2015年05月17日の日記です


JAMSTEC一般公開日  2015-05-17 12:31:17  社会科見学 家族

16日、土曜日は次女の保育園の遠足だった。


…朝から雨。「行きたかった」と泣き出す次女。

中止じゃなくて延期なのだけど、本人はとても楽しみにしていたらしい。


でも、実は僕としては予定が重なっていた JAMSTEC の公開日に行けることになったので、内心喜んでいた。




家族で JAMSTEC 行くために、お弁当は作る。

「遠足のお弁当自分で作りたい」と言っていた次女も手伝い、機嫌がなおる。


一般公開は9時半からだが、家を出たのが9時半過ぎ。

しかも、ガソリンがほぼなくなっていたのを忘れていて、遠回りしてガソリンスタンドに寄ってから。


JAMSTEC に付いた時点で、すでに11時近かった。



お弁当は持ってきたので、どこででも昼飯は食べられる。

でも、雨だとそこらへんの芝生の上で、というわけにはいかない。

屋台村の中のテントに空席があったので、先に昼ご飯を食べてしまう。




その後は、まずスタンプラリー。

去年見たばかりなので、子供たちは しんかい6500などにそれほど興味がない。


今年のしんかいは一味違う。…建造から25周年のステッカーが大きく貼ってあったのだけど、それも特に興味なし。



片っ端からスタンプを押して、さっさと景品をもらった時点で、1時前。

去年は機材などの展示を中心に回ったので、学術研究の発表みたいなー、という親の意見に従ってくれて、研究棟へ。


…1時まで昼休みでした。

次女が船乗りたいというので、白鳳丸へ。


順番待ちの列に僕が並んでいる間に、妻と子供たちが近くにあった「ロープワーク」のブースでロープを貰ってくる。

去年のロープは興味を失って捨ててしまったのだけど、久しぶりに見ると楽しいらしい。


#長男はもやい結びできます。是非覚えておくべき結びの一つ。




白鳳丸には、旗がいっぱいはためいています。

…これ、国際信号旗だよね。


去年は、船の名前を示すように並んでいた。

今年はどうなっているのだろう、と思って読むのだけど、読めない。


HAKUHOUMARU だとすれば、H や U が2回以上出てくると思うのでそのつもりで見ても、同じ文字が出ない。

乗船前に定員の都合で少し待たされたので、その時に整理を行っていた船乗りの方に聞いてみた。


「今年は、これ適当に並べてますね。意味のある並びではないです」


乗船後、ブリッジで旗と文字の対応がわかったので調べたら、A B C D E …とアルファベットが並んでいるだけだった。




白鳳丸の中での見どころ。

ラウンジとダイニングが豪華。


昨年見た船(何だったか忘れた)はお客さん用の部屋でも質素だった。

(それでも、通常クルーの部屋より広かった)


ラウンジは来賓専用の応接室で、非常に広く、カウチソファとローテーブルの応接セットもある。

ダイニングは上官用の食事室で、こちらもゆったりした広さ。


壁新聞スペース。

ファックスで送られてきた新聞が掲示されている。朝・夕刊届くようだ。

この時も、当日の朝刊が貼ってあった。


世間から隔絶された洋上では、こうしたニュースは大切な娯楽なのだろう。


なんかのデータロガーに書いてあった注意書き。

最近の機械の交換で、それまで RS-232C でしか取り出せなかったデータが、イーサネットにも対応したという。

RS-232C って単語を久しぶりに見た。




研究室へ。

事前に、研究室での内容のチラシを貰っていて「超臨界水」という言葉に長男が興味を持っていた。


超臨界水が何であるか、事前に少しだけ教えて置いたけど、きっと展示を見れば詳しくわかるから…と詳細は教えなかった。


見に行ったら、MAGIQ乳化、という状態のものを見せられた。

乳化というのは、本来分離してしまう水と油が混ざった状態。


2つの小さな瓶があり、1つは普通に水と油を混ぜて乳化した状態。

もう一つは、超臨界水を使ったMAGIQ乳化。


よく見ると、MAGIQ乳化の方がすきとおっていて、ちょっと違うのがわかります…と説明。


僕から質問。

これ、水と油だけですか? 乳化剤入ってないの?


実は入っています、との答え。超臨界水のままなら乳化剤なしに乳化するのですが、瓶などに入れておくとまた分離してしまうので、安定させるために乳化剤を少し入れてあるそうです。



妻からも質問。

透き通っているように見えるのは、油が細かくなってレイリー散乱しているから?


レイリー散乱っていうのは、光の波長より細かな粒子によって起こされる、光の散乱現象。

空気中などで起こり、空が青いのも、夕焼けが赤いのも、レイリー散乱によるものです。


これは、まさにその通りです、との答え。



MAGIQ 乳化は超臨界水を利用した「応用」の話で、長男が興味を持っていた「超臨界水って何?」に対する答えは無かった。


そこで、僕から少し説明。


水は、陸上(1気圧)では 100度で沸騰する。

水深 100m では、180度まで沸騰しない。

水深 1000m になると、312度でやっと沸騰する。

深海 2000mまで潜ると、350度にならないと沸騰しない。


では、3000m くらいまで潜ると何度で沸騰するか?


#正確な数字を覚えてなかったのだけど、説明を始めたらそのデータをプロットしたグラフをすぐに持ってきてくれた。

 さすが研究室。欲しいものがすぐ出てくる。


答えは、「3000mでは水はどんなに温度を上げても沸騰しない」。


その代り、水とは明らかに違う特性の液体に変化します。

水のはずなのに、ほぼ油と同じ特性を示し始める。塩は溶けにくくなり、親油性を示します。



この親油性を活かし、超臨界水で油を溶かすのが MAGIQ乳化、という事でした。


#後で調べたら、深海で温泉が湧きだしている、熱水鉱床で MAGIQ乳化が起き、これが生命の起源に関係するのではないか、という基礎研究でした。


ここで長女から基本的過ぎる質問。

「にゅーかってなに?」


えーと、ドレッシングって、混ぜないと油と水に分かれてるでしょ?

混ぜても、しばらくすると別れちゃう。


でも、同じように油と水を混ぜても、マヨネーズは分離しない。

こういう、綺麗に混ざった状態が乳化。


#とっさの説明だったけど、厳密に言えば、後で分離してしまうとしても「混ざっていれば乳化」です。

 「乳化剤」が入っていると分離しなくなる。

 卵黄は乳化剤としての効果があるので、卵入りドレッシングであるマヨネーズは分離しません。


…と、説明していたら、説明担当の研究者の同僚の方(?)から、「おー、すごく上手で的確な説明。説明役変わって貰えば?」と軽口。




すぐ隣、新型の顕微鏡を実演していました。


この顕微鏡の機能には驚いた。

目で覗くものではなく、コンピューター制御でパソコン画面に映し出すものなのだけど、「厚み」を捉えることができる。


それを元に、3D 表示を行ったり、調べたい個所の幅や厚さを即座に表示することができます。

ナノメートル単位で厚みがわかるようです。


一見すると普通の顕微鏡。

上から光を当てているだけで、一体どうやってナノメートル単位を測っているのか?



質問したら、計測を実演してくれました。

厚み計測には時間がかかるそうです。



顕微鏡を覗いたことがある人ならわかると思いますが、顕微鏡って、「厚み」に対して焦点が当たる部分が狭い。(カメラ的に言えば、被写界深度が浅い)


プレパラートとカバーガラスの間のわずかな隙間の水の中に微生物が泳いでいても、上と下では明らかに焦点が異なる。



また、顕微鏡では光の当て方で「コントラスト」を変えられる。

光を絞り込んで狭く対象に当てていると、焦点の合ったところ以外を暗くしてしまい、コントラストを上げられる。


この二つを利用すると、「明るさによって、焦点が合っているかどうかわかる」ことになる。


焦点距離を少しづつ変えながら何度も撮影を行うと、高さがわかることになる。



なるほど、知っていることを応用して組み合わせただけだった。

でも、コンピューター時代になって正確に操作ができるようになったから、ナノメートル単位で焦点を変えて計測、ができるわけで、今の技術でないと出てこなかった顕微鏡なのだろう。




別の研究室では、論文のポスター展示を行っていた。


たまたま目に付いたのが英語のポスター。

他のものは日本語なので一瞥して研究内容がなんとなくわかるのに、英語で一切わからないから気になったともいえる。


一生懸命読んでいたら、「英語の論文読んでる人がいる!すごい!」と研究室の人に言われた。

うーん、同じ内容で日本語があればそちらを読みたいけど、気になっちゃったら英語でも読むしかないじゃないですか。



英語でよくわからないので斜め読み。

長男が「なに書いてあるの?」と質問するので、斜め読みしながら説明もする。


最初に見た部分、写真がついていて、電気回路の一部に「チムニーの壁」を挟んでいるのに、LED が点灯している。

英語を斜め読みすると、チムニー(海底温泉である、熱水鉱床の噴出孔)の壁は岩石なのに、グラファイトと同じように電流を通す特性がある、ということが書いてある。


ポスター横に立っていた研究員の方に、「グラファイトってなんでしたっけ?」と聞くと、鉛筆の芯のような炭素、と教えてくれた。

あー、そういえばそうだった。知っていても、忘れていた単語。


説明員の方によれば、「グラファイトのように」というのは、抵抗などがほぼ同じ意味なのだそうだ。

鉛筆の芯は、抵抗はそれなりにあるけど、よく電気を通す。シャーペンの芯を使って PC-E500同士で通信したことある人も多いだろう。



へー、岩石なのに電気透すんだ。興味深い。



つづいて、その上に書いてあった内容を読む。

こちらは、チムニーから噴出する熱水はいろいろな成分を含んでいるが、化学変化によって電子が余っていて、回路を作ってやれば周囲の海水との間で電気が取り出せる…という事が書いてある。


熱水鉱床から電気を取り出せる。これは興味深いのだけど、次の「壁が電気を通す」ことを合わせて、この記事繋がっているのだな、と思って結論の方へ。



熱水鉱床の周囲に住んでいる微生物などは、従来硫化水素などをエネルギー源として生きていると考えられてきたが、チムニーから電気を取り出して、電気エネルギーを直接「食べて」生きている可能性がある…と。


電気を食べる生物がいる!


このポスター、今回いろいろ見た中で、一番僕の興味を引いたものでした。

隣に立っていた研究員の方、この論文書いたご本人だそうで、長男に説明しながら読んでいたので「そこまで理解していただけるとありがたいです」と言われた。


英語だから、ほとんど読む人もいないみたいなのね。

僕も、たまたま目についたから読んだけど、もしかしたら素通りしていたかもしれない。(英語は苦手)


でも、読んで良かった。非常に興味深い。



研究員の方によれば、これはまだ可能性を示唆しただけで、電気を食べる生物は見つかっていないそうです。

でも、確かに電気を食べている、という状況証拠はあるのだとか。


あとは、「どの微生物が」電気を食べているのか特定するだけ。

普段は流化水素などからエネルギーを得ながら、電気「も」食べているだけだと考えられるので、特定条件を満たさないと電気を食べないのかもしれないし、なかなか生物の特定に至らないようです。




以前に JAMSTEC の方の講演会で聞いて感心した話なのだけど、生命の起源は熱水鉱床である可能性があるそうです。


そのつもりで「電気を食べる」ということを考えると、それが生命の最初の姿かもしれない、ということなのでしょう。


生命は最終的には電気で動いているだけど、この電気は、外部から取り込んだ物質を化学変化させることで取り出している。

このメカニズムはそれなりに複雑で、いきなり作られたとは思えない。


最初に「電気が湧き出す場所」としての熱水鉱床があり、そこで生命が生まれた後、電気が無いところでも電気を得る方法を獲得した、と考えると生命の発生が説明しやすくなる。



先の「MAGIQ 乳化」も同じね。

生命は油と水の微妙なバランスの上に成立しているのだけど、通常は水と油は分離してしまうので、「微妙なバランス」なんて作り出せない。


熱水鉱床の環境は超臨界水が存在するので、そこで「微妙なバランス」が作られていれば、生命が偶然生まれる条件が整いやすくなります。




他にも面白い論文ありました。

まだ研究中の最先端の成果を見せていただいているわけで、結論が出ていなかったとしても知らない世界を覗けます。


うちの子たち、最近T4ファージを知ったのだけど、熱水鉱床の微生物群の中で発見したファージについての論文もあった。


電子顕微鏡写真もついていたけど、たしかに丸い頭に棒が付いたファージが見える。

(ファージはウィルスの一種で、細菌に取り付くもの)


ざっと説明すると、熱水鉱床はそれぞれが別の生態系を保持していて、そこに住む細菌なども全く異なるのだけど、遠く離れた熱水鉱床でも共通するファージが居ることがわかった、というもの。



こちらも、生命の誕生とほぼ同時に、その生命に取り付く「ウィルス」も誕生していたのではないかと示唆するものです。

生命が誕生した時すでにウィルスがいて、感染したまま広まってから、環境が隔離されて生命が独自進化を遂げたのではないか、ということ。


そうすれば、遠く離れ、生息する生命も異なる熱水鉱床に、同じファージがいる説明になります。



そもそも、ウィルスは生命のようで生命に「なり切れていない」、半生命みたいな存在です。

生命の誕生とほぼ同時に生まれた、というより、ウィルスが先なのかもしれません。




…と、こんなポスター展示を感心しながら見ていたら、子供がつまらないと言い出した。

親としてはもっと見ていたいのですが、別のところを見に行きます。


深海生物「ゴエモンコシオリエビ」が生きたまま展示されている、というのでそのコーナーへ…行く途中、子供たちが、別のものを発見し、気を取られます。


「おもしろ科学たんけん工房」主催の、「くるくるリングを作ろう」。


持って歩いている子がいる、とは思っていたけど、ここで作っていたのか。

すごい人気で長蛇の列。それを並んでも欲しい、というので並びます。


長蛇の列とはいっても、並んだのは15分くらいだったかな。

次女には難しかったので僕が手伝って、長男と長女は自分で作ります。


すごく単純だし、回している子のを見てて、「原理」はすぐに理解できた。

でも、自分で回してみると、頭で理解しているのと違う楽しさがある。非常に「手触り」の良いおもちゃです。


直線運動を回転運動に変え、リングがくるくる回る。

単純化すれば「それだけ」のおもちゃなのですが、回転方向は必ず1方向になるようになっているし、上手に回すのに、適切な「直線運動」の速度もある。


しくみを考えると興味深いです。




このあと、しんかい6500のモックに乗りたいと次女が言うのでまた列に並びます。

(この日は見学だけで乗れなかったのだけど、満足した様子)


さらに、昨年も見た「火山噴火実験」を見学。

火山の噴火を模擬的に起こす…と、難しい説明ですが、やることはコーラメントス


去年もそうでしたが、単純に盛り上がります。楽しい実験。




これで、公開時間終了。


スタンプラリーの景品、しんかい6500 のパスケースと、アンケートのボールペンを貰って帰ります。


パスケースは、透明のビニールの中に、青と透明の液体(混ざらないので水と油でしょう)が入っていて、その中に透明プラスチックに印刷されたしんかい 6500 が浮いています。


子供たち、早速白い紙に、貰ったボールペンで「深海生物」の絵を描いていました。

パスケースに入れると、深海にいる感じになる。



去年見たものは、今年はほとんど見てない。

実は見たものは少ないのだけど、去年とあわせて「沢山回った」感じがする、充実した見学でした。




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