2015年02月17日の日記です


クリストファー・レイサム・ショールズ 命日(1890)  2015-02-17 11:29:28  コンピュータ 今日は何の日

今日は、クリストファー・レイサム・ショールズの命日(1890)。


PCをお使いの方は手元をご覧ください。

その、QWERTY配列キーボードを考案した人です。


実は3日前のバレンタインデーが彼の誕生日(1819)だったのですが、ENIACの公開日、という大ネタもあったので命日の紹介となりました。




彼は新聞編集者で、多数の新聞の編集長を務めています。

同時に、郵便局長・税関・土木事業局理事などの公職も歴任。


恐らくは、とても事務仕事が多かったでしょうし、とても多忙だったでしょう。

そんな中で、ペンを使って手で書くよりも早い筆記具を研究し始めます。


当初はピアノの鍵盤のような形状だったようです。

それが改良されて現在のQWERTYになっていく過程に関しては、Wikipediaを読んだ方が、僕が書くよりずっとわかりやすそうです。




1882 年には現在とほぼ同じ配列のタイプライターが完成します。

この発明はレミントン社に持ち込まれ、商品化されます。


このレミントン社、吸収合併の歴史の繰り返しもあり、簡単には説明できません。

これもWikipediaを見てもらったほうが良さそう。



レミントン社は後にレミントン・ランドとなり、ENIAC を作成したエッカートモークリーを迎え入れ、UNIVAC I を作り出します。

世界初の商用コンピューターでした。


もちろん、このコンピューターはQWERTY配列のキーボードで操作することが可能でした。




さて、一足飛びにコンピューターの話に入る前に、タイプライターの進化をざっと書いておきましょう。


話はモールス信号の実用化まで遡ります。

当初は、通信士が通信文をモールスに変換して送信し、受信側の通信士が元の通信文に戻していました。


しかし、これでは訓練された人員が両側に必要です。

訓練なしに文字を送れるように、「文字」を直接送れるようにした「テレプリンタ」がすぐに開発されます。


ピアノ状のキーボードを使い、押したキーに対応した文字が相手側で印刷される、という仕組みでした。

タイプライターは、当初はこのキーボード配列を流用し、後には独自に使いやすいキーボードを考案して作成されたものです。



タイプライターの発明時点では、キーを押すことで直接活字が動き、紙に印字する機構になっていました。


紙に活字を叩きつける必要があるので、結構力がいります。

人差し指で押すキーと小指で押すキーでは、力が違うのでインクの濃淡があり読みづらい、等の問題もありました。



少しして、キーボードは単に「スイッチの集まり」になり、電気の力で活字を打ち付ける方式が登場します。

電動タイプライタです。


こうなると、キーボートと印刷機が目の前にある、というだけで、テレプリンターシステムと何ら変わりのないものになります。

実際、遠隔地と結ばれた電動タイプは「テレタイプ」と呼ばれ、すぐにテレプリンタを置き変え始めます。




電動タイプには、入力したキーを紙テープに記録できる機種が作られ始めます。

この紙テープを「再生」すると、先の入力と同じように印字ができます。


タイプライターでは、間にカーボン紙を挟んだ複数枚の紙を使って、同じ文章内容の「複写」を作ることができました。

とはいえ、複写するときには特に強くキーを押す必要がありましたし、せいぜい2~3枚を同時に作成するのがやっとでした。


#カーボン紙で作られるコピーを「カーボンコピー」、略して CC と呼びます。

 電子メールで同時に複数人数に送る際の CC: 欄はこの意味です。

 念のため書いておくと、当時はコピー機の開発以前です。


紙テープによる再生は、カーボン紙を使わずに、同じ文面のコピーを可能にしました。

これなら、何枚でも同じ文面の書類を作ることができます。



紙テープの利点はそれだけにとどまりません。


タイプライターで1ページの書類を入力していると、当然「入力ミス」も発生します。

そんな場合はホワイトで消して修正するか、そのページを最初から入力し直すしかありません。


しかし、紙テープなら「間違えたところをハサミで切り取り、糊で繋ぎ合わせる」という編集が可能なのです。

紙テープが多少ツギハギになったところで、大切な「書類」にはその跡は残りません。


これは、書類作成事務を大きく変える大発明でした。




コンピューターが登場するのは、この紙テープタイプの普及後です。

「現代的な意味で」最初のコンピューターである EDSAC では、すでにタイプライターが活用されています。


…と言っても、電動タイプライタの印字部分を出力に使用できた、というだけです。

キーボード部分は一切接続されておらず、入力機器としては使用できません。


EDSAC では電話のダイヤルが取り付けられていて、0~9の数字が入力できました。


電動タイプライタの印字部分だけとか、電話のダイヤル部分だけとか、寄せ集め感満載です。


EDSACは大学が研究のために作ったもので、それほど潤沢な予算があったわけではありません。

だから、使えそうな民生品を流用して作った、という、それだけの理由でしょう。



ところで、先にリンクした Wikipedia のQWERTY配列のページでは、EDSAC にテレタイプが接続されていて、QWERTY配列だったことが書かれています。


テレタイプがプリンタとして接続されていたのは、上に書かれている通り本当です。

しかし、キーボードは使用されていないので、QWERTYであることは無関係です。


#Wikipedia の記述は資料に基づいたものなので、資料に誤りがあるのかと思います


#僕が勘違いしていました。記事の最後(15行くらい後)に訂正の追記を行います。




UNIVAC I がQWERTYで操作できた、というのは先に書いた通りです。

もっとも、こちらも基本的には EDSAC と同じで、紙テープの作成用と印字用、というのが中心的な使われ方。


それでも、キーボード部分が入力インターフェイスとして使えるように、UNIVAC I に接続されていたようです。

UNIVAC I は商用の、事務などにも使用されたコンピューターなので、文字の扱いも重視されていたようです。

(これ以前のコンピューターは主に科学計算用でした)


UNIVAC I 以前のすべてのコンピューターを調べたわけではありませんが、おそらくは UNIVAC I 以前にはQWERTYキーボードで操作できたコンピューターは無いのではないかと思います。



クリストファー・レイサム・ショールズがQWERTY配列を考え、レミントン社が権利を買い取り、普及させた。

そして、レミントン・ランド社になって、自社製のキーボードをコンピューターにも接続した。


どうやら、現在QWERTYキーボードがコンピューターに接続されているのは、こういう理由のようです。




2015.2.25 追記

上記、「資料に誤りがあるかと」と書いたところ、資料の著者の方から意図の説明がありました。



僕がちゃんと読み解けていなかった部分もありましたので、お詫びの上訂正し、解説します。


Wikipedia を改めて確認したところ、「インターフェイスとして用いた」という記述のみで、接続されているとは書いていませんでした。


これを読んで「EDSAC では接続はされていなかったはずだけどな」と思ってしまったのが僕の勘違いです。

EDSAC では、キーボードは接続されてはいなかったが、インターフェイスとして利用はされていた、というのが事実です。


実のところ、EDSAC に「接続された」タイプライタと同種のタイプライタが、別の用途で利用されていたこと自体は知っていました。

当初はその話も書いていたのですが、それは「EDSACの話」であり、この日記のテーマである「QWERTY」から外れすぎると考えて削除していました。



以下に詳細を書きます。

(EDSAC の話に偏ってしまいますが、不正確な記事の訂正のためですのでご了承ください)



EDSAC の命令コードは、1文字で表されます。

現代的に言えば、アセンブラのニーモニックです。


ニーモニックですから、コンピューターが理解できるバイナリコードに変換(アセンブル)しなくてはなりません。

しかし、EDSAC ではこのバイナリコードとして、テレタイプで文字をタイプした際に紙テープに記録されるコードをそのまま採用していました。


また、テレタイプで数値を入力すると、それはそのまま2進数表現となる文字コードになっていました。

1桁のみの2進数なので、BCD表記となりますが、BCDから2進表現への変換は、イニシャルオーダー(紙テープを読み込むためのプログラム)で解消されました。


つまり、アセンブリ言語で書かれたプログラムをタイプライターで紙テープにパンチすると、EDSAC で実行可能なプログラムとなったのです。



「インターフェイス」という言葉をどのような意味に捉えるかにもよりますが、これはQWERTYキーボードをインターフェイスとして利用してはいます。


ただし、紙テープの穿孔機としての利用であり、コンピューターに働きかけることはできません。

現代で考えるようなキーボード利用の方法とは、かなり性質の異なるものです。



いずれにせよ、Wikipedia の記述がおかしい、というのは僕の早合点でしたので、お詫びしたうえで訂正します。


2018.6.18

上の追記の指摘をくださった先生が、キーボードの成立過程を解説したページを作っていました。

面白いのでリンクしておきます





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あきよし】 補足ありがとうございます。ご本人からの解説で痛み入ります。
元文献を読まずに違うのではないかと書いたことは軽率でした。お詫びいたします。
一応紙テープのことは知っていたのですが、本文が長くなりすぎることを避けて書いていませんでした。
ただ、結果的に誤りを書いてしまったことになるので、本文修正いたします。
 (2015-02-25 09:14:54)

【安岡孝一】 『The Preparation of Programs for an Electronic Digital Computer』(Addison-Sesley 1951)を読む限りでは、EDSACにはCreed Model 47を改造したキーボードが繋がっていたようです。ただし、電気的にではなく、もちろん紙テープを介してですけどね。 (2015-02-23 21:09:53)


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