以前も書いた気がするネタだが、ネット見てたら悩んでる人がいたので、簡単に。
どちらも「伝統的な日付の切り替わりタイミング」の問題。
25日がクリスマスだから、夜御馳走しようと思ってたら、スーパーなんかはもうクリスマス撤収してお正月モード、と言ってる人がいた。
25日の夜は、もうクリスマスではない。
キリスト教はユダヤ教の宗派として起こった宗教だが、ユダヤ教は砂漠の宗教であり、日中は暑いため、日が沈んでから活動する。
そのため、一日の始まりは日没であり、次の日没までが「一日」になる。
クリスマスは、現代的には 24日の日没から、25日の日没までだ。
現代日本でも「朝ごはんはちゃんと食べよう」ということが呼びかけられている。
これは、一日の最初のご飯だからだ。一日の活動の源になるからだ。
同じ理由で、ユダヤ教では日没後の最初の食事を大切にする。一日の始まりだからだ。
ところで、英語では「夜」はイブニング。
だから、クリスマスの夜を現代では「クリスマスイブ」という。前日の意味ではなく、クリスマスの夜だ。
クリスマスのごちそうは24日の夜(クリスマスイブ)に食べるもの。25日の夜はもうクリスマスではない。
余談だが、「イブ」は、2つに分けたときの「もう片方」だと考えていい。
昼に対しての夜が evening だし、対等であれば even だし、男の肋骨から作られたもう一人の人間が eve だ。
もうすぐお正月だけど、初夢は 12/31~1/1 の間に見た夢か、1/1~1/2 の間に見た夢か、と言っている人がいた。
12/31~1/1 の間は、まだ「旧年中」だ。初夢ではない。
日本においては、日の出が一日の始まりだった。
当然、年の切り替わりも「初日の出」の瞬間だ。
昔の人は、今みたいに夜に明かりをつけて活動なんてできない。
ろうそくや行灯はあったが、高価なものだった。
だから、夜が更けたらさっさと寝てしまう。そして、朝は空が明るくなってきたら起きて活動する。
空が明るくなる時間というのは、まだ日の出前だ。
そして、日の出を拝んで、一日の活動が始まる。
つまり、日の出の瞬間にはもう起きていて、夢を見るのはそれ以前。
だから、この夢は「前日」の夢なのだ。
初夢も同じ。
12/31~1/1 の間に見た夢は「旧年中」であり、1/1~1/2 の間に見た夢が「初夢」だ。
「あけましておめでとう」という言葉も、「夜明け」と共に使う言葉だ。
現代的には深夜 12時で年が変わることになっているが、この段階ではまだ「あけて」ない。
深夜から初詣に行く人がいるのだが、その時点では明けてないので初詣ではない。
ただ、江戸時代から「2年参り」と言って、年明け前から初詣を始める人がいた。
その風習が今でも続いているのだ、と考えれば、深夜 12時から初詣を行うのはあながち間違ってはいない。
余談だが、「元旦」という言葉は、初日の出の瞬間を意味する言葉だ。まさに年が明けた瞬間。
「旦」は地平線から日が昇っている、という象形文字だ。
(厳密には、絵を元に作った文字ではなく、文字の意味を組み合わせて作った会意文字)
もう一つついでに。
これは、ネットで知って「へー」と思った知識。
今年の「冬至」は12月22日だった。
冬至というのは、一日の「太陽が出ている時間」が一番短い日だが、地球の公転軌道上に「冬至点」が設定されており、地球がそこに到達した日が冬至となる。
今年、冬至点に到達した時刻は、日本時間で 12月22日の 0時3分だったそうだ。
だから「日本では」22日が冬至。
これが、隣の中国では時差の関係で、12月 21日の 23時 3分となる。
だから、中国では 21日が冬至。
なるほど。地球が「冬至点」に達する瞬間は世界中で同時だけど、その時の日付は国によって違うわけか。
言われてみれば当然だが、考えたことがなかったので新鮮な驚きでした。
ところで、正月もクリスマスも、冬至を超えたお祝だ。
厳しい冬はこの日が「底」で、後は日が伸びて温かくなっていく。
正月は、日本では太陽太陰暦を使っていた関係で、冬至後の最初の新月の日から始まるものだった。
その意味では、冬至と正月は最初から別物だったが、まぁ日付は近かった。
今は太陽暦(グレゴリウス歴)になったので新月の日に始まるわけではないが、冬至のすぐ後に正月が来る。
クリスマスは、太陽神を崇拝するミトラ教の教えで、弱りゆく太陽がこの日を境に復活する、「神様の誕生日」が元になっている。
キリスト教は偶像崇拝や祭りを禁止したのだが、楽しい祭りをやらない宗教、というのは布教に苦労した。
そこで、当時人気のあったミトラ教の「神様の誕生日」を「キリストの誕生日」と言い換えて取り込んだ。
(キリストの本当の誕生日は8月だ)
昔から使われていた暦は非常に不正確で、毎年のように日付がずれていった。
時々調整を入れても、不正確で不便。そこでユリウス暦が考案される。
とはいえ、このユリウス暦も、それまでの暦から移行しやすいように「冬至に一番近い月替わり」を1月1日として開始した。
この時点で、冬至は 12月25日だった。これが、クリスマスが 12月25日である理由だ。冬至のお祝だ。
しかし、当時としては驚くほど正確だったユリウス暦も、100年に1日ほどずれた。
長い年月の間に、クリスマスと冬至は別の日になってしまった。
ローマでは、新しくグレゴリウス歴が導入され、暦のずれはほぼなくなった。
でも、ロシア正教はユリウス暦を使い続けた。
そのため、ロシア正教のクリスマス…ユリウス暦の 12月25日は、グレゴリウス歴の1月7日だ。ロシアではこの日にクリスマスのお祝をする。
(あくまでも「ロシア正教の」宗教ごよみであり、生活にはグレゴリウス歴を使用している。だからロシアの人は年明けの後にクリスマスを祝う)
ロシア正教は、20世紀に「修正ユリウス暦」を導入した。そのため、これ以上グレゴリウス歴とずれることはない。
そんなわけで、冬至と、クリスマスと、新年は非常に近い間に連続する。
元々同じお祝だったのが、様々な理由で分離したのだ。
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