かないから、あまり同人ゲームを知りません。

それでも聞こえてくる同人ソフトって、技術的にはプロとしても通用するような高みにあるのね。


最近は素人でもすごいもの作るんだなぁ、と思っていました。


でも、それは現場を知らないからそう思っていただけ。

当然のことながら、突出したレベルのゲームは有名になるので、すごい技術のものとかだけが知られるだけ。


それよりもずっとレベルが低い、たいしたことのないゲームが多数あるんだそうです。



でも、それらを「面白くもなんともない」と一蹴するのはもったいない。

誰かが一生懸命作ったゲームは、たとえレベルが低くても、その人にとっては思い入れのある作品。


それを発表できる、ベーマガのような「コミュニティ」は作れないものだろうか?

ぎーちさんには、そうした思いがあるようです。




もちろん、今はネットで発表することもできます。

たとえば、Scratch では、子供たちが作ったソフトをすぐに公開できる仕組みがあります。


でも、そこに「コミュニティ」を感じないんです。



結局、有名になるのは出来の良いプログラムだけ。初心者が作ったゲームは有名になんてならない。

頑張ったのに評価されないと、そこで作るのをやめてしまう人も多いのです。


ベーマガでは、レベルが低くとも「採用」されれば、評価されたと感じることができました。

そして、毎月100本を超えるようなプログラムが載っていました。

これが、決して「狭き門」ではなく、でも「誰でも載れる」ほど簡単でもなく、丁度良いレベルを維持していたんです。



細かく作り込んだ大作だけが評価されるわけではなく、どの作品でも載せてしまうほど広く受け入れてしまうわけでもなく、ほどほどの「障壁」を維持しながら切磋琢磨し合えるコミュニティ…

そういうものが存在すれば、同人ゲームを作っている人たちにとってはもっと励みになるでしょう。




今の同人ゲームを作っている人たちは、ツクールなどを使用している場合も多いそうです。


ゲームの絵を変えたり、シナリオを変えたりする程度で、簡単に新しいゲームを作り出せるソフトね。

その仕組み上、プロが作ったゲームの物まねが作りやすいです。縮小再生産に陥りやすい。


でも、ツクールを製作している側(角川エンターブレイン)もそんなことはわかっているのか、簡単なプログラムを組んで拡張することもできます。

これがなかなか良くできていて、ちょっと驚くようなアイディアを入れ込むこともできる。


そういう部分で、プロには出せないアイディアを作っている人たちもいます。

一番評価したいのは、そういう「ちょっとしたアイディア」の部分。

縮小再生産に終わらせない部分です。




先に、プロが作れないゲームを作るのは、すべてを自分が決めなくてはならなくなる良い経験だ、と書きました

そういう人は、縮小再生産ではない、新しいゲームを作り出すことができます。


そういう経験をした人がどんどんゲーム業界に入ってくれないと、ゲーム業界はしぼんでいってしまう。

同人ソフトを、「市販ソフトのような出来のよさ」ではなく、「アイディアの良さ」で評価するのは、ゲーム業界の将来のためにも大切なことです。



でもね、アイディアの評価って難しいのよ。

それまでにない全く新しいアイディアって、誰も評価できずに低い評価になることが多い。


これはプロでもそうで、「新しいゲーム」を目指して作っても、世間に評価されずに失敗作に終わることはあります。



…まぁ、プロの話は置いとこう。

プロにとっては世間の評価がすべて。評価されなかったのは失敗作です。

厳しいですけど、プロだから。


でも、素人ゲームは違う。

世間の評価が低くても「理解者の評価」がひとつあれば、それでいいんです。

ところが、現在は大きなコミュニティが存在せず、その理解者を見つけることが非常に難しい。



プロが作るゲームを「評価」するのは、遊ぶしかしない素人でいいんです。

だって、万人に遊んでもらうために作っているんだもん。


でも、素人が作るゲームを評価するのは、「評価のプロ」である必要がある。

こちらのゲームは、万人に遊んでもらうことを目指しているのではない。

(多分作る側は遊んでほしくて作っているのだけど、素人ゆえの至らない点が多々ある、という意味で)


だから、そういう部分を差っ引いて、ゲームの核心部分だけを的確に評価できる人がいないといけない。


あぁ、この人はこれがやりたかったのか。誰にもないいいアイディアだ。

…ゲーム自体がつまらなくても、その「やりたかった部分」を適切に取り出せないといけない。


でも、そんなことできる人がいたとしたら、その人は「評価のプロ」なんです。

ネットで発表するだけでは、そういう人に出会うことはできない。



ベーマガって、変なゲームアイディアでも「面白い」って積極的に採用していたように思います。

ここでいう「評価のプロ」だった。


こういう存在が、現在は無いように思うのです。




時々僕は、「プログラムは8割作って終わるといい」って言ってます。


そこまでで終わると、辛い部分を経験しないで済むから、一番楽しい。

最後の2割って、細かな部分をいじり続けるだけの作業で、やっていて辛いことがあるのね。



えーと、最後の調整でゲームの面白さがぐんと高まることはあるよ。

それは楽しい作業だからやっていて構わない。


でも、これを修正しないと完成度が高くならない、と判っていても、やるのがつらい作業もある。

そんな部分はやらないでもいい、と思ってます。素人の趣味なんだから。


そして、そのつらい作業をやっていない、完成度の低い作品でも、アイディアが良ければ評価されるといい、と思うのです。


#将来業界で働きたい、と強く思っている人は、是非完璧を目指してください。苦労した経験は必ず役に立つから。



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プログラムを始める年齢  2015-04-06 17:16:28  コンピュータ 業界記

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ぎーちさんは事前に僕の日記などを読んでくれていたようで、うちの子供が Scratch を楽しんでいることを知っていました。

それで、プログラムは何歳くらいから始めるのが良いのか、という話になりました。


ぎーちさんもお子さんはいるけど、うちの次女(5歳)と同学年らしいので、プログラムはまだ早い。




これはゲームやプログラムの話から外れてしまうのだけど、子どもの発達について書いておきます。

専門家じゃないから、間違っていたらごめんなさい。


まず、3歳以下だと、ゲームのルールは理解できません。


2歳くらいの子と、片方だけの手に何か入れて、両手を出して「どっちの手に入ってるか」って遊びをやったりします。


あれ、大人はゲームをやっているつもりだけど、子供にとってはゲームではない。

「いないいないばあ」と同じ、何かが急に出現することを楽しむ遊びです。


ただ、毎回出てくるわけではなく、出てこない場合もある「意外性」が楽しい。

だから、入っている方を当てるゲームではなく、出てきたり出てこなかったりを楽しむ遊びとして楽しんでいる。


子供が「出題側」になると、わざと中に入っているのを見せて、「当ててもらう」のを喜んだりします。

大人は勝ち負けで考えているので、子供に勝たせてやろうと、わざと「入っていない」方を選んだりします。


でも、これは子供にとってはつまらないのね。出現を楽しみたいのだから。

「手が小さいから見えちゃってる」のではなく、わざと見せていることも多いのです。



同じことをやっていても、3~4歳くらいになると、「勝ち負け」を理解し、ゲームとして楽しめるようになり始めます。




4~5歳くらいになるとジャンケンくらいの簡単なルールの遊びであれば、遊べるようになります。


でも、この段階で遊べるゲームって、真似できなかったら負け、とか、偶然性で勝ち負けが決まる、とか、その程度。

5歳くらいだと「太鼓の達人」を楽しめる子も出てきますが、これはリズムに合わせて叩く、という「真似」の要素だから。


それ以上難しいゲームになると、まだできません。


ちなみに、「リズムに合わせる」ということ自体、5歳くらいからでないとできない。

ブランコ漕いだり、縄跳びしたり、自転車に乗ったり。こういうのもリズムに合わせる必要があるから、この頃までは難しい。



7歳くらいになると、七並べとかババ抜きとか、簡単なルールと戦略性を持ったゲームが遊べるようになってくる。

でもまだ戦略を駆使することは出来ず、ルールを理解してはいても、運が良くないと勝てません。


テレビゲームだと、キャラクターを動かして、それなりに先に進むことを楽しめる。

でも、1面クリアできたら喜ぶような段階で、先にはなかなか進めない。


#大人でも楽しめる程度の難易度のゲームの場合ね。

 7歳くらい向けに作られた、大人が遊んでも簡単すぎてつまらないようなゲームで「クリアできて楽しい」とかはあり得ます。



7歳から小学校になるわけですが、これ以前は「ルールを理解できない」から、集団生活には向きません。


保育園の場合、集団生活ではあっても、問題があればすぐに保育士さんと園児の「1対1」の状況に入れる。

小学生になると、基本的には子供同士で問題を解決していく必要があります。

ここに、「ルールを理解する」必要が出てくるのです。


小学生でも、1~2年生の間は「勉強のやり方」を学んでいる段階。

国語と算数が中心ですが、内容はそれほど高度ではありません。


3年になると、理科や社会も始まり、本格的に勉強を行うようになっていきます。

でも、まだ詰め込み教育。これは悪いことではなくて、「自分で考える」なんてできない年齢だから。

ここで詰め込まれた内容は、後で「自分で考える」段階が来た時に、考えるための基礎となるものです。


4年生くらいから、自分たちで研究発表をまとめるなど、自分で考える勉強が始まります。

年齢にすると10歳くらいですが、この頃から本格的に自我を持ち始め、自分で考えて、自分で行動するようになります。


3年生くらいまでは、周囲の大人との関係が重要だけど、4年生からは友達との関係の方が重要になっていくのね。


漫画だと、サザエさんのカツオ君は5年生で、ワカメちゃんが3年生。

ちびまる子ちゃんは3年生。ドラえもんののび太とか、カードキャプターさくらとかは4年生。


#注:のび太はアニメ版は5年生ってことになっている。


「周囲の大人」と「友達」のどちらが大切か、1年の差で変わってくるのがわかりますでしょうか?

よく出来たお話…漫画やアニメも、ここら辺のことをちゃんと考えて年齢設定されています。




さて、長々書きましたが、僕としてはプログラムは4年生以降に始めるのがいいんじゃないかな、と思います。


「自分で考える」ことができる年齢だから。

プログラムって、考えることが大切だから、これ以前の年齢だとちょっと早すぎる。



ただ、それ以前にプログラムに触れることを否定するものではありません。

うちの長女はまだ7歳だけど、長男がプログラムしているのがうらやましくて、真似してる。


長男に教えてもらっている…つもりになっているだけで、ほとんど長男がやっているのだけどね。


長男も、8歳の誕生日にポケモンのゲーム買ってます。

「まだ遊ぶには早い年齢」だと思っていたけど、本人が強く希望していたので。


やっぱ早くて途中でやめちゃったのだけど、RPG の世界を経験したというのは、論理性に若干触れた経験だった。

そういう経験が、10歳になってプログラムはじめるのに役立っていると思います。



さて、上に書いたことには、当然個人差もあります。


自我が芽生えるのは10歳~12歳、とされていて、それがすなわち「考えられるようになる年齢」なので、4年生では早すぎる子もいるかもしれない。


一方で、もっと前の年齢でも楽しめる子はいるかもしれない。

子供にやらせてみたかったら、少し早くても与えてみることです。


でも、強要はせず、興味を示さないなら引っ込める。

その後は、また興味を持ちそうなタイミングが来るまで、じっくり待ってください。


あまり早い段階で与えすぎると、「難しい」っていう苦手意識を持っちゃうから、ダメだったら十分な期間を開けたほうがいい。


あと、何よりも「大人が楽しんでいる」姿を見せるのは興味を引かせるのに役立ちます。

子供にプログラム教えたかったら、大人がやってみせることです。




今は、中学生でプログラムが必修科目になっているそうです。


以前、これに反対する意見として、「中学生でも作文などで論理性のある文章を書けない子供がいる」としている人がいました。

塾講師のようで、子供の作文能力など、ちゃんと見極めた上での意見。素人意見ではないです。


でも、僕はこの意見には反対。

「考えることができる年齢」というのは、脳がその準備ができた、というだけの話。


論理的に考えるのって、訓練しないとできないです。

「まだできないから」と言って訓練しないと、いつまでたってもできない。


中学生なら、もう考えることのできる年齢に達していますが、必ずしも論理的なわけではありません。

だから、論理性の訓練を始める必要があり、そのための道具として「プログラム」を使うのです。



ついでに書けば、プログラムは道具であって、目的ではありません。

プログラム技術を教えたいのではないから、「みんながプログラマを目指す必要が無い」という反論も、前提から間違えている。


ここら辺、詳細は以前に書いた日記に書いてます。



#話は飛ぶけど、20歳は大人か、という問題も同様だと思ってます。

 周囲が大人扱いしないで大人になるわけがない。20歳「から」大人扱いだったら、精神的にも大人になるのは25歳くらいからで当然。

 昔は、15歳くらいから大人扱いで、仕事もさせられました。だから、20歳の成人式では立派な大人だった。

 何事も、訓練せずに出来る人なんているわけがない、という当然の話。


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プログラムは必要か  2015-04-07 12:05:45  コンピュータ 業界記

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ぎーちさんとの同人話の続き


昔はプログラムしないと自作ゲームは作れませんでした。

でも、今はツクールなんかで同人ソフトを作っている人も多い。


ベーマガが復活したわけですが、ツクールだと「プログラム」ではないから、ベーマガは発表の場にはなりにくい。

同人ソフト作るうえで、プログラムって必要なことですかね? と聞かれました。




私見では、プログラムのそもそも論になってしまうのですが、「ツクールもプログラム環境である」と思います。

コンピューターを、自分の考えた通りに動かそうとする試みは、すべてプログラムです。


複数言語を使えるプログラマなら、テキスト処理なら awk 、WEB プログラムなら PHP 、画像処理ならC…とか、使い分けている人も多いと思います。

awk なんてプログラム言語じゃない、と言い出す人もいるけど、それは考え方が偏狭。

適材適所で、もっともやりやすい言語を選ぶ、というのも、プログラマの能力のうちです。


じゃぁ、ゲームを作るのに、ゲームを作りやすい「ツクール」を使うのだって言語選択のうちでしょう。



ロードランナーの面コンストラクションとどこが違うんだ、という人もいるかもしれません。

なにも違いません。面コンストラクションだって、明確な目的を持って「コンピューターに何かをさせよう」とするのであれば、プログラムとなり得ます。


一方で、明確な目的無く、適当にブロックなどを配置して、面白くもなんともない面を作るのであれば、それはプログラムではない。


先に書いた awk で言えば、「何もしないスクリプト」を作るのは簡単です。空ファイルで良い。

何の目的もない。プログラム言語を使っていても、これは「プログラムした」と言わない。目的を持っていないから。


#C言語だと「何もしない」のにも、それなりのプログラムが必要です。


プログラムを作ったかどうかの境界線は、選択した言語にあるのではなくて、作成者の心構えにあるのだと思います。




目的を持ってプログラムをするのであれば、うまく目的が達成できず苦労する、という局面が現れるはずです。

それがツクールのような簡単なツールであっても、C言語のような面倒くさいツールであっても、必ず目的がはばまれる局面が来る。


これをどう乗り越えるか、目標を少し変えて軌道修正するか、別の実装方法を模索するか、力技でねじ伏せるか…

そういうことを考えなくてはならなくなる。


この「考えなくてはならないこと」の連続がプログラムで、デバッグもこれに含まれます。

そして、目標を達成した時、成果物は「プログラムしたもの」と言ってよいかと思います。



#話逸れるけど、以前に「目的があって、それを阻害するものがあればゲーム」と書きました。

 僕はゲームを作ること自体が一番楽しいゲームだと思っていますが、それはプログラムが「目的を阻害するもの」だから。

 プログラムはゲームを作る手段なのですが、実は乗り越えないといけない障壁でもあります。




ところで、言語を選ぶというのは、自由度を狭める行為なのね。


究極的なことを言えば、すべてのことをするのに、アセンブラを使えばいいんです。

CPUが出来ることは全てできるし、それ以外のことは一切できない。コンピューターに命令を出すには最適な方法です。


でも、それは面倒くさいから、自由度を狭め、利便性を手に入れる。

C言語を使うと、自己書き換えは出来なくなるけど、簡単な計算で命令をいくつも組み合わせる必要は無くなる。


でも、Cは比較的アセンブラに近いです。awk になると、速度も遅くなるし、Cほどバイナリの扱いも上手ではない。

その代わりに、テキスト処理はCに比べてずっと楽になります。


RPG ツクールだと、事実上 いわゆる「JRPG」…2Dマップでマス目を感じながら移動して、戦闘時は画面が切り替わってコマンド選択、というゲームしか作れなくなります。

そこまで自由度を狭めた代わりに、JRPG では非常に苦労するシナリオ管理やアイテム管理などが楽になります。



ここでもやっぱり、Cとawkと RPGツクールは、同列に並んでいるものだと思います。


JRPG 作りたいのなら、Cを使うより RPGツクール選んだ方がいい。

シューティング作りたいなら、シューティングツクール選ぶといい。


でも、誰も見たことが無いゲームを作るなら、Cとか Javascript を使わないといけなくなる。

自由度と利便性の天秤の問題で、適切に選び出すことが大切。ツクールが「プログラム環境ではない」なんて思いません。


#RPGツクールは、JRPG しか作れないと言いつつ、シューティングゲームを作ってしまう人がいる程度には自由なプログラムも可能です。

 これは、大道芸の一つで、適切な言語の選び方とは思わないけど。

 (RPG 中にミニゲームを入れたいのならアリ。その程度には自由度がある)




話を「ベーマガのような場所」に戻すと、プログラムを「一覧できる」必要はあるのでしょうね。

ツクールではこれが難しいし、Scratch ですらプログラムが分散しているので一覧性は悪いです。


そうすると、エディット環境と実行環境がある程度分離していて、テキストファイルでプログラムリストを示せる言語、のみをプログラム言語として扱う必要が出てくる。

今時、そういう言語は初心者向けの言語ではないと思うので、ベーマガを目指すならそんな限定をしない方が良いのだけど。



雑誌としてのベーマガ、という考えにとらわれなければ、実行ファイルをダウンロードできることと、その実行ファイルを見て興味を持った人がソースにアクセスできること…などの条件を整えることで、ツクールや Scratch も含めることが可能でしょう。



昔のベーマガと違って、自分で打ち込まないと動かない、というのは今の世の中難しいように思います。だから実行ファイルのダウンロードも準備する。

本当は「写経する」って、勉強の第一歩だから、意味も分からず打ち込むのは良い経験なのだけど。



ただ、「打ち込むこと」や「紙面」の制約が無くなっても、ベーマガのようなコミュニティを作る際に、ソース規模の制限は必要でしょう。

内容を見て把握できる程度でないと、テクニックを盗めなくなる。ベーマガを目指すのなら、ソースから学び取ることが重要。



同時に、以前も書いたように、投稿を受け付けてアイディアの良いものを選び出す第三者が必要でしょうね。

その第三者は、ソースを見てみたくなるようなテクニックのポイントを解説する役割も持つ必要があります。


#ベーマガの Dr.D の役割です。詳細解説は不要。そこは自分で盗むものだから。



把握できる程度の規模で、と制限されると、ツクールは、おそらく見た目の良い作品は作れるけど、アイディアを入れるのが難しい。

Cではアイディアを入れやすいけど、見た目を整えるのが難しい。


これを適切に判断し、評価する…というのも大変なことだと思います。

環境ごとに、その環境では難しいことに挑んだポイントなども適切に評価してあげないといけない。



ただ、ベーマガの時だって、多少はそういう条件の違いあったんだよね。

スプライトのある機種と無い機種で、見た目はかなり違うものだったけど、ちゃんと機種ごとに評価されてた。



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女性向けのゲーム  2015-04-07 12:06:10  コンピュータ 業界記

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ぎーちさんから聞いた話の続きです。

最近は、女子高生でもゲームを作ったりしてる、という話が出ました。


どんなゲームを作っているのですか? と聞いたら、ノベルゲームが多いらしい。

文章主体のアドベンチャーゲームね。


これは納得。




ゲームでも、女性向け・男性向けってあると思います。


…と書く上で、先に断わっておきましょう。

以前に書いているのですが、性別って簡単に区分できるものではないです。


だから、ここでの女性男性って、「一般論として」の話であって、そうではない例は山ほどあります。



女性はアクションゲームが苦手、と言われることもあるのですが、僕の経験上それはあまりないように思います。


ただ、アクションゲームで「攻撃される」のは嫌い。

シューティングゲームとか、格闘ゲームとか嫌いな人が多い。


テトリスやコラムスは好きなのに、ぷよぷよは嫌い、という女性に会ったことがあります。

対戦型で攻撃されるから嫌なんだそうです。


落ち物で言えば、コラムスの方が女性人気高いようです。


テトリスって、「待つ」ことが多いのね。棒ブロック待ち。

でも、コラムスって、いま落ちてきたブロックをどう処理するか、だけを考えることが多い。


「待つ」=「耐える」で、攻撃されているのと変わらないようです。

目の前のブロックを処理し続けるのは、たとえうまくいかなくても自分の失敗であり、攻撃とは感じないみたい。



同じ理由で「ミスタードリラー」が好きだという女性を知っています。


あのゲーム、アクションゲームとしても結構激しいのだけど、攻撃されることは無くて、失敗は全て自分のミス。

他にはテトリスが好きだけど、他のアクションゲームはそれほど遊ばないらしい。



最初に戻って「女性はアクションゲームが苦手」説では、アクションじゃなければ大丈夫、となるはずですが…

RPG とかで敵が強いと、やっぱり「攻撃されている」感が強くて嫌い、という人が多いです。

Wizardry とか、人気ある RPG ですけど、好きだという女性はあまりいない模様。厳しいからね。


ドラクエとか、適切にレベル上げをしていれば敵の攻撃が弱いのも、ここら辺に配慮してのことのようです。




最初に書いた、ぎーちさんがあった女子高生、ノベルゲームを作っていると聞いて納得したのはそういう理由です。

お話を作ることが「ゲームを作る」ことで、攻撃されるようなこともない。


昔だったら文芸部に入って小説書いていたような女の子が、今はパソコンでノベルゲーム作っている、とも言っていました。

それもまた、納得。昔は小説が娯楽として注目されやすいメディアでしたけど、今はゲームの方が注目されやすいからね。


ぎーちさんは「女の子と一緒にゲームを作る青春なんてうらやましい。今は良い時代だ」と言ってました。

あー、なるほど。ここが話の重要な点らしい(笑)




別にうらやましがられる話ではないのですが、大学時代のパソコンサークルは女性が多数いました。


理学部と薬学部が同じキャンパスだったのですが、理学部は男性比率が高くて、薬学部は女性比率が高い。

もちろん、両方とも「理系学問」ですから、理系サークルだからと言って女性比率が下がることもない。


結果として、パソコンサークルでも半数は女性だったのです。

彼女たちもプログラムは覚えましたし、簡単なゲームなら作る子もいました。


それこそ、ベーマガにも載らない程度のレベルのゲームだけど。


サークル内で付き合っているカップルが何組かいて、女が絵を描いて、男がゲーム作ったりしていました。

男が回路設計して、女が実装(半田付け)しているカップルもいたな。


…僕は彼女いませんでした。好きな子はいても、告白しても玉砕だったり、言い出せなかったり。


それはさておき、ぎーちさんのいうように「今が良い時代」なのではなくて、当時もそういうのはいたって話ですよ。


#実のところ、パソコンサークルで女性比率が高かったのは僕らの年代だけの特異現象でもあった。

 2代上の先輩が、女性比率を高めようと頑張って勧誘した結果。

 僕らが卒業するまで勧誘して入ってくるのは男女半々くらいだったけど、その後いつの間にか男性ばかりに戻ったらしい。




話変わって、セガに入社した時、同期に女性プログラマがいました。

当時、セガ社内で女性プログラマは3人しかいない、と聞きました。


女性だからプログラマに向かないとは思いません。世界初のプログラマは、Ada にせよ ENIAC のプログラマにせよ、女性でしたし。

ただ、事実として現状では女性プログラマは珍しい。



ゲーム業界では、プログラマの多くは、ゲームを作りたくてプログラムを覚えた人でした。

昔のゲームは…今のゲームも、多くは男性向けに作られているのね。そういうものを楽しんで、自分でも真似したくなって作る、というのは、当然男性が大多数。


そして、男性がゲーム会社で作ったプログラムは、また男性向けの内容になる。

せめて企画に女性がいるといいのだけど、企画も男性がほとんどなのね。


#デザインは女性がそれなりの人数いました。4割女性、くらいだったかな。


ノベルゲームのシナリオ作る、でもいいから、女性のゲーム作成者がもっと増えるといいな、と思います。



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ゲームは頭を悪くするか  2015-04-16 12:14:01  業界記

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少し日があきましたが、ぎーちさんとの話の続き


これは、何かの話題の時に僕が口走ったのだと思います。

「ゲームをやると頭が悪くなる」という人がいるが、そんなことは無い、と。



これ、ややこしい話になるの判っていたから、対談の際は深く突っ込まなかった。

根拠を示さず、ゲームをやると頭が良くなってしまう、と言っただけ。




先に、「頭が良い」を定義しておきましょう。

頭が良い、という言葉は、大抵は2つの意味で使われます。


まず、知識を多く持っていること。

学校の成績も、主に知識量を競うものですから、成績が良い人が「頭が良い」と言われるのは、知識量が多いという意味です。


もう一つ、問題解決力があるということ。

知識は、持っているだけでは役立ちません。知識を組み合わせ、現実的な問題に対処する必要がある。

問題を解決する力がある人は、「頭が良い」と言われます。


この二つ、別々のものだけど無縁ではありません。


問題に対処する、まさにそのものの知識があれば、瞬時に問題解決できるでしょう。

知識量が多ければ対処できる局面も増えます。知識量で問題解決力をカバーできます。


でも、世の中すべてのことを知っている、なんてできない。

どこかで問題解決力に頼らないといけなくなる。


一方で、知識がなくても、高い問題解決能力があればカバーできることがあります。

まぁ、最低限の知識は必要。あとは、そこからの類推でカバー。


類推は、その類推が間違っている可能性もありますから、元の知識からあまり離れた部分はカバーできません。

やっぱり、知識は持っていないと。



この二つ、無縁ではないけど別物。二つの「頭の良さ」です。




ところで、学校では、主に知識を教えます。成績も、知識をどれだけ覚えられたかで付けられます。


問題解決能力は「評価しにくい」頭の良さです。

評価しないわけではありませんが、成績を付けるうえでの比率としては、低めにならざるを得ません。


そして、成績にあまり関係ないので、教えないわけではないのですが、やはり比率は低いです。



もう一つの理由として、問題解決方法というのは教えにくい、というのもあります。

教えてもらったものは、やはり知識であって、解決能力にならない。

自分で練習して、体得する以外に問題解決能力を身に付ける方法はありません。



つまり、学校でいう「頭が良い」は、知識に偏ったものになりがちです。

問題解決能力が高い人は、頭が良いとはされないことがあります。




しかし、本来大切なのは「問題を解決すること」であって、その前提となる知識を学校で教えるのです。

それを、学校で良い成績を取ること、が目的になってしまうと本末転倒。



学校では知識を教え、問題解決能力は実地で各自身に付けてもらう。

…これが、本来の教育の在り方でした。



実地で?


子供たちが遊んでいれば、さまざまなトラブルに出会います。

それらの問題は、自分たちで解決するしかない。小さな、簡単な問題から解決することを繰り返し、時々手におえない問題に遭遇する。


子供のうちなら、手に負えない問題は周囲の大人に頼るのもいいでしょう。

目の前で解決する様を見れば、解決方法を知識として覚えられます。いつか自分で使う時が来ます。



学校では知識を学び、学校の外ではその知識の使い方を体得する。

だから、昔から「良く学び、良く遊べ」と言います。


遊ぶのは、元気で健康な体を作れ、というような意味ではないですよ。

学校ではできない勉強を、学校の外でやりなさい、という意味。



遊びで使う「問題解決」には、必ずしも学校の勉強は役立たないかもしれません。

でも、問題解決能力と知識は別の能力で、自由に組み合わせを変えることができます。


今度問題が発生した時には、学校で教わった知識が役に立つかもしれません。

問題解決能力を養っておけば、知識が増えれば応用範囲が広がるのです。



ここが大事なところです。

問題解決の経験は、解決能力となって、他の知識とも組み合わせ可能となります。

役に立たないような小さな問題解決を繰り返すことが「頭の良さ」に繋がっていきます。




上に書いた、子供たちが遭遇するトラブル…は、現代的には未然に摘み取られる傾向にあります。

子供を危険から守るために、危険な個所には入らせない。


それは正しいです。

取り返しがつかない事態が起こるほど危険なところには、子供を行かせない。

危険が無さそうなところでも、致命的になりそうなものを見つけて撤去しておく。


ここまでは良いのです。これは、トラブルを摘み取っているのではなく、致命的なトラブルを避けているだけ。



十分に安全な環境になったら、子供を思い切り遊ばせて、小さいけど無数のトラブルに遭遇させなくてはなりません。


しかし、それを容認できない大人が多い。危険そうだと思ったら、声をかけて止めさせてしまう。

子供同士がけんかを始めると仲裁に入ってしまう。



結果として、問題解決能力は育めません。

実は、自分が成長する機会が失われている、というのは子供は敏感に感じ取っています。


こういう状態を「つまらない」と感じているのです。




さて、ここで話をゲームに戻しましょう。

ゲームというのは、小さな箱庭です。その中のルールは単純で、現実よりも理解しやすいです。


しかし、そこですら何かが起きて「問題解決」しないといけないようになっています。

伸び伸びと遊ぶことが禁じられた子供は、そういうゲームの中で、擬似的に問題解決を試み、問題解決能力をはぐくもうとします。


子供は、問題解決能力が重要であることを、本能的に悟っています。

だから、知識を総動員して問題に対処し、解決した時に「楽しい」と感じます。


ゲームをやっていて、難しかったけど面クリアした。これは非常に楽しい経験です。

単純化されたわかりやすいルールの中での経験ですが、分かりやすいからこそ、子供でも問題解決への糸口がわかりやすいようになっています。



ゲームは、小さな問題解決の連続です。

もちろん、現実に応用するためには、問題のルールを徐々に複雑化していく必要があるでしょう。


でも、それは子供のだってわかっている。簡単なゲームばかりでは飽きてしまい、徐々に難しいゲームを求めるようになります。

より複雑な問題を解決できるか、試してみたいのです。


でも、周囲の大人が言うのです。「ゲームばかりしていると馬鹿になる」と。

本当は、頭の良さ…問題解決能力を育んでいるのに。



酷い場合は、大人がゲームを禁止します。

それが頭を良くする機会を奪っている、ということに、頭の悪い大人は気が付きません。




すべてのゲームが頭を良くしてくれるわけではありません。

テレビゲームの場合、「問題」には2種類あるためです。


一つは、反射神経を高めなくてはならないアクション性。


これは、神経回路を生成することで対処します。

ソフト処理(考える)より、ハード処理(神経回路の生成)の方が速い、ということ。


テトリスを繰り返しやっていると、考えるより先に落とすべき位置がわかるようになる。

神経回路が生成されたので、四角いものが下に並んでいると「ブロックが並んでいる」と思ってしまいます。


ビル群を見て、上からL字ブロックが落ちてきたらここにハマる、とか思ってしまう。


これは…問題解決能力は出来上がっているのですが、あまりにも応用が利かない局所解に陥っている。

全然関係ない場合にまで問題解決を適用しようとして、むしろ頭が悪くなっている。



もう一つは、とにかく冷静に考えなくてはならない、推理性。

パズル、とは似て非なる物かな。上にテトリスをアクションの例として挙げたけど、あれはパズルゲームと言われる。

でも、実際には推理性などはあまりない。目の前のものに対処するだけ。


もっと、自分の行動がどういう影響を周囲に及ぼすか考えなくてはならないのが、推理性ですね。

純粋なパズルゲームにはもちろん推理性を駆使したものが多いのですが、敵の出現パターンを覚えないといけないアクションゲームなんかもこちらの範疇です。


十分な知識を元に、それをどう組み合わせれば目的が達成できるのか、組み合わせ方を考える必要があります。

これは、問題解決能力を養います。




「ゲームが頭を良くする」と考えられるのは、主に後者のタイプです。

前者が絶対にダメだ、というわけではないですよ。ゲームなんて、楽しめればそれでいい。好きなゲームをやればいい。


でも、頭を良くする、という目標があるなら、後者の方が効率が良い。



そして、遊び方も重要です。

時間を区切って、目標を定めて遊ぶこと。


ゲーム時間は1時間、とか先に設定してしまう。その中で達成できそうな目標を決めて、その目標達成のための事前計画を立てる。

事前計画と言っても、複雑な話ではなくて、どうやれば良さそうか頭の中で考えてみるのね。


それからプレイ開始。

目標達成できても出来なくても、1時間たったら終了。


終わった後は、プレイ中に気付いたことなどのメモを取っておくといいでしょう。

目標達成を阻んだ予定外のことなどがあれば、それは次回へ向けた重要なヒントになります。


実際のゲーム時間の前後に、事前計画の時間と、問題整理の時間がセットになっています。

まぁ、全部合わせても2時間程度。


なぜこうするかというと、考えることが重要だから。

プレイ時間が決まっていて、その中でやるべき目標が決まっていたら、その中で最大効率を上げなくてはならない。

動きながら考える、というのは案外難しいので、事前計画を立て、それに従って行動をとるのです。



自分で決めた目標をどう達成するかというのは、「ゲーム外のルール」です。

目標によってルールが毎回変わるので、同じゲームを遊んでいるのに、毎回違う問題を解いていることになる。


もちろん、ゲーム内でやることは、ゲーム内のルールに縛られます。制約の中で効率を上げる方法を考えないといけない。

これ、問題解決方法を考える訓練としては、悪くありません。ゲームをやっていると頭が良くなる。



2時間程度で遊ぶ時間は終わるので、学校の勉強もちゃんとやりましょう。

こちらも、時間を決め、事前計画と実際の勉強時間、問題整理をセットにして、望むといいです。


だらだら勉強しても、脳が疲れて記憶できなくなる。効率悪いだけで頭良くならないよ。


問題解決能力は重要だけど、それも前提となる知識が無いと意味がない。

ゲーム内の知識だけでなく、世の中の知識もちゃんと学んでおきましょう。



ゲームをやっていたから頭が悪い、なんて、周囲の大人に言わせないためにも。



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世の中はゲーム  2015-04-16 12:15:55  業界記

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さて、ぎーちさんとの対談の内容はほぼ全部書いた…と思う。


最後に「世の中はゲームか」を書きたいと思います。

対談でそんな話は出なかったのだけど、ぎーちさんのWEBページには「人生はテレビゲーム」って書いてあるんだよね。


多少言葉は違うけど僕も同感なの。世の中ゲームだ、と思ってる。

僕は「テレビゲーム」ではなくて「ゲーム」なのだけど、大体おんなじ意味じゃないかな。




最初に書いておけば、「世の中は○○」って、ちゃんと自分の考え方のベースを持っている人なら、誰でも一家言持っているのではないかな。


映画好きな人なら、世の中は全部映画で学んだ、というかもしれない。

生物好きなら、人の行動を全て利己的な遺伝子のせいにするかもしれない。


自分が深く学んだことは、その人の考え方のベースとなります。

そして、その人が世の中を見るとき、全てそのベースを通してみることになる。

だから、世の中は○○、ということになる。



…と、断ったうえでもう一度。僕は世の中は全部ゲームだと思っています。




数学の一分野に、ゲーム理論があります。

元々は、チェスなどのゲームで勝つための方法を考察する学問でした。


でも、チェスっていうのは例えに過ぎないのね。

ゲーム理論では、勝ち負けがあれば、全部ゲームと見做します。


そして、勝ち負けを決めるのは、プレイヤー自身。

つまり、あなたが「ゲームだ」と感じるものは、すべてゲーム理論で扱えます。


恐らく一般的にゲームではなく、僕がゲームだと感じるものの例を挙げましょう。



スーパーのレジに並ぶ時。

混んでいて、どのレジにも列ができている。少しでも早く進みそうな列を見極めて並ぶ。

本当に速く順番が来れば勝ち。


洗濯ものを干すとき。

洗濯ハンガーの限られた容量の中で、洗濯物を全て干したい。

でも、密集させると風通しが悪くて乾かない。傾かないようにバランスもとりたいし、パンツは外から見えないようにしたい。

うまく干せて、夕方までに乾けば勝ち。


料理を作るとき。

最短時間で、数品の料理を作りたい。できればほぼ同時に完成し、暖かい状態で食卓に出せるように。

調理手順を考えて、2口のコンロと電子レンジを使い、いろいろと同時進行。

30分ですべてを作り終え、暖かい状態でご飯に出来れば勝ち。


なんでもいいんですよ。

こんなものでも、数学的に戦略を考察することができる。ゲーム理論というのはそうした学問です。


実際、経済学なんかではゲーム理論は活用されています。

みんなが「自分の利益を最大にしたい」と考えていると仮定して、企業活動などを行っていると考える。

その際、ゲーム理論に従って行動の説明がつくし、今後の他社の動きの予測も立てられる。


もう、ありとあらゆるものがゲーム理論で扱えます。




工学の一分野に、シミュレーションがあります。

大規模すぎて実験ができないものなどを対象に、規模を小さくして実験をする手法です。



規模を小さくしたものを「シミュレーションモデル」と呼びます。

単に実物を小さくした模型のこともありますし、コンピューターでシミュレーションするためのルールの場合もあります。


このモデルのつくり方次第で、シミュレーションの価値は大きく変わります。


適切に作られたモデルは、実験が容易で、結果も現実に近いです。

実験が容易なので、条件を変えながらくりかえし実験ができます。

それを元に、現実を予測できます。


単純すぎるモデルは、結果が現実と乖離することがあります。

現実に即したモデルを作ると、複雑すぎて実験が難しくなり、十分な回数の繰り返しができなくなります。


シミュレーションモデルを作るのは、非常に難しいのです。

適切なモデルを作り出すのは、勘と経験がものを言う、職人芸の世界です。




先に、ゲーム理論でなんでも扱える、と書きました。

ただし、条件が一つあり、ゲームを数学的にとらえ、数値で表現できるようにしなくてはなりません。


つまり、現実を単純化し、扱いやすい規模に小さくするのです。

これは、シミュレーションに他なりません。ゲーム理論とは、シミュレーションの上に成り立つ理論なのです。



ゲーム…ゲーム理論でいうところの勝敗のあるもの、ではなく、テレビゲームやボードゲーム、カードゲームなど、遊戯としてとらえられているゲームは、このように「現実世界をシミュレートしたもの」と考えることができます。


将棋は、局地における戦闘をシミュレーションしたものでした。

囲碁は、陣地を包囲し、補給路を断つことで相手の投降を促す、大域での戦略をシミュレーションしたものです。


ゲームとしてのルールを面白くするうちに、何のシミュレーションだかわからなくなったようなものもあります。

最初からゲームとして考えられ、現実を直接反映していないものもあります。


それでも、勝敗がある以上、競争のある社会を何らかの形でシミュレーションしたものなのです。



このシミュレートがうまくいっていれば…ここが重要なところですが、すべてのゲームが、ではなく、うまくシミュレートしたゲームが、ですが…ゲームは、世の中の縮図となります。




もっとも、一つのゲームで世の中すべての縮図、とはいかないよ。

一つのゲームは、世の中を一つの軸で切り取ってみた時の縮図、に過ぎない。


でも、「あ、これあのゲームと同じだ」と気づくことが世の中でいくつもあれば、それはやっぱりゲームが縮図だったことになるし、あらかじめゲームで体験していたことになる。


これは、映画や小説で他の人の人生を追体験したり、あり得ない遠い宇宙の物語を感じることができるのと同じことです。

その体験で感じたことは、必ずその人の人生の糧となる。



良い映画や小説がもたらしてくれるのと同じ感動が、良いゲームにだってちゃんとある。


…良い、と限定したけど、そうでないゲームだって大切ですよ。

だって、世の中そんなに良い面ばかりではないもの。悪い面も、ダメな面も、くだらない面もある。


ゲームにも、良い面も、悪い面も、ダメな面も、くだらない面もあっていい。

それでこそ、世の中の縮図と言えるのです。


世の中、ゲームだと思います。



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ぎーちさんとの話、これで終了  2015-04-16 12:18:20  業界記

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本当に雑多に話していたから、それを整理しながら、さらに話している時にはまとまっていなかった自分の話をまとめながら書いていたら、長くなってしまいました。


特に、今日公開した分は2つとも長い。

前回の公開からも日が空きましたが、最後のまとめ的なテーマに取り組んでいたら、全然話がまとまらなくて…


公開した文章の10倍くらい書いて、片っ端から没にしました。


今日書いたテーマは自分の思いがいろいろろつまっていて、教育論とか、数学理論とか、数学やゲームの歴史とか、いろんなものを書いては「いや、その話関係ない」って、没にし続けたの。


それをやる間に、自分で本当に書きたいことがわかってきて、やっとまとまった。それでもちょっと長いけど。




最初から通しで読みたい人向けに、日記をまとめて読むためのリンクです。


ぎーちさんとの対談(前半)

ぎーちさんとの対談(後半)


日記システムの都合で、前後半に別れてしまい申し訳ない。

綺麗に一本に見せる URL を発行できると良かったのだけどね。




本当は、会社員時代にゲームを作っていたときの裏話とかもしていて、実はぎーちさんにはそれが一番ウケていたのだけど、これはまだ書きません。

20年たつまで書かない、と自分でルールを決めたから、時期が来るまでゆっくり待ちます。



ぎーちさんとの話、と書きながら、それをきっかけに考えたこと、普段書かないことを好きなように書かせてもらいました。


なんかね、自分がゲームに対して持っている想いって、恥ずかしくて普段書けないんです。

想いを告白するなんて、誰だって恥ずかしいもんでしょ?




ぎーちさんとの対談は、面白いものでした。


僕もゲームが好きでいろいろな想いを持っていたけど、別の人の想いを聴いて、それを元に自分の考えを深めることができた。

さらに、それを文章にまとめようとしたら、人に説明するためにもっと深く考えなくてはならなくなった。


今回の出会いをくださった、ぎーちさんに感謝します。


お互い子供がいるので時間制約があり、多分夜に会うのは難しいのですが…

いつか、酒でも飲みながらゆっくり想いを語り合えたら面白そうだな、と思っています。


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ファイナルアーチ  2015-07-10 12:29:09  業界記

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さて、そろそろ昔話を再開しよう。


1995年の夏、ST-V用のゲーム、「ファイナルアーチ」がリリースされました。

自分では正確な日付は覚えていないのですが、ネットの情報では6月~7月発売ということになっているようです。

なので、そろそろ 20年たったことになる。



一応「ファイナルアーチ」を説明しておくと、世界初のポリゴン3D野球ゲームです。

それほどヒットしたわけではないので、知らない人の方が多いでしょう。


あまり動画が無いようですが…手相は1本も動画が無かったのに、1つアップされていたのに感謝。


でも、動画アップしてくれた人、はじめてプレイしたようで上手ではない。

というか、説明書もないしジョイスティックの調子悪いそうで、ずっとぼやき続けているだけで、失礼ながら見ていても特に面白くない。


一応、「世界初のポリゴンゲーム」ということは、従来のゲームの延長から抜け出せていない、ということでもあります。

ファミスタなんかと同じく、ボールを見るのではなく「ボールの影」を見て位置を把握し、バットを振らなくてはならないのですが、理解していただけていない御様子。




さて、以前書いたように、僕は2月ごろまで「手相占いちょっとみせて」を作ってました。


当時は、AM1研はゲームを作るごとにチーム編成していました。

手相のチームは、役目を終わって解散。

すぐには次の仕事も決まらず、主にテストプレイなどの雑用仕事していたと思います。


次に入ったのは、先日まで「The J League 1994」を作っていたチーム。

今度は ST-V で野球ゲームを作っているけど、人手が足りないので入って、とのことでした。



その前に作った Jリーグは、それほど売れませんでした。


日本でサッカーのプロリーグができて盛り上がっているから、とゲームを作ったものの、新し物好きで、人と一緒に騒ぐのが好きな人が盛り上がっているだけだった。

ゲームセンターに来る、一人で遊ぶ方が好きな人には全くウケません。


店舗からは、暇つぶしに来るサラリーマンのために、サッカーよりも野球の方が受け入れられる、という意見。

じゃぁ、誰か野球作れ、という上層部判断で、サッカーを作ったチームが引き受けることになったのです。




でも、サッカー作ったチームの人たち、それほどスポーツに詳しくない。

というか、チームスポーツが得意なプログラマーって、それほど多いと思えない。


#黙々と山登りが好きな人、とかはそこそこいるのですが。僕も結構そうだし。


サッカーも企画の人が一生懸命ルールとか調べながら作ったのですが、野球もよくわからない。


詳しく知らないのですが、どうも企画の人は野球好きな人に変わったみたい。

と言っても、野球のテレビ中継が好き、という程度で、元野球部だったとかいう話ではない。


後の話になるけど、モーションデータ作っていて、重要な点を見落としていても気づかない程度。


それは上層部から仕事を請け負って来た部長も同じで、「野球もサッカーも似たようなもんだから、メインルーチン流用で作れるだろ?」発言だったようです。

そういわれてメインプログラマーの人も納得してしまったのですが、全然違って1から作り直しだった、と後でぼやいていました。




それはさておき、リクエストは「野球ゲーム」だったのですが、ただ作るのでは面白くない。

時代的に、作るなら ST-V 用でしたし、ポリゴン出るハードなのだから(と、この頃はまだ思われてました)、3Dで作れ、となったのです。


着想としては単純。でも作るとなると大違い。


1研では人型ポリゴンなんて動かしたことありませんでした。

どうやって動かせばいいの? というところから始まります。


ややこしいプログラム作っている時間もないし、アニメーションの頂点データ全部持ってしまって、それらを読み出しながら再生しよう…なんてことも行われたようです。

でも、あっという間に膨大なデータ量になる、と判明して取りやめ。


結局、AM2研で開発途中だった、SGL の非常に初期のバージョンを使わせてもらえることになります。

そして、やっと画面の上でポリゴンの人が投球動作を始めた…というところで、僕が投入されました。


ポリゴンになると、今までのゲームとデータ量が桁違いになってきます。

データ整理だけで一苦労なので、誰か新人頂戴、とリクエストされたようで、そこに僕が手が空いたし、手相占いで「データ整理が速い」と言われていたので投入された、という経緯だったようです。





この話、長くなるので何回かに分けます。

のんびりと書いていく予定。



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13年 TX-0 エミュレータ公開


申し訳ありませんが、現在意見投稿をできない状態にしています

僕の担当部分  2015-07-11 18:28:52  業界記

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さて、ファイナルアーチ…開発初期は「ポリゴン野球」と呼ばれていただけだと思いますが、そのチームに配属になってから。


手相の時とはハードも違うし、2Dと3Dの違いがあるのでデータの整理方法も違います。

とはいえ、すでにデータ加工ツールは存在しているし、あとはひたすらデータ整理をするだけ。


仕事の内容を一通り理解したところで、早速自動化します。


手相の時は awk を使いましたが、awk では限界を感じていました。

実は、手相の途中で perl の勉強を始めたのですが、無理やりとはいえ動いているツール群を修正する必要も感じられず、「勉強」どまりでした。


#この時、近くの席にいた先輩に perl の本貰いました。ありがとうございます。まだ大事にしてます。


ファイナルアーチでは、perl で整理ツールを作ります。

…このツールが、いつの間にか他のチームの人も使うようになっていた奴ですね。バグ入りだったのに。




ポリゴンデータ作る人も、まだ慣れてません。

ある時、貰ったモーションデータでは、腕が左右逆についてしまっていました。


おかしいですよ、と指摘するも、画面上で正しく動いているし、データがおかしいわけがない、と言われます。

仕方ないから、自分の作った整理ツールで特別扱いして、左右反転するようにして切り抜けました。

でも、なんかスッキリしない。


しばらく後になって、その人が「ごめん、ポリゴンデータが渡した奴と違ってて、結果的にモーションおかしくなってた」と謝ってきました。

正しいデータを貰い、特別扱い処理のプログラムを消して、問題解消。




手相の時と同じく、データ整理が自動化されると手が空きます。

「データ整理要員」で入ったのですが、プログラムを手伝い始めました。


この時問題になっていたのが、ポリゴン数が多すぎること。


バーチャファイターなら、画面上に出る人は2人です。


野球だと、守備側9人に、攻撃側最大4人。審判も表示しないとおかしいので、最低4人。(各塁審)

打つまではキャッチャー・バッターをクローズアップして表示していますが、打った瞬間どちらにボールが飛んだか示すために、球場全体を表示するようにカメラを動かします。


つまり、画面上に17人を表示しなくてはならないのですが、ST-V にはそれほどの能力はありませんでした。



方針はすでに定まっていました。

アップに耐えられる「フルポリ」と、遠景用に頂点数を減らした「マッチ箱」、さらに板1枚の「書割」と呼ばれる3種類のキャラを用意して、切り替えます。


審判なんて、真っ先に書割にしても構いません。

でも、ボールが飛んでいく先の人は注目されるから、できればフルポリで出したい。


これらを、違和感がないように切り替える処理が欲しいのですが、試行錯誤で作り出すしかありませんでした。

試行錯誤は時間がかかるのでメインプログラマーの仕事ではない。そこで、僕がこの仕事をやることになります。




フルポリゴンは200頂点位だったかな。

やせ気味、太り気味、上半身筋肉太り、下半身筋肉太り…など、何種類かの体型が作られていました。


マッチ箱、と呼ばれるローポリゴンは、たしか64頂点。

腕・足はそれぞれ三角柱2つで表現。体と頭はそれぞれ直方体で表現。

腰をひねることもできませんが、モーションデータは共通なので、「透明の腰」があるように動きます。


書割、と呼ばれた、人の絵を描いた板もありました。

板だけど、4頂点ではなく1頂点。板の表示位置だけ決めて、その位置にスプライトを表示しているからです。



たしか、人の合計で 700頂点位しか表示する能力がなかった。

画面上に最大17人、と先ほど書きましたが、フルポリゴンでは3人程度しか出ない。


画面上のキャラクタ配置を元に、どのキャラをどのモデルで表示するか自動調整する必要がありました。

これも、僕が担当した部分。




まず、カメラ位置から各キャラクタの表示サイズの概算を計算する。この表示サイズが優先順位になります。

ただし、キャッチャーとバッター、球が飛んでいく先の野手には手心を加えて、ポリゴンになりやすくする。

審判にも手心を加え、優先順位を落とす。



画面上の表示人数をカメラ位置から求めて、まずは全員マッチ箱に出来るか、頂点数を計算する。


全員マッチ箱に出来るなら、「余った」頂点数で、優先順位が高い奴からフルポリ指定する。

全員マッチ箱が無理なら、優先順位が高い奴からマッチ箱にして、頂点数が足りなくなった時点で、あとは書割に。



たしか、実際にはもっと細かな処理を入れ、見た目が破綻しないようにやっていたはずです。

でも、頂点数を守らないと処理落ちするため、やむを得ず「巨大マッチ箱人間」が登場することもありました。


もっとひどいのが、移動するキャラが「書割」になった時。

「待ち構えている」絵柄しかないので、静止したポーズのまま横滑りしていきます。


#そもそも、バッティング時のセンター外野手を書割にする、程度の使い方を想定していたのです。




他に何担当したかな…

と考えていて思い出しました。地味だけど、「砂煙」の表現を作りました。


ST-V では半透明が使えないので、メッシュ半透明。

ボールがバウンドしたり、スライディングしたりすると、砂煙が上がります。


ところで、ゲーム中では選択したチームによって、球場などが変わりました。

その中の一つに「河川敷球場」という設定のものがあります。


河川敷の土手の下にある、という草野球のような球場。プロなのに。

外野スタンドは芝生で、レジャーシート敷いて座っているお客さんが少しいる程度。


外野席の上は土手で、自動車とか停まっている。



ポリゴンモデルなどを入れた後で、急に「ホームランで自動車にぶつかったら、壊れて煙出すことにしようよ」っていう謎の話が…

これ、メインプログラマーの人と話をしていた覚えはあります。

でも、勝手に入れたのか、企画者の人も巻き込んだのか覚えていません。


僕がそのプログラムを担当して、かなり広めに「あたり判定」を取って、ぶつかると煙を出します。

でも、そもそもホームランは出にくいし、バットの振り具合で飛球の方向は変わるのですが、狙い通りのところにはなかなか飛びません。


偶然出した人はいるかもしれませんが、狙って出すのは難しいと思います。



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別年同日の日記

02年 STAR WARS

03年 賽の河原

05年 ほたる

06年 風邪

11年 生き物ばんざい

12年 こんにちわ

13年 WAR GAME

16年 岩田聡 命日(2015)

23年 エアコン水漏れ


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実装の苦労  2015-07-12 11:23:59  業界記

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世界初、というのは何気ないことで苦労するものです。

ファイナルアーチの場合、モーションデータをどのように使うか、でメインプログラマーの人が悩んでいました。


普通の野球ゲームなら、ボールが飛んできて、野手のスプライトにぶつかったら「捕った」という判定で構わない。

でも、3Dでこれをやると動きが不自然です。手を動かしてないのに、いきなりボールを持っていることになる。


ぶつかってから「捕った」モーションデータを再生するのも不自然。


どうしたものかなぁ…と相談を持ち掛けられたので、「ボールが2つある」というアイディアを出しました。


内部計算のために、ボールを飛ばします。あたり判定はこちらのボールに、かなり大きめにとっておきます。

野手に「当たった」ら、当たった位置に応じてモーション開始。


そのボールを追いかけるように「表示されるボール」が存在していて、たとえばジャンプキャッチするモーションがあると、丁度飛びついたところにそのボールがぶつかる…という寸法。


ボールの処理は結構ややこしいのだけど、2個計算するの? と言われたので、実際は内部バッファを持っておいて、グラディウスのオプションのように追いかけてくる。1秒遅らせて表示するだけで計算はしない…と提案。


実際には捕球動作ごとにモーションデータの長さが違うなどの問題もあり調整が必要だったようですが、この方式は採用されました。


3Dのスポーツゲームはまだ珍しく、応用も利くだろうということで特許出願もされました。

(すでに20年たって失効しているはずです。)



実は、「グラディウスのオプションのように」と表現しましたが、Cometの尻尾を思い出して提案したのだったりします。

「後ろをついてくる動き」って、フリッキーのころから好きで、ファミベでもよく作っていたし、Comet もそういう動きの試作から生まれたゲームなので。





当初は、打ったタイミングにより角度などを計算して打球を飛ばしていました。


でも、これだと慣れないとうまく打てないのね。

逆に、慣れると簡単になってしまう。


業務用では、一定時間楽しんでもらう、というのが前提です。

ユーザーの操作にゲームの流れを任せていると、時間調整ができない問題があります。


そこで、途中で手心を加えるようになりました。

ゲームの流れを見て、まだ時間があればもう少し楽しんでもらえるように、取られにくいところに落ちるように打球を「微調整」します。

逆に、そろそろ終わって欲しければ、Out になるところに微調整します。



金をとるために難しくしていると取られると心外なのですが、下手なプレイヤーに対してはサポートする方向に働きます。

また、当たり具合で調整の確率を変えるようにもしているので、腕前はそれなりにゲームに反映されます。




このような「手心を加える」プログラムが入ったことで、解決した問題がありました。


インフィールドフライ問題。


ゲームが作成される少し前、1991年にプロ野球で起こっていました。

プロ選手のほとんど誰もが知らない、非常に複雑なルールでプレイが混乱し、勝敗が決した珍事。


これを企画の人が資料を漁っている最中に発見。ちょっとした議論になったのです。


#ちょうど、昨年も24年ぶりにこのルールが適用されて話題となった試合があったようですね。



そのルールとは、次のようなものです。


ランナーが1・2塁にいる状態(満塁含む)で、アウトが2ではない際に、内野フライを上げた瞬間に打者はアウトになります。


この規則が無いと守備側は確実に2アウト取れてしまいます。

(フライが上がったので走者が塁にとどまった場合、わざと落球して3・2塁と送球すれば2アウト。

 それを避けるため1・2塁走者が走った場合、確実に捕球してから2・1塁に送れば3アウト。)


このルールを知った時点で、どう処理するか議論になりました。

結論は「プロも知らないルール、お客さんも知らんだろう。その状況にならないようにした方がよい」ということで、該当条件を満たすと内野フライが上がらないようになっています。


インチキかも知れません。

でも、野球シミュレータを作っているのではなく、楽しんでもらうためのゲームを作っているのです。




ルールと言えば「反則投球」問題。


選手の動きは、本当の野球選手(無名の、2軍選手だったと思います)に頼んでモーションキャプチャしていました。

これをポリゴンに与えて「再生」することで、動かしています。


まぁ、普通の作り方。何もおかしなところはないし、みんな「あぁ、ちゃんと動いている」という反応。


ある時、企画の人が気づきました。

投球動作の最中に、ピッチャーの足がプレートから離れてしまっている。


野球では、投球動作中はピッチャーはプレートを踏み続けなくてはなりません。

「既定の距離から投げる」ことを徹底するためのルールね。


これを怠ると、反則投球となって打者は1塁に進みます。


キャプチャ時には、もちろん選手は正しく動いてくれていました。

しかし、キャプチャって万能ではないのね。かなり誤差が出るので、「参考」程度にしかならなくて、デザイナーの人が補正する必要がある。


でも、デザイナーの人、野球のルールに詳しくありませんでした。

投球動作中の足の動きが、本来とは少しずれてしまった。このずれが「プレートから離れる」動きになってしまったのです。


そして、プログラマも野球のルールに詳しくなかったので、その動きを見ても問題だとは思わなかった。

周囲の人も、誰一人詳しくないため、誰も問題だと思わない。


唯一ルールを知っていた企画の人は、ゲーム全体の流れなどを見る必要があってそんな細かな部分を見ていなかった。


最終的に企画の人が気づいたわけですが、誰一人野球に詳しくないから、こんな基本的なことを見逃していたのです。


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別年同日の日記

02年 納得?

16年 Chromebook購入

16年 Chromebook で子供ができること

17年 ジョージ・イーストマン 誕生日(1854)

18年 メモリアドレス

19年 いきてますよ

22年 参院選


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収益を考える  2015-07-13 11:59:53  業界記

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ファイナルアーチの話の続きです。


野球って、9回表裏、18ターンの攻防で終わる、長丁場です。

これを業務用のゲームにする場合、100円でどこまで遊ばせるか、という問題が付いて回ります。


ファイナルアーチ以前のゲームでは、「1回が終わった時に、コンピューターより点数を取っていれば続行できる」というルールが標準でした。


しかし、時代的に「対人対戦」が求められていました。

対人の場合、「コンピューターより」というルールは成立しません。


長い議論の末、ファイナルアーチでは「100円で2回の攻防。4連続でプレイしてくれたお客さんには、サービスでもう1回つける」となっています。

つまり、100円1プレイですが、決着をつけたいと思えば400円が必要です。


どんなに腕を磨いても、中途半端なところで強制コンティニュー。

これにはチーム内の反発もありましたが、商売を考えると妥当な落としどころかもしれません。


ところで、「対人対戦」には、もう一つ注文がついていました。乱入可能とすること。


乱入された場合どうなるのでしょう?

終了後、点数を入れたほうが続けられるとして…それまでやっていたプレイ内容は引き継ぐの?


遊んでいた人が勝てば引き継いでもいいのですが、負けた場合は?

知らない人のプレイを引き継いでも面白くないので、「なし」と決まります。


となると、遊んでいた人は「再乱入で取り返す」こともできない。

苦労は水の泡です。


今度は、これをどうするか激論になります。

チーム内で出た意見は、2回100円は良いとして、乱入対戦は無しにしたい、というもの。


しかし、会社の偉い人との交渉の結果、この意見は受け入れられません。

ゲームセンターにとっては「乱入対戦」はゲーム機の稼働効率を上げる優れた方法であり、絶対入れなくてはならなかったのです。


社内の偉い人と、チーム代表者で激論が交わされました。


お金も時間もかけて乱入にされたら、暴力沙汰に発展しますよ、というチーム代表の脅し(?)に対し、偉い人はこう言い捨てます。

「それは作成者が考えることではない。店舗が対策する問題だ」


サラリーマンが時間つぶしに遊べるような野球ゲームを、というのは、店舗営業から上がってきた意見でした。

そしてまた、乱入対戦が欲しいというのも店舗からの意見です。


ならば、両者を盛り込むことで起こる問題は、店舗の方で解決してもらおう、ということでした。


交渉に臨んだチーム代表者は、この言葉に「お客さんのことを考えてない!」とブチ切れてましたが、仕方なく製作を進めるうちに冷静になったようです。

「店舗の問題」というのは、つまり「乱入禁止」などのポップを用意してもらうしかない、ということでもあります。


これ、当時の対戦格闘ゲームではごく普通に行われていたことでした。


#もう少し時代が後になると、乱入禁止スイッチなどが付きます。




この頃のセガは…というか、ゲーム業界全体で、ゲームの中に広告を入れようという試みがありました。


ゲームが3Dになり、表現力を上げるためにハードウェアが複雑化し、それを扱うためにソフトウェアも複雑化し、データも膨大になり…

とにかく、製作費用が膨れ上がっていく時期。


そのままでは販売価格が跳ね上がってしまうので、広告を入れることで少しでも収入を増やし、安くするのが目的でした。


セガでも、広告を入れられないか、すべてのゲームで積極的に考えるように、という通達がありました。

野球ゲームなんて、元々野球場は広告だらけですからうってつけ。


…ところが、急に広告を入れようとしても、未知のメディアに対して「広告主」が見つからないのですね。

営業が広告を取ってこようと努力はしたようなのですが、結局1本も広告は入っていません。



ところで、当時「進め!電波少年」という人気深夜番組がありました。

この番組の中でも、ゲームに広告が入っていることを捉え、「番組の宣伝をゲームに入れたい」という企画が出ます。


この番組、とにかくプロデューサーが無茶振りして、タレントが体当たりでこなす、というスタイルを広めた番組。

(今でもそういう番組はそこそこありますね)


セガにも急にタレントの松村邦弘がやってきて、広告を入れたいとお願いされたようです。

その時、丁度「ファイナルアーチ」が完成間近で、営業が広告を獲得しに回って…いるけど、全然取れない状況でした。


で、ファイナルアーチに電波少年の広告を入れることになります。


他に広告無いから、一番いい場所に入ることになりました。

いくつか球場があるのですが、ドーム球場のスコアボード左横に入っています。


先日も紹介したコチラの動画だと、32秒めと42秒目くらいに、一瞬写っている。




ちなみに、それ以外の広告はほとんどがスタッフの名前を入れた適当な広告になっています。

締め切りまでに広告が間に合わなかったから、デザイナーが短時間ででっち上げた。


スタッフロールとか入るゲームではなかったからね。

僕の名前も、先ほどの動画の中で確認できます。


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厄介なバグ  2015-07-14 16:47:55  業界記

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ファイナルアーチの話の続きです。


完成間近になって、エージングが行われます。


エージングとは、長時間ほったらかしで止まらないことを確認する作業。

業務用ゲームって、1日中電源入っていますからね。止まるようではお話にならない。


…数日置いといたら止まりました。

画面真っ黒で、どこで止まったかもわからない。


数時間で止まるなら、まだ対策もできます。ビデオにとっておいたりして、止まる瞬間を捕まえられますから。

でも、「数日」というのが手におえない。


時間もないので、プログラマー全員で原因究明、となりました。


普段は僕は「他人の領域には手を出さない」ことにしているのですが、こういうときは別。

先輩方が作ったプログラムも、片っ端からチェックします。


しかし、情報が少なすぎてなかなか原因がわからない。


#他人の領域に手を出さないのは、大学の頃に読んだ新聞記事の影響。

 人の担当部分を見たら、バグの原因となりそうな処理があったので指摘したところ、相手のプライドを傷つけてしまい職場の人間関係にひびが…というような内容。

 そういうトラブルは起こしたくないので、基本的に人のプログラムは見ないことにしています。

 でも、バグ取りが「仕事」になれば、大義名分を得たことになるので他人の部分まで突っ込みます。




とにかく停止バグを捉えること、というので、一応ビデオも回しつつ、エージングを続けます。


すると、やっと停止の瞬間を捉えました。

デモ画面の途中、場面転換しようとした瞬間に停止しています。


メインプログラマー氏、その近辺の処理のプログラムを探し始めます。



それとは別に、ひたすらテストプレイも行われていました。

こちらでも、乱入したら停止した、という報告が。


えー、デモ画面と乱入した時では、全然違うことやってるよー。

全然違う個所なのに同じような停止バグを引き起こす。

原因のめどもつかず、一番厄介な状態です。




メインプログラマー氏は、自分のプログラムの何かがおかしいのだと考えて一生懸命チェックしています。

でも、僕としては、全然違う場所で同じようなバグが出るのだから、もっと深いルーチンがおかしいのではないか、と考えました。


でも、深いところにあるルーチンは、呼び出される頻度も高い。

なのにほとんど停止せず、ごくまれに停止するということは…



ヒントを求めて、ハードのバグなどの「追加仕様書」を片っ端から眺めます。

仕様書はプログラマーは全員手元にファイルを持っているのですが、後からの「追加」は、必要と思われるものだけがコピーされます。

完全版は、部内でファイルされたものが一冊あるだけ。



…怪しいものを発見しました。

追加仕様書に、サターンの CD用バッファから VRAM に向けて一定サイズ以上の DMA 転送を行ってはならない、という仕様がありました。


これ、ややこしい技術話ですが、面白いので書きます。


ST-V はサターンと同機能のボードです。

そして、サターンは3つのバスを持っていました


CPU のメインバス、VRAM やサウンドが接続された A バス、CD-ROM 等が接続された B バスです。


メインバスは、命令実行のために CPU に頻繁に使われます。

VRAM やサウンドは、画面や音楽の出力のため、画面出力回路に頻繁に使われます。

そして、CD-ROM などは低速デバイスなので、バスを占有しがちです。


これを1つのバスに混ぜていると、信号がぶつかり合って、頻繁に「待つ」ことになります。

なので、3つに分離した設計。


でも、3つのバスでのデータやり取りは必要ですから、System Control Unit (SCU)という LSI で接続されています。

SCU はバスの利用を引き受ける回路で、DMA 転送も担当していました。


DMA とは Direct Memory Access の意味で、CPU を使わずにメモリアクセスをすることです。

一般的に、ある程度のサイズの内容をコピーする機能(DMA 転送)として使われます。


DMA を使わないと VRAM にアクセスできない、という意味ではありません。

VRAM には CPU からアクセス可能なアドレスが割り振られ、直接操作することは可能でした。

それでないと、画面を作れませんから。


つまり、SCU は CPU バスに流れる信号を検知し、VRAM に流すべきであれば自動的に A バスに転送します。

しかし、そうでない場合は VDP と CPU のバスを切り離し、それぞれ頻繁にバスアクセスしても、問題を起こさないのです。

巧妙な設計でした。




ところで、CPU には RAM リフレッシュ機能がついています。

RAM はしばらくほおっておくと記憶内容を「忘れる」ので、それを防止する機能です。


命令しなくても、CPU が勝手に「古くなりそうな」RAM 内容を読出し、改めて書き込みます。

これで内容が「リフレッシュ」され、記憶が消えるのを防ぎます。


さて、本題。

SCU が DMA 転送を行っている間、SCU がバスを占有します。


A バス・B バス間の転送であれば CPU バスは無関係に思えますが、CPU からのアクセスは SCU がどのバスに流すべきか判断するため、アクセスが生じた時点で CPU も待たされることになります。


CPU は内蔵キャッシュがあるので、DMA 中も命令を読み込み、同時稼働することは可能でした。

…が、リフレッシュ機能は、外部アクセスを必要とします。



結果として、DMA 転送の時間、リフレッシュは待たされます。

余り期間が長いと、「消えそう」な RAM の読出しが間に合わず、実際消えてしまいます。


普通は十分に時間に余裕をもってリフレッシュするため、致命的にはなりません。

しかし、何百回に1回は、間に合わずに RAM が消えてしまうこともあります。


これが、追加仕様にあった「CD用バッファから VRAM に向けて一定サイズ以上の DMA 転送を行ってはならない」の真意でした。




追加仕様書の記述は「CD用バッファ」だったため、CD-ROM を使用しない ST-V では関係のない話、と思われていたようです。

この仕様は、誰も気にすることなく、部内のファイルに埋もれていました。


しかし、ST-V カートリッジも B バスに接続されるので、これは CD-ROM と同じ扱いです。

これが原因ではないかと考え、メインプログラマー氏に詳細を報告します。


ここで「禁止」されていたデータサイズは、CD-ROM を前提とするのであれば、あまり問題にならないサイズでした。

読み込みバッファ全部を使いきるようなサイズでの転送を行わないと、禁止事項に触れませんでしたから。


しかし、ST-V ではカートリッジを使い、このバッファよりずっと大きなメモリを転送できます。

そして、まさにそれをやっていました。VRAM 上のテクスチャを、全部一気に転送していたのです。


デモ中の画面転換シーン、乱入されたとき…停止した場所は、特に画面が急変するため、多くのテクスチャを送っているシーンでした。


メインプログラマー氏は、DMA 転送の指示を分割し、1回で転送していたのを 10回程度に分けるようにしました。

この程度であれば、速度の低下はほとんどありません。


そして、この後はエージングしてもバグは再発しませんでした。

どうやら、推察した通りの原因だったようです。



でも、こういうバグって、原因も「多分」だし、治ったかどうかも、確率問題だから確認しようがないんですよね。

締切も近かったので、本当にこれで正しいのか不安だった記憶があります。



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海外版  2015-07-15 17:16:59  業界記

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ファイナルアーチの話は、これで最後。


このゲーム、Super Major League というタイトルでアメリカ版も発売されました。

もちろん、球団や選手名などは、アメリカのメジャーリーグのものになっています。


「データ変えるだけだから簡単でしょ?」って言われて対応することになったのですが、これがまた、一苦労。


アメリカの球場って、日本の球場みたいに左右対称になっていないのが普通なのね。

立地条件などの都合で、いびつな形になっていて、右に打てば簡単にホームランになるけど、左だとダメ、とかなってる。


日本人はこういうのを見ると「公平じゃない」と考えてしまうのだけど、元々野球はショースポーツ。

公平かどうかなんて、どうでもいいんです。大切なのは、ショーとして盛り上がるかどうか。


形がいびつだから、球場ごとに選手の得手不得手が出る。

ピンポイントに狙って打つ技量のある選手が、ちゃんとホームランになりやすい方向に狙って打ったりすると観客は盛り上がります。



でもね、ファイナルアーチでは、球場は左右対称、という前提でポリゴンデータを削減していた。

いびつな形の球場を入れるために、データ構造から見直す必要が出ました。


さらに、日本ではユニフォームは「ホーム」と「アウェイ」の2種類しかないのに、メジャーリーグだと「オルタナティブ」を含めて3種類ある。


プロ野球は、それぞれ自分の所属するチームの球場を持ちます。

自分たちの球場でプレイする場合は、ホームのユニフォームを、他の球場に遠征するときはアウェイのユニフォームを着ます。


これが、大リーグではもう一種類あるのです。

基本的に「ホーム」の扱いなのですが、イベントの際に特別に着たり、相手チームのアウェイユニフォームと柄が似ている時に着たり。


地元球団の試合を良く見に行くファンにとっては、地元球団は「いつも同じユニフォーム」になりがちです。

それを、時々変えてファンを楽しませる。こんなところも、ショービジネスであることを徹底しています。


#最近は、日本でもオルタナティブユニフォームを用意する球団が増えているようです。


これはどうしたのだっけかなぁ…

結局、ゲーム上では「特別イベント」などは存在しないから、入れなかったかもしれない。

実は各球団のユニフォームを変えるのが一番テクスチャ量として多かったので、入れたとしたらデータ容量が跳ね上がっていたでしょう。


ただでさえ、メジャーリーグの球団数は日本よりも多いですから。




そういえば、メジャー版を作るときには、球団数が多いのも問題になっていました。

ファイナルアーチには「トーナメントモード」というのがあって、何試合もして優勝を目指すストーリーになっているのね。


たしか、同じリーグ内の他の球団と戦う。

最初から戦うと大変なので、8回表、3-2で負けているところからスタート、とか、シチュエーションが決まった状態からの戦い。


日本の場合、6球団で戦って、3回勝ったら優勝、ではなかったかな。

(勝ち進んでも、コンティニューになる。最後までに300円必要)


ところが、アメリカだとアメリカンリーグで14球団、ナショナルリーグは16球団あるのですね。

トーナメントを作るにしても、5試合こなさないと優勝できないことになる。


…と思ったら、メジャーでは同じリーグでも「地区」が別れていました。

それぞれが、西・中・東の3地区に分かれ、同じ地区・同じリーグの球団と戦うのが基本。


そんなわけで、戦う必要のあるチームは、6~4球団でした。

これで、日本とほぼ同じ設定が使えました。




結構調整個所が多くて、ファイナルアーチは6月にはリリースしていたのに、米国版は冬になってしまったような覚えがある。


シーズン終わっちゃったよね、という話をしていて、でもアメリカは冬でも野球をやっているらしいから大丈夫、と企画の人が言っていました。

なんでも、冬に行われるリーグは「ストーブリーグ」と呼ばれるらしい、と…


今考えると、完全に勘違いしていますね。

今は「ストーブリーグ」って日本でも使う用語だけど、20年前はそんな言葉使われてなかった。


これ、試合のない冬に、ファンがストーブに当たりながら、来期はどうなるのか想像を膨らまして楽しむ…という意味合い。

実際のリーグ戦を行うわけではありません。


繰り返しになりますが、誰一人野球に詳しくなかったんですよ。まして、メジャーリーグなんて知らない。

野茂がメジャーに移籍して話題になったのが 1995年(このゲームの発売年)でしたが、まだ「日本人がアメリカで通用するわけがない」って冷やかにみられていたんですから。


#野茂は1995年にもそれなりに活躍して、野球好きの間では話題になりつつあった。

 でも、快進撃で誰もが知る存在になるのは翌年から。




ファイナルアーチ、家庭用には出なかったので、手元に置いておきたいなぁ。

人気あったわけでもないし、結構安値で中古販売されているのね。


でも、ST-V 基板って…案外高いな。基板だけあっても、筐体かコントロールボックスが無いと動かないし。

基板買う勢にはあまりなりたくないのだけど…



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別年同日の日記

13年 祝30周年

13年 ゲームの歴史・ファミコン以前


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バーチャファイター・リミックス  2015-07-16 15:22:08  業界記

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さて、もう20年が過ぎている、1研で作っていたゲームの話を。

以前も書いたけど、同じ部署で作っていたと言っても僕は近くで「見ていただけ」なので、それほど詳しくは知らない。


まず、バーチャファイター・リミックスから。

1995年4月にはリリースされているようです。


サターン版は、「非売品」として、100万台達成記念のキャンペーンとして本体に同梱され、6月 16日から販売されています。


基本的にバーチャファイターと同じソフトですし、欲しい人はもう持っているはず。

だから、同梱だけで十分…というのは、悪くない判断に思える。


でも、単体発売してほしい、という声も多く、7月14日に単体販売されています。




サターン(以下SS)に移植されたバーチャファイター(以下 VF)は、AM2研によるものでした。

ハードの最終仕様の「詰め」と同時並行でプログラムしていったようで、開発期間も短い中で良く作ったと思います…が、SS の機能を活かした、とはちょっと言い難い。


当時の雑誌記事によれば、V60アセンブラのソースから SH2 に変換するコンバータを作り、MODEL1 には存在してサターンには存在しない「3D変換器」部分を、サブ SH2 で肩代わりするようにしたものをベースに、さらに細かなチューンを施していったもの、でした。



十分出来は良いのだけど、テクスチャ貼ればもっときれいに出来るはずだよね、という話題が、重役会議で出たようです。

ST-V は「NEO-GEO と同じ市場を狙う」という計画も当時はあったので、駄菓子屋向けVF、という狙いがあったようです。


当時すでに MODEL2 の VF2 が出ていましたが、基板が非常に高かった。

大人気ゲームだったけど、とても駄菓子屋には置けない。でも、駄菓子屋は NEO-GEO の格闘ゲームが人気だった。

じゃぁ、VF2 っぽい、安いソフトがあれば売れるだろうという読み。


ハングオン Jr. …って思い出した人は、大体そういう考え方であってます。




もちろんそんなもの、AM2研は作りたがらなくて、「会社が必要とすればやりますよ」の AM1研が引き受けることになりました。


SS 版 VF は、ポリゴン数を減らしたと言っても、まだ「ポリゴンで」細かな表現をしていました。

これを、さらにポリゴンを減らし、代わりにテクスチャで表現するようにします。


ここら辺は主にデザイナーの仕事。


最大にポリゴンを減らせたのが、ステージ。床の部分です。

SS 版は業務用と同じように、細かなポリゴンの組み合わせで表現されていました。

しかし、SSの能力ではポリゴンが表示しきれないことがあり、床という大きなものが欠けて表示されるのは性能が低い印象を与えていました。


SS には、回転 BG 面があります。

以前に書きましたが、「回転」と呼ばれているだけで、実は自由変形可能。

でも、制御できることが多すぎて、当初は使いこなされていなかった機能です。


VF リミックス作成にあたり、床を回転BG で作り直しました。


これ、元の SS 版 VF には全く存在していなかった機能を追加したわけで、プログラマーは結構大変だったみたい。

回転BGだけだと、床の端の処理で破綻することがわかってポリゴン追加したり、試行錯誤してました。


SS版 VF は、本体と「同時発売」と決まっていたため、開発期間が十分でなく、バグが多数残されていました。

もちろん、ゲーム進行上問題となるようなバグは残っていませんが、そうでないバグは多数あったのね。


テクスチャマッピングしただけでなく、これらのバグを全て解消し、処理の無駄をなくしてブラッシュアップしたのが、VF リミックスでした。




VF リミックスは駄菓子屋用に作ったはずなのだけど、結局駄菓子屋ロケには進出していません。


作った物だから売らなくてはならなくて、ゲームセンターで VF2 の隣に置かれたりしました。

VF2 は 200円、リミックスは 100円、という値段設定ね。安いからリミックスで遊ぶかというと、高くても VF2 で遊ぶ人の方が多い。


これは、社内体制がちぐはぐだった為の悲劇だと思っています。

重役は「駄菓子屋などを開拓する」と息巻いているのだけど、そのための体制づくりは何一つやらなかったのね。


それ以前から、営業には売り上げベースで重いノルマが課されていました。

駄菓子屋ロケを苦労して開拓しても、安い ST-V を1つ仕入れて終わり。ゲームの交換なんてしてくれないでしょう。


それよりも、高価な MODEL2 を購入してくれるゲームセンターに売り込んだほうがいい。

ST-V も、新たな販路を開拓するわけではなく、ゲームセンター向けの販路を活用して売った方が効率が良いのです。




VF リミックスを作った人たちが、そのままサターン版も作成していました。


そして、サターン版完成後に、「PAL 版も作って」というリクエストが来たようです。

なんだか古い感じのテレビ(PAL信号入れられるのがそれしかなかったようだ)を持ち込んで、調整していました。


ヨーロッパでは当時は家庭用の放送が PAL (50Hz) でしたが、ゲームセンターでは日本やアメリカと同じ NTSC (60Hz)の機械を使います。

ST-V だって、ヨーロッパで 60Hz のまま動いている。でも、サターンはさすがに PAL なのですね…


60Hz で動いていたものが 50Hz になるので、全体にスローモーションになっていました。

そして、画面解像度は少し上がります。ポリゴンは元々計算で出しているので良いとして、ビットマップで書かれた文字などが、みんな微妙に引き延ばされて汚くなってる…



納得いかないけど、開発費用も余りかけられないし、これで完成、と言ってました。


…今気になって調べたら、元の VF も PAL 対応してますね。


文字などが汚くなってスローモーション、というのは、実は元の SS 版 VF PAL 版の仕様なのかもしれない。

ここのところ、詳細は知りません。



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別年同日の日記

02年 デジタル放送

16年 ダン・ブルックリン 誕生日(1951)

23年 報国寺


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エジホン探偵事務所  2015-07-17 17:32:02  業界記

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この年は 7月にまとめていくつかソフトを出していたようです。

まぁ、夏休み前だから投入タイミングではあった。


「エジホン」は、Popteen という女子高生向け雑誌で人気のあったページ。

単行本化もされています。


絵の中に字を入れている。絵に対してお話が書いてある「絵本」ではなく、絵の中に字が入った「絵字本」というわけです。


絵は毎回有名アーティストが書いたもの。字は基本的に同じ1字をちりばめてあるのですが、1つだけ「似ているけど違う字」が入っています。


「金」の中に「全」がはいっていたりね。



まぁ、確かに面白いのですが、これを「ゲーム化」と言われて、割り振られた企画者は頭を抱えました。

雑誌の1コーナーとしては十分だけど、100円払ってもらうゲームになるのでしょうか?




企画者は同期で、割り振られたプログラマも同期。デザイナーも同期でした。

つまり、簡単そうなゲームだから若手だけで作れ、ってそういうことですね。


#絵が中心のゲームなので、後からデザイナーは増強されベテランも入りましたが、中心となったのは同期


でも、企画者は上手に「100円の価値があるゲーム」を作り出した。

今でも「結構好き」という人は多いゲームです。



まず、元は「本」だから、間違っているところは常に同じ。

テレビゲームなので、遊ぶたびに間違っているところが変わるようにしました。


とはいっても、絵に溶け込んだような手書き文字が多いので、完全に自由に変えられるわけではない。

1枚の絵について5か所位づつ、間違いの場所が変えられるようになっているだけ。


ゲーム自体の難易度は低めなのですが、2人プレイで競うのが楽しいようにしました。

間違いを見つけたら、カーソルを合わせてボタンを押すだけ! という簡単操作なのですが、このカーソルが「ぶつかる」のですね。

相手にぶつけて邪魔したり、単純に見つける以外の部分でテクニックを要求される。


そして、ゲームの合間にミニゲームが入っています。

こちらは、タントアールのような単純なミニゲーム。


AM1研はタントアールで、「ミニゲーム集」の先鞭をつけた部署です。

でも、実はタントアールって、相手との直接的な対決はありません。


タントアールは「パズル&アクション」です。

直接対決するようなものではなく、時間内にパズルが解けたかどうかを競うだけ。

それでも十分盛り上がるのですが、エジホンは、先に書いたようにカーソルがぶつかったり、ミニゲームでも必ず「勝敗」が決まったり、直接対決の色合いを濃くしています。


エジホンはその「気軽さ」でタントアールと良く比べられるのですが、違った面白さを求めた作品でした。




完成したゲームが「エジホン探偵事務所」。

Youtube に実況ムービーがあったので、引用させてもらいます。



上のムービーを再生するとデモ画面から始まるのだけど、このデモの「絵柄が怖い」という人多数。


企画者によれば、元々単行本に載っていた絵が個性に溢れすぎていて、それらをまとめるキャラとしては「どれよりも濃いもの」を必要とした、とのこと。

そのために、何か濃い絵柄のタッチで絵を描いてみて、とデザイナーに頼み、デザイナーはまずデモ画面に出てくる絵を油絵で描いてみた…と言うところから始まった模様。


#何度も書きますが、直接知っているわけではないので多少間違いがあるかも。


テモナ君、メル子ちゃん、ラフランチ・モショ郎先生…って、名前も謎すぎる。


モショ郎ってフランス人? と企画者に訊ねたことがあります。

ラフランチ、って名前がそれっぽかったし、金髪だし。


「え? どう見ても日本人に決まってるじゃん!」と、明確な答えが返ってきました。

どう見ても、って、分からないから聞いたのだけど。


いや、コイツのセンスは好きなのだけど、いつも常人には理解しがたい設定を持ってくる。


デカリスの人です。




ゲームシステムが大体完成したところで、本から画像を取り込んで、修正したりする作業は多くのデザイナーが参加します。


そして、デザイナーの何人かは、オリジナルの絵も描いて入れました。

「エジホン」の絵はどれも個性的なので、思いっきり自分の絵柄を出してよい、という条件で。


この時、ファイナルアーチにも参加したデザイナーの先輩のオリジナル絵柄を初めて見ました。衝撃だった。

男らしい人なのだけど、すごくかわいらしい絵を描くの。

ネットで多少人気のある絵師(当時はこの言い回しは無かったけど)だった、と後で知りました。




エジホンが後のサターン版では「ゲームウェア」という雑誌に入れられた、というのもまた有名な話。


なんか、サターンをメディアとする雑誌を作りたい、という相談があって、部長が「自由に使っていいよ」と快諾してしまったんですね。


企画者は、サターン版が発売されると思っていたので、ちょっとかわいそうだった。


でも、結果的に多くの人に遊んでもらえたのかな。

「雑誌」という扱いで、単体発売するより安くできたから。



ゲームウェア、エジホンが遊びたい人が結構買ってくれたようで、売れたようです。

でも、第2号は全然売れない。エジホンが入ってなかったから。


そこで、急遽エジホンは「連載」となります。

3号以降、絵を差し替えて発売されたようです。


でも、こちらは元ゲームの開発者はノータッチ。


エジホンが好きな人のページによれば、1が一番面白い、とのことで、やっぱ企画者の手元を離れて、別の作業者が絵を差し替えるだけでは魂が入っていなかったのかもしれません。



さらに、セガカラ…サターンを使ったカラオケシステムにもおまけゲームとして作られています。

こっちは、元ゲームの開発者が作業していましたよ。


「マイクを奪い合うゲーム」を入れただけだけどね…

本編にあった、賞金を奪い取るゲームのキャラクター変えただけね (^^;




余談:


ラフランチ・モショ郎先生は、初級編ゲームの最後で謎の踊りを踊っています。


初めて見た時に、「なに? この変な動き」と言いながら動きを真似したら、企画者にとても驚かれます。


「人にはできない奇妙な踊り、ってリクエストして描いてもらったのに、完璧な動きだ!」と。


そして、僕は「ラフランチ・モショ郎を名乗ってよい」と企画者から公式に許可を与えられました。

一度も名乗ったことは無いけど。



2016.11.27追記

サターンを十数年ぶりに引っ張り出して、エジホンを遊びました。

で、急に思い出したので追記。


エジホンでは、プレイヤーは間違いを探すカーソルを動かします。

このカーソル、探偵が使う拡大鏡(ルーペ)という設定なのだけど、1P側のカーソルは「アヒルーペ」という名前だった。


…どうみても、アヒルではなくてヒヨコなんだけど。

上に書いた通り、謎のキャラ設定をしてくる奴が作ったゲームなので、こんな部分も意味不明。


ちなみに、この名前は企画者が設定していただけで、多分どこにも公表されていない。



2P側はお花(チューリップ)なのだけど、この名称が思い出せない…

誰かご存知の方(公表もされてないのに)いましたらご連絡ください。


2018.10.15追記

webarchive に企画者本人が後で語った話が残ってました。


画像は一部しか残ってないけど、虫眼鏡の名称は「アヒルーペ」と「ムシメガネコ」だったようです。

ただ、これは企画書段階ですね。この段階ではちゃんとアヒルだし。


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インディ500  2015-07-21 19:24:14  業界記

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3Dゲームの初期ヒットタイトルは、自動車を運転するレース・ドライブものでした。


ポールポジション、TX-1、アウトラン、ファイナルラップ、ウィニングラン、ハードドライビン…


「3Dシューティング」も常に同時代の技術で作られてきましたが、大抵最初はレースもの。

人間にとって、自由空間を「飛行」するよりも、重力に縛られて「走行」する方が、ゲーム内容が把握しやすいためです。


さて、MODEL1 の最初はバーチャレーシング、MODEL2 の最初はデイトナ USA でした。

この2つは大ヒットゲームとなり、他の部署にも「それぞれレースゲームを作れ」という命令が下ります。


#正確なところは知らない。

 もしかして各部に命令が下ったのではなく、2研に続いて3研も「セガラリーチャンピオンシップ」をヒットさせたので、1研もなんか作れ、となったのかもしれない。




インディ 500 は、アメリカで人気のあるレースイベントです。


舞台は「インディアナポリス・モーター・スピードウェイ」。

単純な楕円形コースで、ドライブテクニックは活用できませんが、単純だからこそ高速で駆け抜けることができます。


一周2.5マイルのこのコースを、200周すると 500マイル。

これがインディアナポリス 500マイルレース。通称「インディ500」です。


テクニックではない、とにかくマシンパワーの勝負。

もちろん、パワーに負けない強靭なドライバーも必要ですし、パワーのあるマシンを作るメカニックの腕も必要。


長距離の勝負なので、燃料補給やタイヤ交換も重要。

日本では、モータースポーツは「ドライバー」の腕前に注目が集まりがちですが、インディ500は、パワーのあるマシンを作り上げ、使いこなすチーム戦が見どころなのです。




インディ500はビッグイベントで、多くのお客さんが集まります。

それを目当てとした移動遊園地なども来ますし、仮設のゲームセンターなんかも作られます。


そこで、バーチャレーシング(VR)が「インディカーゲーム」として置かれていたのだそうです。

VR は F1 で、インディとは厳密には違うのだけど、車の形は似たようなものだからね。


でも、これを見たセガのアメリカ法人から「正式にインディ 500のゲームを作ったほうがよい」というリクエストが来ます。


先に書いたように、各部でレースゲームを作れ、という命令と組み合わさって、AM1研がインディ 500 のゲームを作ることになりました。




でもね、先に書いたように、インディ 500 ってマシンパワーと、そいつを扱える強靭な肉体を競う側面があるのよ。

「小手先のテクニックではない」ので、小手先のテクニックを競うテレビゲームにはしにくい。


ゲームのインディ 500 では、インディ 500 と言いながら、楕円以外のコースも入っています。

そうでないと、ゲームとして面白くないもの。


インディ 500 なので最高時速は高め…といっても、これもゲーム上では数値が変わる程度で、あまり体感しにくい。

何もかも、バーチャレーシングの焼き直しみたいに見えてしまう。


実際、あまりヒットはしていません。よく出来たゲームではあったのですが。



バーチャレーシングが1992年8月発売。インディ500は1995年7月発売。


VRはわずか3年前で、まだ店舗でも稼働していました。


しかもその3年で、デイトナUSAと、セガラリーも発売になっています。ナムコからもリッジレーサー、リッジレーサー2、そしてインディ500と同時期に、レイブレーサーが発売されています。


レースジャンル市場自体が飽和していました。

そこに食い込むには、アメリカでは人気だけど日本では知名度が足りないレースのゲームは、ちょっと難しかったと思います。





好きだった人は多いようで、Youtube には沢山の動画があります。

でも、エミュレータ動画ばかりなんだよね (^^; 実機から録画、というのは無いみたい。


そして、エミュレータだとまだ再現度が低いようで、文字などのテクスチャ部分が、結構チラつきます。

本物はもっときれいに表示しているのだけど。



その「チラつく」部分のテクスチャは少し特殊なのですが、Indy 500 は、MODEL2 のゲームとしては「あり得ないほどたくさんの特殊テクスチャを表示している」らしい。

僕、MODEL2 のプログラムやったことないのでよくわからないのだけど。


インディカーレースはスポンサーもついているので、車体に沢山ステッカー貼ってたりします。

その雰囲気を出すために、車体に沢山ステッカーを張ってあるのだけど、これが地味に MODEL2 としては高等技術。



MODEL2 って、実はテクスチャがモノクロです。色の濃淡は付けられるのだけど、1枚のテクスチャの中で全く違う色は使えない。

そこで、違う色を付けたい個所には、テクスチャを重ね張りします。


実は、この「重ね張り」は、透明が使える特殊なテクスチャ。テクスチャ容量が小さく、多くの種類を描くことはできませんでした。


インディ500ではこの特殊テクスチャが非常に多く使われている…と、開発中にたまたま画面を見た、別の部署の方が驚いたのです。

それはもう、画面を見て驚くくらい、あり得ない量が出ていたらしい。


たまたま近くの席にいたのでこの時の説明が聞こえたのだけど、ドラクエの文字と同じようなことをしていたらしい。

つまり、16階調…4bit のテクスチャを、2bit * 2枚が重なっている、と考えて使いまわしているのです。


これで、定義量を2倍確保できる。


ちょっと聞こえた程度で詳しいことは知らないのですが、このテクニックは説明していた人が使い始め、後に他の部署でも使われていたみたい。




インディ 500の発売後しばらくたって、本社でファンイベントが行われました。

僕は関係ないんで、会場の外からちらっと覗いただけだったような気がするな。

あまり内容覚えてない。


確か、そこで大会が行われたはずです。

腕に覚えのある人(各地のゲームセンターで予選とかやったのかな?)を集めて、イベント用設定でのレースをやった。


8台対戦、負けている人へのサポートなしの「実力勝負」で、最大周回数の20周勝負、だったと思う。

本物みたいに 200周はできないけど、一番本物のレースに近い設定。


実は、この設定での対戦は、そのイベントの時まで1度も試されていませんでした。悪い予感しかしない…



一応、走っている間にタイヤがすり減ることをシミュレートしています。

すり減るとグリップが悪くなる。カーブが曲がりにくくなるし、スピードを落とした後の立ち上がりも悪くなる。


だから、どこかの段階でピットインしてタイヤ交換した方が、交換時間のロスを考えても有利になる…はず。


この事は、チームの人からもレース前に説明されていました。



本物のレースなら、ピットインしなければ燃料も無くなりますし、タイヤバーストの危険もあります。

でも、ゲームでは燃料は考慮してないし、タイヤバーストもない。

それだと、ピットインしなくてはならない、という強い理由が存在しない。



結果どうなったかというと、誰もピットインしようとはせず、滑りやすいタイヤで何とかカーブを曲がりきる、というチキンレース展開になりました。

オーバルコースを慎重に走るだけで、駆け引きのない盛り上がらない展開。


それでも、優勝者には何か記念品が渡されたはずです。確か。




バーチャフォーミュラ筐体用の特別バージョンも作られました。


バーチャフォーミュラは、バーチャレーシングの特別仕様。

本物のフォーミュラーカーを模した筐体に乗り込んで遊び、カーブなどでは筐体が動きます。


多少小さく作られているとはいえ、座席だけでなく「車」そのものを並べることになるので、非常に広い面積が必要。

筐体自体もバカ高く、ほとんど売れなかったはず。

(8台通信筐体で、およそ1億円。八景島シーパラダイスにあったのは覚えているのだけど、ネットで調べても他に存在した情報が見つからない)


にもかかわらず、MODEL2 が発売されてしまうと、MODEL1 で作られたバーチャフォーミュラは見劣りしてしまい、稼働率が下がっていました。

すごく高価なものを購入した店舗からは、何とかしてほしいという悲鳴が届いていました。


そこで、MODEL2 のインディ 500に変更できるようにしたのです。

基板が変わるからそれなりに高価なのだけど、1億円の機械の改造費だと思えば…


#MODEL2 1台 100万円ちょっとしたので、8台通信なら改修費1千万円程度。



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別年同日の日記

02年 仕事で忙しい

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10年 夏風邪とポケモン

13年 カガクのココロ・ふたたび


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【まつしま】 バーチャフォーミュラ、4台通信バージョンだったら当時バイトしていたSEGAのゲームセンターで扱ってました。料金設定が高額だったこともあってほとんどプレイされてなかったのが悲しかったです。 (2015-09-08 20:25:46)

モニ太とリモ子のヘッドオンチャンネル  2015-07-29 16:59:04  業界記

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こちらは発売しなかったゲーム。ロケテストは、1995年の早いうちではなかったかな。

手相のリリースよりも後にロケテストやったような気がする。


ロケテストにもいろいろな目的があるのだけど、「開発途中で感触を確かめる」ものではなく、完全完成後の、どの程度お金が入るかの調査。

だから、途中で開発中止と言うのではなく、完全に完成していたのに発売中止。


開発開始の経緯がそもそもよくわかっていないのですが、重役が「最近のゲームは複雑すぎるから、昔のゲームみたいに、もっと単純なものが必要ではないか」と仰ったようです。


それが、上から下に伝わる間に伝言ゲームが発生し、「昔のゲーム」が具体的に「ヘッドオン」になり、末端に伝わった時には「ヘッドオンのリメイクを作れ」になっていた。


冗談みたいだけど、時々こういうことが起こる会社でした。



グラフィック1名、プログラマ1名、企画は掛け持ちで1名、だったかな。

「ミニマムプロジェクト」だと言われていました。


#音楽は、開発終盤になって割り当てられ、短期間で仕上がりますから、ここには数えていません。


作っていたプログラマの人、上司から「次は夢の一人プロジェクトを」なんて冗談も言われていました。


#いや、これ言われていたのは別の人だったかもしれない。記憶が定かでない。

 実際、この当時は企画で、同人誌描く程度には絵が上手かった人が、後でプログラムに転向してんだよね。

 その人なら一人プロジェクトも可能だったかも。




基本内容はヘッドオンです。リメイクだからね。


パックマンみたいにドットを全部取るゲームなのだけど、パックマンほど自由に動けない。


自機は車なので勝手に前に進みます。速度を上げることは出来る。

そして、ところどころにある「車線を変えられる」ゾーン以外では、道を変えることもできません。


同じくヘッドオンを元に作られている、ドットリ君よりももっと不自由です。




当時タントアールが売れていましたし、狙いもタントアールと同じ「あまりゲームを遊ばない層」でした。

だから、タントアールと同じノリで作られています。


面ごとにサブタイトルが付いていて、全部ダジャレ。

このダジャレが、有名テレビ番組のパロディになっているので、「ヘッドオンチャンネル」。


モニ太とリモ子の、っていうのは、2人同時プレイできて、車に男の子と女の子が乗っている絵になっていたのね。

もちろん、テレビネタなので「モニター」と「リモコン」にかけています。


各面のサブタイトルはよく覚えていないのですが、たしか、爆弾を全部拾わないといけない「大量に燃えろ」(元ネタ:太陽にほえろ)とかあったな。


たしか、ドットも、1度でとれるわけではない。

通るたびに状態変化して、最後にやっととれたりするのではなかったかな。


「大量に燃えろ」の面では、爆弾に火がついていて、1度通ると消える。そして、2回目で回収される、という感じ。


サイコロの目がカウントダウンして行って、1の後に消える面がありました。

これ、「転がって別の目になる」アニメーションがあって、通った後に連続して動くのが美しかった覚えがあります。



システムC2(メガドラ互換基板)を使っていて、小気味よく動いていました。

ゲームとしては悪くない…いや、面白いゲームでした。




同期の企画がふたり、このゲームを延々とテストプレイしていました。

このゲーム、先に書いたように二人同時プレイできたのね。


そして、昔のヘッドオンと同じく、パターンの組めるゲームでした。

二人でひたすらパターンを組み上げていった。



ロケテスト前には、完全なパターンを完成していました。


二人同時プレイで、30分弱で全面ノーミスクリアできます。

得点も、ボーナスなどすべて取り、理論最高得点だと思われた。


時間的に、昼休みに遊ぶのにちょうどよく、良く遊んでいたのを横で見ていました。


#上手な人のプレイは横で見ていても面白い。



ロケテストの結果が悪くて発売中止が決まった時、作成したチームの人はもちろん、この二人もガッカリしていました。

えー、こんなにおもしろゲームなのに、なんで発売できないの? と。


発売中止と決まってからも部署内のテストプレイ筐体にしばらく入っていたので、名残惜しそうに二人で遊び続けてました。




しかし、やっぱパックマンより古いゲームは、どんなにリメイクしても「古臭い」のですね。

100円出して遊ぶなら別のゲームを、ってなっちゃう。


それに、パターン組んだら延々と遊ばれてしまう、というのも本当は良くないのです。

1プレイ平均3分、というのが基本でしたから。


ロケテスト前のわずかな期間で攻略パターンが組めてしまう、と見せてしまった二人は、実は発売中止に加担してしまったのかも。



家庭用のミニゲーム集の中の一つだったりしたら「良いゲーム」だったのでしょうけどね。




2021.1.8 追記


没ゲームに今更資料が出てくるとは思わなかったが、詳細を入手できたので…

ゲーム内容について、多少の事実誤認がありましたので訂正します。


すべてのドットは、1度通るだけで消えました。

本文中にあるような、2回通ってやっと消える、というようなものはありません。


ただ、爆弾に火がついて爆発するとか、さいころが転がって1の目になるとか、そういうアニメはありました。

さいころの場合、すべてのさいころが1になったら面クリアです。


面のタイトルは、爆弾や花火を消す「大量に燃えろ」のほかに、「鬼 Hey! ハンかチョウか」とかありました。

さいころはこの面ですね。


しかし、ダジャレにもなっていない面タイトルもあった…

「笑っていい雲」ってなんなんだ。


(雷様が敵で、雲を消して回るのだが…)



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別年同日の日記

09年 冷蔵庫に乾杯?

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24年 誕生日


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人材交換  2015-08-13 16:59:54  業界記

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これはこぼれ話。

結構有名な話ですが、僕もうわさに聞いただけなので真偽のほどは定かでないです。


「3研はセガラリーを作った」と先に書いたのですが、この開発スタッフには、ナムコでリッジレーサーを作ったスタッフが参加していた、そうです。


セガラリー作成中は、僕は手相占いの締切直前でした。

セガの仮眠室は AM3 研と同じ階にあり、仮眠室前の廊下に、セガラリーのテストプレイ筐体が置いてあった。


会社に泊まった時は、寝る前と朝起きた時、1回づつセガラリーを遊ぶ、というのが日課でした。

(これでこのゲーム大好きになって、セガサターン版はレーシングハンドルと共に購入)




ナムコのリッジレーサーは、ドリフトしながら走る感覚を表現した、新しいタイプのレースゲームでした。

基本的には舗装路を走ります。


ゲーム上は「レース」ということになっていて違法性は無いのですが、公道を走る感じ。

当時、ドリフト族とか、峠族とか、公道でのレースが「暴走族」に変わって問題視されていた時代。


#頭文字Dの漫画のヒットは、もう少し後ですね。



セガラリーでは、ドリフトの感覚を「ラリー」としてさらに高めました。

砂利道、泥道、舗装道など、走っていてタイヤのグリップ感が違うのがわかる。

レースゲームとしてそれまでとは明らかに違うものでした。


で、この開発に、リッジレーサーのノウハウが伝えられていた、というのね。

開発の人が入ったのが事実として、それがどの程度影響があったのかなどは不明ですが、いきなり「高いレベルで」登場したセガラリーだから、信憑性のある噂でした。




一方、バーチャファイター2の人材がナムコに転職し、「鉄拳」の作成に関わったというのも有名な話。

こちらも真偽のほどや、その影響力はわかりません。


でも、鉄拳が他の「類似ポリゴン格闘」に比べて明らかにレベルが違ったので、こちらも信憑性がある。


同時期に期せずに起こった「人材交換」でした。



そして、何よりも信憑性を裏打ちするのが、このあとセガとナムコの人事部の間で交わされた密約でした。

ナムコは、セガから転職してくる人材を採用しない。セガも、ナムコから転職してくる人材を採用しない。


ゲーム作りのノウハウは一番の財産ですから、人材流出を抑えることがまず大事。


ナムコとセガは共に大手でしたし、立地も近く、互いに転職する人が多かったのは事実です。


そういう環境だから、簡単に人材が流出してしまう。

お互いに気軽に転職できない環境を作れば、人材流出を抑えられるのではないか。


…どうも、そういう判断だったようです。




この件、後にセガを辞めて転職を試みた先輩が、ナムコで「セガの人事部と協定があって」と断られコナミに行った、という噂を聞いて信憑性が高まりました。


でも、一番の信憑性の裏打ちは、後に「ナムコとセガが互いの転職者を受け入れない、という密約をしていた」という記事が新聞に出てしまったこと。

職業選択の自由に反する、と労基署から注意勧告を受け、この密約を破棄した、という記事でした。



鉄拳とセガラリーに、互いの人材流入があったか、僕は噂でしか知りません

しかし、その影響で交わされた…と噂された密約は、確かに存在していたようでした。



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